痛みを伝える興奮系ニューロンと痛みを抑える抑制系ニューロン(下行抑制系と抑制系介在ニューロン)があることを昨日書きました。
中枢(脳)から下に向かって伸びてくる
興奮した神経を鎮める作用のある下行抑制系ニューロンは
セロトニンやノルアドレナリンによって賦活化(増強)されます。
この薬理機序をもつ薬剤は、抗うつ薬です。
抑制系介在ニューロンは
GABA(ギャバ)などが伝達物質として働きます。
この薬理機序をもつ薬剤には、抗痙攣薬の一部や
ベンゾジアゼピン系薬剤(精神安定剤)などがあります。
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痛みには、NaチャンネルにNaが流入することで興奮をし始めるという機序もあります。
また、NMDA受容体にCaが流入することで興奮を次の神経に伝えていくという機序もあります。
痛みは、知覚神経の興奮です。
痙攣は、運動神経の異常な興奮です。
イライラする、気持ちが落ち込むのは、感情のバランスが悪くなった状態です。
痛みを抑制するということは
運動神経が関係する痙攣を鎮めることや
イライラする、気分が落ち込むといった感情を調節することと
共通性があります。
このようなことから、痙攣を抑制する薬剤=抗痙攣薬
感情を調節=抗うつ薬など
が、痛みを抑制することに有効であることがわかってきました。
また、Naチャンネルに蓋をする役割に、抗痙攣薬や抗不整脈薬があります。
NMDA受容体に蓋をする役割に、ケタラールがあります。
これらの薬剤を総称して、鎮痛補助薬と呼んでいます。
この鎮痛補助薬には、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗不整脈薬、NMDA受容体ブロッカーなどが含まれます。
でも、保険が適応されません。
薬剤は目的とする効果の程度と副作用を調べるために臨床試験が行われ、発売されます。
抗うつ薬は気分障害を改善させることを目的として開発されました。
その後、こうした神経障害性疼痛に効果があることがわかってきました。
大規模試験でその有効性は実証されています。
ところが、保険を適応させるには
製薬企業が疼痛の効果をみるための臨床試験を再度行わなければ保険適応になりません。
しかしながら、臨床試験はとてもお金がかかるため
企業側も腰を持ち上げてくれません。
日本の除痛の質が中々あがってこない理由の一つに
この鎮痛補助薬は保険適応が無いまま投与している
グレーな位置づけがあるのです。
(投与を必要としている時は、このことを説明し、十分副作用に注意をしています。)
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自分は薬剤師なのですが、
保険適応がないと医者も慎重になるようです。インフォームドコンセントのからみもあり、いざ何かあったときのために慎重にならざるをえないのでしょうね。以前のことですが、がん性腹膜炎の痛みにオピオイドで十分に除痛できなくて医師から相談があり、キシロカイン注の点滴静注を提案したことがありました。500mg/日など具体的な話を進めたあとで、「実は適応外ですが」と言ったとたん、その話はなかったことになりました。たくさんのオピオイドが発売されている中、オピオイド抵抗性の痛みの除痛の難しさを痛感しています。きちんとしたエビデンスをもって医師を説得できるような薬剤師になれるよう勉強しています。できれば医者や看護師をまきこんで緩和ケアチームができればよいのですが・・・奮闘中です。
アビシニアンさんのように、勉強され、提案し、質の向上を目指す方がいるかいないかということになってしまいます。法の下で緩和ケアを推進するならどこでも、たれでも良質の症状緩和がえられるために、保険適応なども整備していかなければならないのではないかと思います。
アビシニアンさんの病院の患者さんは幸せだと思います。そうして、一生懸命考え、チームも、と前向きに取り組まれる方がいらっしゃるのですから。