プロメテウスの政治経済コラム

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自・民 新体制による改憲同盟  改憲策動派の巻き返しとその矛盾

2008-03-05 16:19:17 | 政治経済
昨年4月、旧自主憲法期成議員同盟を改称し改憲保守派を集めて結成された「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)が3月4日、自民・民主の新体制によって、停滞していた改憲策動の巻き返しに出た。あいさつで中曽根会長は「憲法問題がいま冷えている最中に、なお国会議員の中には根強い憲法改正への意欲が充満している」とし、「超党派で最大公約数を求めながら国家像を決めていく大事業だ」と強調した。「九条の会」に対抗していくために地方の拠点づくりを進めることを確認したように改憲派の最大の眼目は第9条第2項を改定し、アメリカの海外での戦争に自衛隊が参戦し、ともに軍事力を行使できるようにすることにある逆にいえば、他の条項をいくら改定しても、9条2項改定の入らない憲法「改正」はいらないということだここに改憲派の最大の矛盾がある。日本の国を守る自衛隊は必要であっても、アメリカのように海外でどんどん戦争する軍隊はチョッと待ってくれというのが国民世論の過半数であるからである。

新憲法制定議員同盟の新役員体制の発足は、これまで参加のなかった民主党幹部を組み込むことで、参院選と改憲オタクの安倍晋三の退陣で挫折した改憲策動を盛り上げることに狙いがある。自民党からは安倍晋三前首相、伊吹文明幹事長、谷垣禎一政調会長らが新たに顧問に就任、民主党からも鳩山由紀夫幹事長が顧問、前原誠司副代表が副会長に就いた。2008年度予算案の衆院強行通過をめぐって「対立」姿勢をみせる自民、民主両党だが、九条改憲という国のあり方の根本問題では基本的に同方向であることを示すものだ。
閣僚では町村信孝官房長官が参加し、「(中曽根氏から)内閣を代表して出てこいというご命令をいただき、これは天の声だとして私は喜んで参加した」などと発言。憲法改定を目標とする議員同盟の副会長に名を連ね、改憲の呼びかけの先頭に立つ立場を鮮明にし、憲法尊重擁護義務(憲法99条)に公然と違反する行動に出た。鳩山邦夫法相、高村正彦外相、額賀福志郎財務相らも副会長に名を連ねている(「しんぶん赤旗」3月5日)。

愛知和男議員同盟幹事長は活動方針の説明の中で「われわれと正反対の勢力、『九条の会』と称する勢力が、全国に細かく組織作りができておりまして、それに対抗していくにはよほどこちらも地方に拠点を作っていかねばなりません。そこが今後の活動の大きな焦点となる」と強調した。中曽根康弘会長も「各党の府県支部に憲法改正の委員会をつくり、全国的な網を張っていくことが私たちの次の目標。そしてできれば超党派の全国的な国会議員、地方議員の連合の会をできるだけ早期につくりたい」と発言「九条の会」を名指しして「対抗」意識をむき出しにした発言は、改憲派の眼目が9条(2項)改定にあることを示すとともに、彼らの焦りの表れである(「しんぶん赤旗」同上)。

「戦後レジームからの脱却」を掲げた改憲オタクの安倍内閣の下で改憲手続き法が強行されたが、都市市民層を中心に逆に警戒感が広まった。自公が参院選で大敗した原因の一つであることは間違いない。
憲法改正の眼目が、米軍の戦争に参戦し、海外で武力行使する―そのための九条改定にあることが明らかになればなるほど、憲法「改正」の主張そのものが国民的に受け入れられなくなるであろう。改憲派の抜きがたい矛盾である。

改憲派にとっての当面の課題は、自衛隊恒久派兵法の論議に民主党を引きずり込むこと、改憲手続き法に基づき昨年8月に設置された憲法審査会を早期に始動させることである。民主党憲法調査会幹部の一人は、「総選挙を前にいま自民党と改憲で握手するのは難しいが、安倍内閣のもとでの強硬なやり方への一定の総括がなされるなら、憲法審査会を動かしていくことそのものには反対ではない」と話している(「しんぶん赤旗」同上)。
民主党が国会で安易に改憲論議に入れないのは、改憲反対の世論と共産党・社民党の存在である。国会での共産党・社民党の議席数を大きくすることが、九条改定反対派にとって決定的なのだ。

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