江戸前ネギ巻き寿司

オタク一匹の日常を綴る。
※各種作品のネタバレを含みます。
※最近は多肉植物・サボテンの観察日記的な要素も。

今そこにある失われた日々-前編。

2007年01月10日 19時45分47秒 | ネギま!・ネギま!?・UQ
 ども、正月で狂った生活リズムが未だに元に戻らない江戸です。何が辛いって、雑誌の発売日がずれるので、それらの感想を中心にして構成されているこのブログの更新パターンが崩れている事ですね。おかげでただ今深刻なネタ不足です……(大辞典は準備に時間がかかるので、連発できないし)。
 まあ、明日になればマガジンとサンデーが入荷してくると思うので体勢を立て直せるとは思いますが、まずは今日を乗り切る事が肝要だ……(;´Д`)。



 そんな訳で、今日は以前同人誌に載せたネギま!の小説でも掲載しようかと思います。もう1年くらい前に書いた物なので恥ずかしい部分も多いので、出来ればやりたくなかったのですが……(;´Д`)。もちろん古いので現在の原作とは微妙に設定等が変わっている部分もあるはずですし、ストーリー展開の都合上、キャラの性格・背景設定等が改変されている部分もあります。そういうのが嫌いな人は注意してください。
 また、ルビ等の機能が使えないため、同人誌に掲載したものとは微妙にニュアンスが違う部分があります。それとたぶん誤字脱字や文法等の間違いがあるかもしれませんが、気づいたらやわりと指摘していただければ有り難いです(^^;)。
 なお、時系列的には学園祭前の設定です。では、あまり期待せずにどうぞ~。



今そこにある失われた日々

エヴァことエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは、麻帆良学園本校女子中等部の三年A組に君臨する主である。
 本人は激しく不本意であるようだが、エヴァが現三年A組(基本的に生徒は入学から卒業まで同じ教室を使用し、故にかつては一年A組であり、二年A組でもあった)の教室に通い始めてから、かれこれもう十五年にもなるのは紛れもない事実であった。最早実情がそうなのだから仕方が無い。
 何故、同じ教室に十五年間も通わなければならなかったのか――その経緯は一部の関係者の間では周知の事実なので今更語るまでもないが、事情をよく知らぬ者の為にあえて一言で説明するのならば、
「無期懲役刑」
 ……これが最も実態に近いかも知れない。要するに、過去に少々悪さが過ぎた所為で、その罰として「登校地獄」と呼ばれる呪いをかけられ、強制的に学園へ通わさせられているという訳だ。
 しかしそれは、学園に通う他の生徒達にしてみれば実に不可解極まりない事情である。本来ならエヴァは学園最大の名物生徒として好奇の視線を集めまくり、様々なトラブルの火種になった事だろう。あるいは、まともに学園生活を送る事さえ困難になったかも知れない。
 だが、そこに何の問題も生じさせないのが、エヴァを十五年間も学園に縛り付けている「登校地獄」という呪いの効力であり、また、エヴァが元より持っている容姿の所為でもある。
 エヴァはこの十五年間、まったく歳を取ってはいない。いや、歳はとってはいるが、外見上は幼女とも言える幼い姿から変化していなかった。
 これは彼女が「吸血鬼」という不死身の怪物であるが故である。本人の弁では既に齢百歳を超えているらしいが、実際にはその数倍の年月を生きているという。それだけの齢を重ねてなお成長出来なかった身体が、たかだか十五年程度の時間で変化するはずも無い。
 この容姿のおかげでエヴァは中学生の集団の中にあってもさほど違和感を持たれる事無く、更に呪いの効力もあって、学園生活を特に支障なく送る事が出来る訳だ。この辺も一部の関係者にとっては周知の事実である。
 だが、大きな謎が無い訳でもない。例えば、エヴァの正確な年齢は定かではなかった。
 彼女はいつ、何処で生まれたのか?
 何故、十歳そこそこの年齢で吸血鬼と化さなければならなかったのか?
 その詳細は誰も知らない。
 あるいは――それは当のエヴァ本人でさえも知らない事なのかも知れなかった。


