桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2014・2・1

2014年02月02日 | Weblog
店をやっていると、親しい人が亡くなっても、誰か信頼できるスタッフがいないとお通夜にはなかなか参列できなかった。例外は店の近所にあった青山斎場で行われる場合で、確か最近では映画監督の若松孝二さんのお通夜に参列した覚えがある。後は告別式に参列することにしていた。でも、殆どの告別式が朝の十時に始まることもあって、前日が遅くて且つ斎場が遠い時には辛くて失礼してしまうことが多々あった。だから今日、堀之内斎場で催された花組芝居の俳優、水下きよしさんのお通夜に参列できたのは店をやめていたお蔭だ。堀之内斎場は俺が若い頃に住んでいた高円寺にあることは知っていたが、出向くのは初めてだ。そこは賑やかな青梅街道と環状七号線が交わる辺りの住宅街の真ん中にあった。そういえば、この数年の間に出向いた斎場の内、臨海斎場や戸田斎場を除くと、落合斎場,代々幡斎場、桐ヶ谷斎場なども住宅街の真ん中にある。住宅街が出来てから火葬場が出来たとは思えない。昔、人家がなかった頃に火葬場が出来て、その周りに徐々に住宅街が作られて行ったのか?それから堀之内斎場と代々幡斎場は歩いてもいける距離だ。どうしてこんな近くに火葬場があるんだろうか?そんなことを、そんなつまらないことを、焼香を待つ長い列に並びながら考えていた。祭壇に飾られた水下きよしさんの遺影はプロフィール写真のようで、彼が亡くなったという実感を薄れさせている。でも、彼の死は紛れもない事実で、その事実から逃れるように「火葬場問題」を考えていたのかも知れない。そしてこんな気持が寒い夜は誰かと酒を酌み交わしたくなる。予定がなかったら絶対会ってくれる筈のいつも妖しい魅力を振りまく歯科医のSさんに久し振りに電話してみる。彼女は誰かと会っていたみたいだけど、時間を都合してくれる。銀座で待ち合わせて彼女が知っている店と行き当たりばったりに入った店を何軒かハシゴして、グレンリベットとボウモアなどロックで飲み続ける。何だかとてもやるせなくて、やるせなくてたまらない。水下きよしさんのご冥福を祈る。、