朝起きた時に今日はどうしても牡蠣の土手鍋が食べたい気分だった。でも、問題はMが広島育ちの癖して牡蠣があまり好きじゃないことだ。鍋となると、他に何品も料理を用意できないし、食卓に座った途端、Mの顔が落胆するのが想像できる。そこで策を弄する。お昼にスペースレンタルの為に店へ出向いた帰り、Mの好きなパン屋で彼女の好物のパンを幾つか買い、朝昼兼用の食事にして彼女の食欲を満足させる。その三時間半後に土手鍋だ。俺の作戦通り、お腹がまだ減ってないMは土手鍋を見てもそんなガッカリした顔にならない。付け合わせの北海タコの刺身でご飯をお茶碗半分だけ食べるのが精一杯の様子。してやったりと俺は味噌風味の牡蠣を貪り食う。太った牡蠣を15個は食べたか?ホント、俺は牡蠣がスキ。でも、店に出かける前に中途半端な食事しかしないと、店にいる時間が長い為、Mのお腹が空く。今日も九時間近く何も食べずにいた為、閉店した途端、Mが最近嵌まっているタコのペペロンチーノを作ってくれという。体重を気にしている俺たち二人にとって、寝る前に炭水化物とギトギト油はかなりやばいとは思いつつも、俺が策を弄して出かける前に中途半端な食事しかさせなかったことを悔やんで、もう四時近くだというのに部屋でペペロンチーノを作る俺。