「またネギをボロボロにしてっ!あいつってば、まだ十歳なのよ!? もう少し手加減しなさいよっ!!」
 神楽坂明日菜は吠えた。彼女は三年A組と呼ばれるクラスの中でも、特に活発な部類に入る生徒だ。そんな彼女の声は当然大きく、もしも耳元で吠えられたとしたら、おそらく耳鼻科のお世話になる事は必至であろう。
 幸い耳元では吠えられなかったが、それでもエヴァは耳の痛みを堪えるかの様に顔をしかめた。
「なんだよ、うるさいなぁ。わざわざ人の家に乗り込んできて大声で喚くな」
 ここは麻帆良学園都市の一画にひっそりとたたずむエヴァの家である。彼女は中学生という身分ながらも一戸建てを住処としていた。
 しかし、この家の建設費等をどの様に工面したのか、その辺は一切謎であった。あるいは魔法で元手をかけずに作り上げたのかも知れないし、はたまた誰か――例えば学園長――から与えられたものなのかも知れないが、いずれにしろ、その生活自体はそれなりに裕福そうではある。一応、学園長から学園の警備役としての任務も与えられている様なので、それなりの給金を貰っているという事もあるのかも知れない。
 それはさておき、エヴァにしてみれば突然怒鳴り込まれるなんて事は不本意極まりない事であり、不機嫌そうに反論を返した。
「私はぼーやの望み通りに修行を付けてやっただけだぞ? 感謝されるのならばともかく、文句を言われる筋合いなどないな。大体、ぼーやだって貴様に泣きついた訳でもないだろう。それにも関わらず勝手に怒って怒鳴り込んでくるなんて、余計なお世話の極みだぞ」
「うっ……」
 エヴァが珍しく正論を返したので、明日菜は反論の言葉に詰まる。確かにエヴァはネギに魔法の修行をつけているだけに過ぎない。ただ、彼女の修行はかなり厳しく、その為にネギがケガをしたりヘロヘロにやつれたりして帰ってくる事も珍しくはなかった。明日菜にしてみれば、ネギとは同じ部屋で実の姉弟のように暮らしてきた仲なのだから、彼の事が心配になるのはむしろ当然の事だった。
 しかし、エヴァの修行はネギが自身で望んだ事だった。立派な魔法使いになるという志を持つ彼が、自らに必要な事だと判断し、そしてそれなりの覚悟をもって選択した苦行である。本来は明日菜がどうこう言える類のものではない。
 それでも、ただ黙していても明日菜の心配事が解消される訳でも無いし、どうにも気が収まらないのも事実。だからもう少しネギに負担を強いなくても済む修行方法もあるだろう……と、言わずにはいられなかったのである。
 だが、まさか傍若無人を絵に描いたようなエヴァの口から、まったくの正論が返ってこようとは思ってもいなかった明日菜は、思わず面を喰らってしまった。
 しかしこれは、明日菜の認識が少々甘かったと言わざるを得ない。実際の所、エヴァは伊達に年齢を経ていないのか、実は意外としっかりとした物の考え方が出来るのである。ただ、普段は天の邪鬼な性格の所為で思考と言動を一致させていない事が多いだけなのだ。
 もっとも、エヴァがネギの師匠となってからは、まともな言動も目立つ様にはなってきていた。彼女の従者であるチャチャゼロの証言では「妙ニ丸クナッタ」らしいが、それも当然であろう。師は弟子を教え導くものだが、実はその逆もまた然りで、弟子を指導する過程の中で師は色々なものを学ぶのである。おかけで、最近では普通にいい人のように振る舞う事も、まあ、まだまだ珍しくはあるが増えてきている。
 だが、「三つ子の魂百まで」という諺がある様に、その性根が簡単に変わらないのも事実であった。明日菜が怯んだ見るや、エヴァはその隙を逃さず一気につけ込んでいく。
「まったく、そんなにぼーやの事が気になるのか? やはり惚ほれたな?」
 と意地悪く指摘する。すると明日菜は顔を赤く染め、
「なっ!? 馬鹿っ、そんなんじゃないわよっ! 私はただ、あいつの保護者みたいなものだから心配するのは当然じゃないっ!」
