プロメテウスの政治経済コラム

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派遣法改定   何のための改定であったのか   放置の末に骨抜きとは!

2011-11-19 21:23:55 | 政治経済

民主党は労働者派遣法改正案を大幅に修正する方針だ。二年前の政権交代を機に民主、社民、国民新三党の合意でまとまった派遣法改正案は、財界の抵抗と、その意を体した自民、公明両党の反対によって、ずっと継続審議となっていた。民主党は財界路線への屈服の一環として、このほど自民、公明両党と改正案の修正で合意した。民主党が、自民・公明両党との「三党協議」を通じて、派遣法改正案から、製造業派遣・登録型派遣の原則禁止条項を削除することで合意したことは、文字通り政権交代の原点を否定するものだ。民主党は、普天間基地問題や消費税増税など政権交代で掲げた自公路線(=財界・アメリカ路線)への軌道修正の公約を投げ捨てることを続けている。国民への裏切りの連続である。

 

2年前政権についた民主党の鳩山由紀夫首相(=当時)は、派遣労働者をめぐる雇用、労働条件改善を「内閣の最重要課題」と位置付け、「労働者を保護する方向」での派遣法改正を表明した。2009年総選挙で政権交代が実現した主因は、自公政権がすすめた「構造改革」路線で貧困と格差が広がり、国民から厳しい批判を浴びたことであった。その中心に位置するのが労働法制の規制緩和であった。1999年に労働者派遣が原則自由化され、2003年のさらなる同法改悪で製造業派遣が認められるなか、非正規雇用が拡大。とりわけ08年秋のリーマン・ショックの後、大規模な派遣切りが大きな社会問題となり「年越し派遣村」が取り組まれまたことは、政権交代への期待を高めた。当時の民主党代表代行であった菅直人は派遣村を訪れ、派遣法の見直しに言及。小沢一郎代表も「政権を取ったらもう一度見直す」(09年1月)と述べるなど、政権戦略の中心にすえた。09年総選挙マニフェストには「常用雇用を拡大し、製造現場への派遣を原則禁止します」と明記して政権交代を実現したのだった

 

しかし、もともと変革への一貫した理念、意欲を持たない鳩山、小沢が、財界・アメリカのさまざまなネットワークからの巻き返しに会い、動揺するなかで、後を継いだ菅は政権交代のマニフェストを次々と投げ捨て、そしていま、野田政権がその仕上げに向かって邁進している。

民主、社民、国民新三党の合意でまとまった労働者派遣法改正案も財界の意向を体した審議委員の抵抗で大きな抜け穴があったが、それでも当時の派遣労働者の運動への世論の支持を反映して、製造業派遣・登録型派遣の原則禁止条項や違法派遣があった場合に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用」規定などが盛り込まれた。全労連をはじめ労働組合、弁護士、「派遣切り」とたたかう労働者などは、審議委員の抵抗でできた「抜け穴」をふさぐ抜本改正を求めて運動してきた。しかし、民主党の裏切りを糾弾するどころか、自公とうまくやれというマスメディアは、派遣労働者の苛酷な運命をほとんど取り上げなくなった。国民世論の政治に対する不信と諦めという間隙を縫って民主党は、自民、公明両党の要求を受け入れ、問題だらけの改定案をさらに骨抜きにする「修正」に動いた。主な修正内容は、現行改正案で原則禁止とした「登録型派遣」と「製造業派遣」の規定を削除するほか、偽装請負など違法派遣があった場合、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用制度」の導入を、三年後に延期するとしている。また短期(日雇い)派遣の禁止では、期間を二カ月以内から一カ月以内に緩和する。派遣労働者の無権利状態を改善するという法改正の原点を投げ捨てるものだ。

 

民主党にも、自公両党にもその亜流政党にも期待できない。何故そうなるのか。一部の労働者を除いて、圧倒的な数の日本の労働者階級がたたかわないからである。連合は修正案を容認するという。労働者がたたかうためには、団結が不可欠である。労働者のもつ唯一の力は、その人数である。しかし、人数の力は不団結によって挫かれる。労働者の不団結は、労働者自身の間の避けられない競争によって生みだされ、絶えず再生産される。「労働者組合は、労働者間の競争を終結させること、そして、労働者間の競争に代えて、労働者間の団結を据えることを、目的とする」。そして、「現在では、一国における団結体の到達度というものが、世界市場での序列におけるその国の順位を明確に示す、という状況になっている」(マルクス)。団結体は、労働者にとっては何よりもまず、労働組合であり、労働組合の発展段階が、その国の経済的・政治的発展度の指標であり、労働組合の発展はそれほど重大な位置を占めるのだ


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