プロメテウスの政治経済コラム

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「普天間」政府検討案  <訓練などの5割以上を県外>で誤魔化せると思っているのなら甘い!

2010-03-27 19:05:13 | 政治経済
米軍普天間飛行場の移設問題で、政府は、県内移設を軸に、一部基地機能の県外移転を組み合わせた案を検討しているようだ。政府内では、当面は米海兵隊キャンプ・シュワブ(名護市)陸上部にヘリ離着陸帯を造り、固定翼機やヘリの訓練を県外に移転、最終的には米海軍ホワイト・ビーチ(うるま市)沖合を埋め立て、新基地を造るという「2段階移設」案が有力な案として浮上しているという。
<沖縄にとって、シュワブ陸上案という最悪の選択と、勝連沖埋め立てという最悪の選択を、二重に実施することになる。これ以上悪い案は、思いつくことすら難しい。とてもまともに考えた案とは思えない>(琉球新報2010年3月27日)。
北沢俊美防衛相が、「われわれは(県外を含めた)分散移転ということで、いろいろな案を考えている」、「(普天間の負担を)5割以上減らせるかがポイントだ」などと言っているところをみると、<訓練などの5割以上を県外>ということで、沖縄県民の怒りを鎮めたいという思惑があるのだろう。しかし、沖縄県民にとっても、米軍にとっても、問題は単なる数字合わせではない。鳩山政権は、いよいよ袋小路に入ってしまった

 「分散移転」で沖縄県民を誤魔化せると思っているのなら、それは甘い。沖縄のことを何も知らないということだ。沖縄県民にとって、陸であろうが、海であろうが、沖縄県内に新たな飛行場を建設することに変わりない。沖縄県民にとって、基地の縮小・撤去はあっても新増設は一切ないのだ。
米軍普天間飛行場の早期閉鎖、撤去を求める「3・26普天間基地の県内移設に反対する女性集会」が26日夕、那覇市の教育福祉会館で開かれた。もはや保守も革新もない。「少なくとも県外」を掲げ誕生したはずの鳩山政権が県内移設ばかりを検討している状況に、立場の違いを超えて、結集した300人以上の女性参加者の怒りが爆発した。普天間飛行場の早期閉鎖、撤去と県内での新たな基地建設を許さない要請案を採択し、鳩山首相や外務、防衛、沖縄担当の各大臣、官房長官、オバマ米大統領らに送ることを確認。「子どもたちの未来に軍事基地を押し付けるのは絶対に許せない」と軍事基地反対の思いを、赤い紙に託して日米両政府に「レッドカード」を突き付けた(琉球新報 同上)。
沖縄に基地が残っている限り、訓練や基地機能の一部移転が「沖縄の負担軽減」にはならないことを、沖縄県民は一番良く知っている。2006年の米軍再編日米合意で嘉手納基地の訓練移転を取り決めたが、「沖縄の負担軽減」になったか。外来機飛来などでかえって嘉手納の騒音は増えた。深夜・未明の爆音は相変わらずだ。

 米軍が日本に居座るのは、もちろん日本を守るためではない。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン、イラク戦争を見ればわかるように、アジアへの軍事介入の出撃拠点であるということだ。そして、日本の基地にはほかにない利点がある。コストの相当部分を日本側が負担してくれること、さらに、安保条約・地位協定が廃棄されない限り、基地施設区域の無期限自由使用が保障されていることである。
米軍兵士は、出撃していないときは、何をしているのか。沖縄の人びとがそれを一番よく知っている
★キャンプハンセン、キャンプシュワーブでは水陸両用車、ホバークラフト型上陸用舟艇を使っての強襲上陸訓練、山岳地帯での侵攻、陣地構築、野砲、機関銃の射撃訓練、都市型訓練施設でのゲリラ制圧訓練、ヘリによる懸垂移動、物資機材の搬送、投下訓練、戦車と兵員の移動、索敵、制圧訓練も実施される。★伊江島、嘉手納弾薬庫地区では陸軍グリーンベレーとの合同訓練としてパラシュート降下訓練、制圧訓練、ヘリによる懸垂移動、物資搬送、投下訓練も実施される。沖縄周辺の訓練空域、海域では攻撃ヘリ及びFA-18戦闘攻撃機による実弾射撃訓練が頻繁に実施され標的となる小島の地形が原型を留めない程に破壊される(大城勲「ようこそイサオプロダクトワールドへ」2010年3月19日)。
イラク・ファルージャでの「掃討作戦」で、住民大虐殺の先陣をつとめた在沖第31海兵遠征部隊の隊員が沖縄での都市型訓練施設でのゲリラ制圧訓練が非常に役立ったと語ったことは、記憶に新しい
大城勲さんは、「分散移転」では米国も納得しないとして、<米国との合意を求めるにはSACO合意で辺野古移設を決めた際に米軍の求めた要件、ヘリ部隊と連動するKC-130空中給油機の運用可能な1300m滑走路と港湾施設が必要である。それは上に挙げた訓練施設、北部訓練場、キャンプシュワーブ、キャンプハンセンへの兵員、物資機材の搬入に現在の那覇軍港、ホワイトビーチ、天願桟橋からの混雑する市街地経由を避ける為に必要な要件である。現在、政府内で検討されている陸上案、勝連半島沖埋め立て案では米国との合意は望めない。>と指摘する。

 沖縄県民の県外移設への期待を膨らませたのは、首相自身だ。米政府と移設先地元の合意を前提にした「5月末決着」を繰り返し明言してきたのも首相である。普天間問題の行方は鳩山政権の帰趨を決める。問題解決能力、指導力など鳩山氏の首相としての資質が問われているのだ(「毎日」2010年3月27日)。
基地負担の軽減を求める沖縄県民の目は、いずれ、基地施設区域の無期限自由使用を保障する安保条約・地位協定そのものに向かわざるをえないだろう。

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