 と、やや狼狽した様に弁明するが、エヴァは更につけ上がって攻めていく。
「ああ保護者、そうだな。確かに貴様の今日の行為は、子供のケンカに口出しする馬鹿親のようなものだ。しかし中学生で一端の母親気取りか。どうりで所帯じみて瑞々しさが無いと思った」
「なっ、なんですってーっ!? まさか私が老けてるとか言うつもりじゃないでしょうね!?」
「んん? まさにそう言ったつもりだったが? 一度では理解できないのか。さすがにバカレッドの称号も伊達ではないな。だが、そんなお馬鹿さんが母親役では、ぼーやの将来が心配だ。いや、案外反面教師として教育には良いのか? あははははははっ!」
 哄笑をあげるエヴァに対して明日菜は激昂した。悲しいかな、エヴァの言葉は、ちょっとだけ彼女にも自覚があったからだ。特に「お馬鹿さん」の辺りが。人間誰しもが自覚している己の欠点を他人から指摘されるのは痛い。特に舌戦中の相手から言われればなおのこと痛い。
「この……来たれ」
「なっ!?」
 明日菜の叫び声と共に彼女の手が光を発し、次の瞬間、その手には巨大なハリセンが握られていた。
 ここに至って明日菜はネギの従者――いわば護衛役――となる事で得た魔法の道具、「ハマノツルギ」を抜いた。これはあらゆる魔法防御を無効化して敵に物理攻撃を加える事が出来たり、召喚された魔物を元の世界へ送り返したりする事が出来る道具で、相手によっては反則的なまでの効力を示す強力なアイテムだ。
 もちろん、呪いの追加効力で魔力が弱まっているとは言え、常に身体の周囲に魔力の防御障壁を展開しているエヴァに対しても、「ハマノツルギ」はあっさりとダメージを与える事が出来る。
 まあ、従者としてまだまだ未熟な明日菜には、「ハマノツルギ」の真の姿である「大剣」を自在に呼び出す事が出来ない為、その攻撃に殺傷力が伴うほどでもないが、それでも殴られれば普通に痛い――いや、明日菜の馬鹿力が加わると、ハリセンといえども最早立派な凶器といえるか。
「馬鹿っ、ヤメロ そいつは反則だろう!」
「そうですよ、明日菜さん。例えケンカでも凶器はいけません」
 これまで事の成り行きを静観していたエヴァの従者の茶々丸も、さすがに仲裁に乗り出した。
 もっとも茶々丸自身は、ケンカをする事自体はそれほど悪いとは思っていない。それは、ケンカができる相手とは対等の人間だと思うからだ。もしお互いのパワーバランスが崩れて対等でなくなった場合、それは一方的なイジメに成り下がる。
 だから、エヴァにとってケンカが出来る相手がいるという事自体は、それほど悪いものではないと茶々丸は思っている。実際、かつてのエヴァはあまりにも強大な能力を持つが故に、人々に恐れられて常に孤独だった。そして、彼女の異名の一つである「人形使い」は、人形(これには半吸血鬼化させられて精神支配を受けた人間も含まれる)を自在に操る彼女の能力が所以であるが、これは操り人形相手に寂しさを紛らわせていた過程で身についた能力なのかも知れない。
 だが、エヴァの操る人形がいかに生きているかの様に振る舞う事が出来たとしても、所詮は操り人形だ。それを側に置いても、寂しさを紛らわせるよりは虚しさの方が先立つだろう。
 もちろん茶々丸とその姉とも言えるチャチャゼロは、かつてのエヴァの人形達から比べればより明確な自我を得ており、例外的な存在だと言えるが、それでもやはりエヴァの被造物(茶々丸に関しては動力炉等一部のみだが)であり従者であるが故に、対等の存在とは言い難い。
 そんなエヴァにとって、対等にケンカが出来る神楽坂明日菜という少女の存在は、非常に貴重なものだと茶々丸は思うのである。実際、明日菜とケンカをしている時のエヴァはどことなく楽しそうだった。だから、本当は仲良くしてくれる事が一番なのだが、ケンカもまた上等である。
「ここはどうか穏便に、明日菜さん……」
 しかし、やはり凶器の使用はあまり感心の出来る事では無い。茶々丸はなんとか二人のケンカを仲裁しようとしたが、明日菜が酷く興奮している上に、茶々丸の頭の上ではチャチャゼロが、
