プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

08年労働者の反撃・職場のたたかい  09年は「雨のち晴れ」

2008-12-31 21:07:04 | 政治経済

「労働者階級の状態は、現存の社会的困窮の最高の、最も露骨な頂点であり、したがって、また現代のあらゆる社会運動の実際の土台、出発点である」(エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』)。年の瀬とともに、日本列島をきびしい寒波が襲っている。不況の嵐が吹くなか、「派遣切り」や「期間工切り」など雇用の破壊で、仕事はもちろん住む場所さえ奪われ、寒空のもと路頭に迷う人びとが続出している。CS朝日ニュースター「2008大論争」に出演した日本共産党の穀田恵二・国対委員長は、 2009年の「天気」を問われ、「雨のち晴れ」と記入。「雇用と中小企業は本当に大変だ。なんとか年を越せても、年度末が越えられるかどうかという状況で、大雨が続く。しかし、国民の運動があるから、未来は徐々に明るくなる」と語った。見田宗介・東大名誉教授は、「後から見れば、今年が戦後日本にあった大きな転換点の一つになっているのでは、と考えています。」と述べている(「リアリティーに飢える人々」「朝日」2008年12月31日)。

「派遣切り」や「期間工切り」に対して、各地で新しく労働組合を組織したたかって、部分的ではあるが成果を挙げる動きが始まった。国民の声や運動が社会を動かし始めているのだ。 多国籍企業は、「国内高コスト構造の是正」を掲げて、人件費については、雇用形態の弾力化・多様化と一体になった「固定費の変動費化」を強引に進めた。労働者に対しては、徹底した新自由主義的な能力主義競争を押し付けた。そのために、市場原理主義を賛美するとともに、平等主義を攻撃し、能力と努力の差による「自己責任論」のイデオロギーを注入して、労働者を個々バラバラの状態に追い込んだ。自公政権だけではなく、民主党も協力し、時には社民党までが労働法制の規制緩和に手を貸した。共産党は、労働者の利益擁護のために一貫して新自由主義「構造改革」に反対したが、如何せん、国会の中では多勢に無勢、多数に押し切られた。
こうしたなか、「傷つきやすく繊細で、『怒り』の感情をストレートに表出することなどめったにない」(首都圏青年ユニオン書記長・河添誠)、「困難の徹底した私秘化」、「内面への封じ込め」(横浜市立大学教授・中西新太郎)状態にあった若者が、「自己責任論」のイデオロギーの檻から脱して、会社が悪い、社会の仕組みがおかしいということに気づき始めた

人間の幸・不幸は、社会的原因+本人の生きざま+偶発的原因(災害や事故など)の重なりによって生じる。本人の生きざまそのものも、どのような家庭に誕生し、どのように育てられたたかとう偶発的要因が大きく作用する。能力と努力の差などというものは、本人の生きざまのほんの一部を構成するだけだ
非正規社員になり、景気の調節弁として、使い捨てられるのは「自己責任」などではなく、相対的過剰人口をつくりだし、半失業状態におくのは、資本蓄積の法則そのものである。しかし、労働者がどのくらい悲惨な目に遭うかは、社会的仕組み、政治のあり方で大きく変わる。そして、社会的仕組み、政治のあり方をどれだけ労働者に有利なものにできるかは、まさに労働者の団結の力、連帯の力なのだ。労働者の団結の力、連帯の力を高めるには、資本主義社会の仕組みを学び、政治闘争・経済闘争・イデオロギー闘争すなわち階級闘争の理論と実践を学ぶことだ
ドイツでは派遣労働者は派遣会社との労働協約を結び、解雇制限法で雇用が保障されている。派遣先企業が契約を打ち切っても派遣会社が労働者の新たな派遣先を探し、雇用安定のために、連邦雇用庁が労働者の収入減の一部を補償する。サッカーのオスィムさんではないが、「レーニンは、『学べ、学べ、なお学べ。』と言った。私は、選手に『走って、走って、走れ』と言っている。」ということだ。

今年1年、労働者、労働組合のたたかいは、大企業の横暴を告発、大きな前進を勝ち取った。とりわけ、景気悪化を口実として、いま大企業が競い合ってすすめている「派遣切り」「期間工切り」という事態にたいして首切りの対象とされた労働者が、泣き寝入りせず、不当な攻撃に屈せずに、勇気を持って立ち上がりつつあることは、特筆されてよい。いすゞ自動車では12月、非正規労働者がJMIU(全日本金属情報機器労組)いすゞ自動車支部を結成。契約途中で解雇を通告された期間社員550人の解雇を撤回させた。大分キヤノンでは請負労働者が、「大分地域労組大分キヤノン・日研総業分会」を結成。団体交渉で一人5万円の「越年資金」の支給を勝ち取った。マツダ防府工場(山口県防府市)では、派遣労働者(全労連傘下のローカルユニオン宇部の組合員)が派遣元と団体交渉し、雇い止めを撤回させた。こうしたたたかいに押されて厚生労働省は12月9日、「非正規切り」防止の通達、パンフレットを発表した(「しんぶん赤旗」2008年12月31日)。


深刻化する雇用不安を解決するために、企業と政治の責任を問い、委員長自らがキヤノン、いすゞ自動車、トヨタ自動車、日本経団連に乗り込み直談判し、常に国会論戦をリードする日本共産党の存在に内外のマスコミも大きな関心をみせた。各地で、街頭相談・炊き出しなどの連帯の支援が広がっていることも時代を切り開く未来を予感させる。まさに「雨のち晴れ」だ。


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