15年以上前になりますが、
ある患者さんが、私に一冊の本を勧めてくださいました。
内村鑑三の「後世への最大遺物」
明治27年の講演を本にまとめたものです。
「美しいこの地球に何も遺さずにに死んでしまいたくないという清い欲が起こる。」
それに対し、鑑三は様々な考察をしますが、到達した遺物とは
「それは、勇ましい高尚なる生涯である。」
とくくっています。
物や形や名誉を残すのではなく、
ただ、ひたむきに生きたことを遺す・・
最近、ある患者さんと話をしていて、
この本を思い起こしていました。
後、1か月かと・・
残された時間はどのくらいと感じていらっしゃいますかという質問への答えでした。
淋しさややり残したと感じることはありませんかと問うと
ないんですよ
本当に。
やりつくせたかなあ
そうおっしゃりながら、微笑まれました。
緩和ケア外来で数年に及ぶお付き合いでしたから、
躊躇しそうな質問にも、
答えて頂けるありがたいときが流れていました。
もしかすると、言葉の下には、
もっと違う気持ちが隠れているのではと
多くの方は、思われるに違いありません。
私自身、このように問われたら、
後悔の言葉が沢山でてくるだろうと思います。
●●できなかったから、
今、こうした大変な状況にある
とか、
もっと、●●できたら、こんな風にならなかったと思う
というように、
前半は肯定でも否定文でも、後半にはネガティブなことが並ぶことが多く、
私も例外ではありません。
でも、その方は、
がんの診断が医師の言葉によって遅れてしまったことに対し、
遅れたおかげで、その間に、その後の支えを得ることができたことを
優しく微笑みながら話してくださいました。
人は、最期を意識してなお、
このように想うことができるものなのだろうか・・
その方の生きてきたことそのものが
なんと崇高なものなのか・・
深い感動と心からの敬意を覚えていました。
まさに、高尚な生涯を歩んでいらっしゃる姿でした。
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6月3日に腹痛を訴えて、かかりつけ医に軽い気持ちでかかったら、大腸ガンであることが発覚し、1ヶ月の入院生活を終え、退院致しました。
最初の一週間は、病室で、医療関係者に何を言われても泣いてばかりだった私。
こんなはずではない。。と、泣いてばかりでした。
幸い、大腸ガンは、取り切れ、リンパ節の1つに転移があっただけですみ、(とは言っても、半年間、月一で、化学療法の追加治療を申し渡されました。)何とか、余命宣告は、免れておりますが。。
たぶん、生涯、ネガティブな言葉しか出ないであろう事。。その自分の姿が、思い浮かぶ。。
そんなささやかな、人生の転機があった私でした。
久々のぴょんさんのお名前に、うわ~って思いながら、読み進めて、驚きと共に、ご主人のこと、その後のことなど走馬灯のように思いだし、しばし、手を止めてしまいました。
ブログをお訪ねさせて頂きました。6月は本当に急転直下の月だったのではないかと思いを馳せています。検査、治療、退院と、よく乗り越えられましたね。
これからも治療が続くのだと思いますが、ブログ仲間として、応援しています。
早い時期に、どのような支援があったら、ほっとされたか、また、落ち着かれたら是非、ご教示お願いします。
幸いにもかかりつけ医の適切な判断により、きわめて慌ただしくもありましたが、即日の入院をし、できうる限り迅速な治療を受けることが出来、幸いでございました。
入院した病院には、20年近く前に日帰り手術を主人が受けただけの病院でしたので、全くなじみがございませんでしたが。。
外科の「係長」という役職の看護士さんが緩和ケア認定看護師として、おつとめされており、毅然としつつも心ある看護を看護師団に教育なされている様子(もちろん医師団も)で、私が関わった病院の中で、一番、看護師団の連絡が行き届いていたように思われます。
私の意志や希望が、速効で、私に関わる医療チームに連絡が行き届いていた実感がありました。
特にガン告知された前後(入院直後)から、看護師チームに私の心の動きが直ちに行き渡り、私の話を忙しい中、入念に、私の気が済むまで、話を聞いてくださいました。
そして、それが主治医にも確実に伝わっていて、急ぐことなくせかせることなく、くだらない話から、日常の仕事の話まで、、、
本当に丁寧に親切にお話を聞いてくださったおかげで、慌ててもい、冷静さを全く失っていた私に落ち着きを取り戻させてくださったように思います。
手術の日から、半日後には、歩け!!歩け!!と暖かく優しく無理なく動かさせて頂き、退院も早くできたと思っています。
ガン専門の病院ではないのに、良く、あそこまで。。と感心し、感謝致しております。
また、看護実習生が手術後から、退院までの2週間私の担当になりましたが、何科のお役に立てるのではないか??との私の励みにもなりました。。。
これは、本当に私の生きる意味の見いだしにとって、大きな一助になったと思います。。
多くの一般市民の方は、緩和ケア認定看護師という名称もご存じありません。その職種の価値も。
ぴょんさんは、その方をキーマンにすれば、きっとうまくいくということを、今までの医療との関わりの経験で、感じ取られていたのかもしれないと思いました。
大変の出来事だったと思いますが、最善の流れの中で今がおありのようで、安堵しました。
頂いたコメントに、なるほど・・と思いながら読ませて頂きました。
まさに、診断と同時の緩和ケアが主治医、看護師のチームで支援体制に当たられていたのだなあと思います。
コメント、ありがとうございました。
また、時々、ブログにお邪魔させて頂こうと思います!