「ケケケ、殺ッチマエーッ!」
 と、無責任に煽っているので、いまいち効果を上げていなかった。というか、チャチャゼロのその態度は、従者としての忠誠心を少々疑わざるを得ない。
「止めないで茶々丸さんっ! こういう生意気なガキは一度痛い目を見させないと教育上良くないわっ!」
「あの……、マスターは明日菜さんよりもはるかに年配なのですが……」
「だったら、なおのこと手加減する必要無し! 大人なら自分の言動がどういう結果を生むのか分かっているはずだわ。きっとこうなる事も覚悟の上なのよっ!!」
 ……もう何を言っても無駄っぽい。このままでは事態を収拾出来そうになかった。もちろん、茶々丸が力ずくで止めようと思えば止められない事もないが、最近では対妖魔専門の戦闘集団『神鳴流』が剣士、桜咲刹那の師事のもとで、剣術や気の扱いを身につけつつある明日菜の動きや力を上回る事は、戦闘モードに移行しないと難しい。しかし、そこまでしてしまっては、かえって大事になってしまう。
「……仕方がありません。マスター、ここは覚悟を決めて下さい」
「コラーっ、茶々丸ーっ!? 私を守るのがお前の役目だろうがーっ!」
「ですが、実力行使を行うと家具等を破損してしまう恐れが……。幸いマスターは不死身ですし、ここは甘んじて明日菜さんの攻撃を受けて頂くのが最も被害を少なくする術かと思います。明日菜さんもクラスメートなのでそんなに無茶な事はしないでしょうし」
「ふふふ……茶々丸さんの許可もおりたようだし、それじゃあ思いっきりいかせて貰うわよ」
 最早どちらが吸血鬼なのか分からない様な凶暴な笑みを浮かべながら、明日菜は「ハマノツルギ」を大きく振りあげる。
「ちょ、ちょっと待て! どう見ても手加減とかするつもりは無いぞ、こいつには!? それに不死身とは言っても痛いものは痛いのだ。やめろーっ! そのハリセンは本気でシャレにならんのだーっ!!」
 さすがのエヴァの顔にも焦りの表情が浮かぶ。無理もない、彼女と明日菜の能力の相性は最悪といってもいい。明日菜の攻撃に対して魔法防御が無効化されるだけならばまだ戦いようもあるが、明日菜が元来から持つ完全魔力無効化能力は「ハマノツルギ」以上に厄介だ。
 なにせエヴァの魔力や気を用いた攻撃がほぼ通用しないのだ。ある程度攻撃が通用するのならば、それで明日菜の動きを牽制したり、防戦させたりする事によって攻撃を封じる事も出来るのだが、それすらも不可能である。
(うぐぐ……魔力で操る人形使いの糸まで無効化されるのは痛いな。せめてもう少し魔力が充実していれば、身体機能を上げて格闘戦も可能なのだが……)
 生憎、今夜は新月。吸血鬼をはじめとする魔の眷属の魔力が最も衰える日だ。元々呪いによって魔力を極限まで封じられている今のエヴァは、普通の人間と変わらない状態まで魔力を激減させている。つまり外見通り普通の十歳児同然の身体能力しか無いと言っていい。
 もちろん、彼女は合気柔術を初めとするいくつかの武術もマスターしており、加えて永年の戦闘経験もあるが、それでも、身体能力では超人の域に達している明日菜の攻撃をいつまでもさばききれるものではない。特に長期戦になれば、子供並の体力しかないエヴァの方が圧倒的に不利となる。
 最早、エヴァに取れる道は覚悟を決めて(「諦める」とも言う)明日菜の攻撃を受け入れるか、無駄な悪あがきをするかのどちらかしかないだろう。……まあ、彼女の性格上、後者しか選択肢は無いのだろうが。しかも結果はいずれも変わらない。
「おのれーっ! 恨むぞナギーっ!!」
 自らに呪いをかけた男の名を複雑な想いで叫びつつ、エヴァは玉砕覚悟で明日菜へと飛びかかっていく。一方、それを受ける明日菜は、
「うら若き乙女を年増呼ばわりした酬い、その身でしかと受けなさいっ!」
