バカヤロ～って怒鳴られるかもしれませんが、診て下さい

「ん゛～、イ゛ライ゛ラするんだよぉお」
そりゃそうでしょう。
ビリルビン30、アンモニアも100を遙かに越えていました。

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「なあ、先生。こんなにイライラするんだからよお、もう、最期が近いんだろぉ」

「最期が近いって感じるんだね」

「う～ん。吐気がよぉ、もう少し治まれば
 イライラしねぇんじゃねぇかって思うだけどよ」

点滴は拒否していて
何か言うとバカヤロ～って返事が返ってくるような患者さんなんですけれど・・
と聞いていました。

喧嘩っ早く、中々すごい過去をもっていらっしゃったようです。
いろいろな病院でトラブルを起こされてきたそうですが
今の病棟のスタッフは、バカヤロ～って言われても
わかったわかったと言いながらきちんとケアを続けてきたようです。

以前も疼痛で診療にあたったことがあったのですが
吐気があると言われ、再度、診察に行きました。
腹水でパンパンだったお腹は、点滴拒否してきただけあって
ゆるんできていました。
圧痛も消えていました。

「お腹、腹水少なくなっているよ。楽になったでしょ。がんばったねえ」

「そっか～、皆よくしてくれるからよ～。
 迷惑かけてるなあって思うこともあるんだよ。
 イライラして怒鳴り散らしてさぁ。」
（結構、わかってる・・）

「そろそろ、ちょっと点滴しようよ。口から飲めないでしょ。
 点滴でお腹が張ってこないくらいの量で。
 吐気止め、そこから点滴して、楽になるともっといいよね」

「そっだな。ついでによ。コロッといく流行の薬とかないの」

「コロッといくのはないなぁ。」

「はは、そっか。点滴いいよ。吐気、楽にしてよ・・」
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「だ～れも、こね～んだよな～。誰も気にしてくれないんだよ」
「ここに来れなくても、心配してくれている人いるでしょ」
「あっそうだ。17日、出てくるんだ。
 アイツ、電話したらよぉ、早く手術してもらって治せよって
 いっつも言ってくれてた。」
「出てくる？」
「おぉ、ムショ。迎えに行ってやりてぇなあ」
「刑務所・・」
「そっだな、一人じゃなかったな・・」

夕方もう一度訪室しました。
「おぅ、ちっと楽になったよ。今日は寝られるかな・・」

悪い中でもよいことが一つでもあったら、心は楽になるものです。
そして、体の辛さをとりながら、孤独ではないことも大切なことです。
どんな過去があろうとも・・
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