緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

宮城県立がんセンターの麻酔科医師4人全員退職

2006年04月08日 | 医療

宮城・がんセンター 麻酔医全員6月退職 補充めどなし (河北新報) - goo ニュース

これ、大変なことだと思う。記事を読むと、麻酔科医師は手術に専念することとした病院の方針に対して、医師側は緩和ケアへの関わりの継続を望み、6月に全員(4人)退職することになったのだそうだ。麻酔科医師のバーンアウトを防ぐため、ペインクリニックや緩和医療など患者とコミュニケーションを持つことが出来る関わりを学会としても推奨していると聞いているが、がんの手術を待っている患者も多く、件数をこなさなくてはいけない現実もあるのだろう。

私は麻酔科医師ではない。緩和ケア科専任医師であるが、多くの病院では麻酔科や外科など他科の医師が緩和ケアを行っている。宮城県立がんセンターには緩和ケア病棟があるのだが、今後、手術、病棟、誰が診ていくのだろうか。
緩和ケアには、まだ認定医制度がない。だから、誰でもがん診療経験があれば緩和ケア医だと名乗ることができる。逆にどんなに症状緩和が上手くても軽んじて見られることが多々ある。緩和ケア病棟があっても専門医療としてではなく片手間の医療と見られてしまうのだろうか。緩和の認定医制度があり、この麻酔科医が認定資格をもっていたら緩和ケアを継続することを病院は認めただろう。

ただ、労務量を考えると、麻酔かけながら緩和ケアもやっていけるのかなあ。病院側の言い分も、麻酔科医側の言い分も何だか釈然としないし、今の緩和医療の問題をそのまま露呈しているようにも感じられる。

何よりも、困るのは患者さんたちだ。


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3 コメント

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おっしゃるとおりなんですが・・・ (naru)
2006-08-30 01:11:55
麻酔科医師が辞めるのは無責任。その通りだと思います。きっと、ぎりぎりまで我慢して、の決断だと思うのです。がんセンターなどでは専門病院志向により手術件数は(待機患者数は)際限なく増え、毎日朝から晩まで手術室にこもりきりで(ということはいつも誰かに見られている状態で、心休まる暇もないということです)業務に忙殺される一方ですが、外科医たちからの評価が低かったりするんですよね。そういう仕事を選んだのが悪いと言われそうですが・・・誰か一人が辞めると他の人の負担が増える、手術件数は麻酔科医が減っても減らない(危険な並列麻酔をかけろという圧力がかかる・・・)ということで、ぎりぎりまで耐えた結果、みんなで辞めることを選択したんでしょう。熟年離婚みたいなものでしょうか?まあ影の薄い商売で、有賀先生の標榜科に関するブログの中にもリストに麻酔科がないですもんね。標榜するのに厚生省に実績を申請する必要がある唯一の科なのに。麻酔科医も、患者さんと会話したり感謝されたい、と思うから緩和を目指すのでしょうね・・・片手間、と言われますが、地方病院ではそもそも緩和という概念すら乏しいところはたくさんあります。オピオイドを普段使い慣れている麻酔科医が、患者さんと触れ合おうと思うと、そういう発想になるんです・・・大目に見てやってくださいね。
コメントありがとうございます (aruga)
2006-08-30 21:42:32
ご指摘くださって気がつきました。麻酔科って標榜科ではなかったのですね。

これは、驚愕でした。



宮崎がんセンターには、お一人患者さんをご紹介させていただいたことがあります。搬送に、主治医が外科だったので、そこの研修医がついていきました。良いところだったと感激していました。



良い医療を行いたいという思いは、どの医療者にも共通するものだと思います。そこに、組織のあり方、経営、合理化などのキーワードが入ってくると何だか変になっちゃいますね。個々は本当に頑張っているのだと思います。
誤解させてごめんなさい (naru)
2006-08-30 23:07:31
いえいえ、そうでなくて、もちろん標榜科なのですが、標榜するにあたって唯一厚生労働省の許可が要る科なんですよ、と言いたかったのです。先生がもし開業されるとしたら、内科でも小児科でもその気になれば看板に書けますが、麻酔科は人命にかかわる(失敗したら秒・分単位で死んじゃう)ので許認可制なのです。先生の挙げられたリストに、なぜか麻酔科が入ってなかったので、(雰囲気は全ての標榜科を挙げてあるように見えるのに)忘れ去られている感じがしてちょっとわびしい気持ちになったんです・・・影の薄い科なんですよ。ま、それはともかく立ち去り型サボタージュと巷で言われる現象が何科と言わず、起こっているようですね。産婦人科医の問題と同様です。(自分の予定と関わり無く手術時間が延長したり、緊急手術が入ってきたりして断れないところなんかは、突然まったなしに来るお産と似て、自分のペースが作れないところが似ているような・・・)コメント頂いてありがとうございました。

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