プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「反貧困たすけあいネットワーク」  新しい労働組合運動への期待

2007-11-10 18:59:06 | 政治経済
「助け合って貧困に立ち向かおう」―。働いても食うに食えない若者たちが団結して自ら助け合う互助組織「反貧困たすけあいネットワーク」が12月下旬に発足することとなった。ネットワークの呼びかけ人は、首都圏青年ユニオンの河添誠書記長、NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの湯浅誠事務局長ら。22日午後6時、東京都港区の「SUPER DELUXE」で発足イベントを開く。作家の雨宮処凛氏のほか、自民党の後藤田正純衆院議員、共産党の小池晃参院議員らも参加する(「毎日」11月9日 21時24分)。若い世代のワーキング・プアの労働組合運動の一つの形として注目・期待される。

フルタイムで働いても貧困線(生活保護水準)以下のワーキング・プアと呼ばれる人びとが日本型雇用が崩れるなかで急増している。日本型雇用を崩したのは「構造改革」である。労働規制の大規模な規制緩和によって、労働市場の姿が大きく変わった。日本型雇用による雇用と賃金の安定、一定水準の社会保障、自営業や小零細企業への保護などの枠組みが「構造改革」によって次々と壊され、一握りの「勝ち組」をのぞいて国民生活の安定が政治によって無視されている。とりわけ、90年代以降の長期不況期に就職時期を迎えた若者たちが悲惨な状況におかれている。

「反貧困たすけあいネットワーク」は、労働組合費も払えず労働組合にも入れない人や国民健康保険料が払えず社会保障などにもかかれない主に20~30歳代の人が対象である。病気やけがで働けなくなったときの休業補償や無利子貸し付けを行う「たすけあい制度」や、労働や生活に役立つ情報の提供、相談窓口の開設、青年が集い仕事について話し合う「若者カフェ」も開催する。同制度は1カ月の会費300円で6カ月以上の入会を条件に、万が一病気などで失業した時には、病院や薬店の領収書を提出すれば、その支払額に関係なく生活費として1日1000円を10日間支給する。そのほか、無利子で1万円の生活資金も貸し付ける(「しんぶん赤旗」11月10日)。
首都圏青年ユニオンの河添書記長が昨冬、アルバイトの残業代未払いの相談に訪れた母子家庭の高校生から、「労組に加入して組合費を払うぐらいなら、家計の足しにする」と言われたのがネットワーク発足のきっかけとなったという。湯浅事務局長は、「多くの若者が生きる知恵もノウハウも教えられないまま丸裸で放り出され、日雇い派遣やサラ金の食い物になっている。互いに支えあい、困ったときはこの1万円をステップにしてほしい」と強調する(「毎日」 同上)。

首都圏青年ユニオンは、東京公務公共一般労働組合青年一般支部として発足した、パートタイマー・アルバイト・フリーター・派遣・正社員など労働条件を問わない、つまりどんな働き方でも、どんな職業でも、誰でも、一人でも入れる、若者のためのユニオン(労働組合)である。90年代後半以降の大きく変わった労働市場に対応した労働組合運動としてその役割が期待される。ただ、無職の組合員や低賃金組合員のためには、組合費は低額に抑えざるをえないので、青年ユニオンだけで、専従をおくだけの財政的余裕がない。「青年ユニオンを支える会」などが最近になって結成され、財政を支えているが十分でない。二人の専従者を支えるための「支える会」の会員拡大が当面の課題となっている。理論学習・情勢学習などは、「支える会」会員の研究者・弁護士・労働運動活動家などが講師を務めている。
連合は、第十回定期大会で、貧困と格差を深刻化させている非正規雇用労働者問題を運動の柱にすえることを決定。連合あげて取り組むために10月15日、「非正規労働センター」設置を打ち出した。今の労働市場のあり方をベースにした青年たちの労働組合闘争を財政的・社会的に支える新しい労働組合運動が大規模にたちあがることが期待される。

11月22日に予定されている「反貧困助け合いネットワーク」発足イベントのスローガンは“~私たちにパンと誇りを!~”である。生きづらいのは自分のせいではない。働いても食うに食えない若者たちが、自分たちの手で状況を切り開くための助け合いプロジェクトだ
湯浅氏は「当事者だけでなく、支援的意味も含め多くの人に加入してもらい、市民相互の助け合い関係をつくりたい」とのべ、河添氏は「わずかな金額の支援すらできない今の社会について公的責任も追及していきたい」と語っている(「しんぶん赤旗」同上)。

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