 バットでボールを打ち抜くかの如く、何の躊躇も無い渾身の力で「ハマノツルギ」を振るった。真芯で捉えればホームランは確実であろう豪快なスイングだった。事実――、
バチイィィィィィィィーンッ!!
「へぶうぅっ!」
 風船の破裂音を思わせる大音響と、踏みつぶされたカエルが上げたかの様な悲鳴と共に、エヴァの身体は宙を舞った。おそらく、走り幅跳びの世界記録を余裕で更新出来そうな距離を飛ぶだろうという勢いだった。もっとも、それはその進行方向に何も障害物が無ければの話だが、不運な事にそれは存在した。
 しかも、エヴァが衝突しようとしている障害物が只の壁程度ならばそれほど問題はなかった。しかし、宙を舞うエヴァの軌道は、明らかにタンスの角の頂点に頭部がクリーンヒットしそうなコースを辿っていた。いくら彼女の身体が軽いとは言え、宙を飛ぶほどの勢いだ。その勢いで激突すれば、タンスの角が頭蓋骨を突き破るという大惨事が容易に想像出来た。
「あっ!」
 明日菜も「しまった」とでも言うかの様に声を上げたが、今更どうする事も出来ない。茶々丸も位置的に助けに入られる様な場所にはいないし、チャチャゼロにいたっては元々魔力不足でほとんど動けない上に、そもそも助ける気がない。
 結局、その場にいた全員が為なす術もなく、
ガスっ!
 エヴァがタンスに激突し、そして床に墜落するシーンを傍観するしかなかった。そして数十秒の静寂の間――。
「えーと……あの、エヴァちゃん?」
 床に倒れ伏しているエヴァに、明日菜はおそるおそる声を掛ける。しかし、
 しーん……。
 返事は返ってこない。無慈悲なまでの冷たい静寂がそこに横たわっているだけだった。
「御主人ハ死ナネーケド、普通ナラ間違イ無ク致命傷ダヨナ、今ノハ」
 さほど深刻そうではないチャチャゼロの言葉に明日菜は青くなった。死なない事と無事は決してイコールではない。苦痛は必ずあるだろうし、むしろ、死ねないからこそ本来なら死んで楽になれる様な苦しみを味合わなければならない事もあるだろう。まあ、不幸中の幸いというか、今のエヴァは完全に気を失っているらしく、痛みを感じているという事は無いだろうが。
 ただ、エヴァの頭を中心にして、フローリングの床に真っ赤な水溜まりが広がっていく光景は、エヴァが不死身だという事を抜きにしても、さすがにかなりシャレにならない状況だった。絵づら的には殺人事件の現場と大差なく、そんな場面に直面して冷静でいられる人間はまず皆無であろう。事実、
「なっ、ちょっ、タオル? 血を拭かなきゃ? いや、それより、まずは包帯? っていうか救急車ぁ~っ!?」
 明日菜は完全にパニック状態になって、右往左往している。
「お、落ち着いて下さい、明日菜さん。マスターの傷はおそらく止血しておけば大丈夫ですから」
 そう言いつつも、茶々丸はベッドのシーツで手際よくエヴァの身体をクルクルとくるんで簀巻きにしていく。……おそらく止血目的ならば傷口に布などをあてればそれで十分だろうに、彼女もなにげに動揺しているようだった。
 しかし、その結果出来上がったのは、純白の布地の所々を赤く染めた人型の布の塊であり、まさしくそれは、これから遺棄されようとしている惨殺死体か、もしくはピラミッドに埋葬されていたミイラにしか見えなかった。
「どうしよう……これ」
「…………」
 ある意味では先程よりも更に凄惨な姿となって床に転がっているエヴァを前にして、明日菜と茶々丸は恐怖に震えた。ただひたすらに震え続けた。
 ちなみに、チャチャゼロも小刻みに震えていたが、笑いを堪こらえているようにしか見えなかった事は、エヴァには内緒にしておいた方が良いだろう。




 前編はここまで。後編はこちらからどうぞ。そういえば、これが私のweb小説のデビュー作という事になりますか。うあー、なんだか無駄に緊張する~(((( ;゜Д゜))))。

  じゃ、今日はここまで。
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