プロメテウスの政治経済コラム

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イラク“靴投げ記者”が人気  中東地域の反米感情を醸成しただけのブッシュ政権8年

2008-12-21 20:19:52 | 政治経済
2月14日、イラクを電撃訪問したブッシュ大統領は、マリキ首相との共同記者会見中にイラク人記者から靴を投げつけられた。靴を投げつけたのはイラクのバグダディヤ・テレビに所属するムンタダル・アル・ゼイディ記者。事件後、彼はアラブ社会で英雄として賞賛されており、無罪放免を求める声はいよいよ高まっている。「靴投げ」事件直後、ブッシュ大統領は「事実としていえるのは靴のサイズは10」「私はかわすのがうまい」などと落ち着いたところをみせたが、イラク国民の怒りは大きく、まさしくブッシュ政権8年間を象徴する事件であった

“靴投げ記者”がいまアラブで人気である。アラブ社会で靴底は、最大の侮辱を意味するそうだ。汚れをきらっての話かもしれない。イスラム教のモスクへ入るときには靴を脱がねばならない。そんなイラクに、土足で押し入ったアメリカ。「別れのキッスだ!」「夫を亡くし妻や、親を亡くした子どもからの贈り物だ!」という靴に込められたイラク人の怒りの大きさを思い知るべきだ。
“靴投げ記者” に対し、エジプトのサアド・グーマさんは、自分の20歳になる娘のアマルさんと結婚させたいと申し出た。娘も父親の考えに同意しているという。グーマさんは「わたしが彼(ザイディ記者)に譲れるもので、娘以上に大事なものはない」とコメント。また、アマルさんも「名誉なことで、彼と一緒ならイラクに住みたい」と話しているという(ロイター12月18日11時58分配信 )。
問題の靴については、サウジアラビアの富豪が1000万ドル(約9億円)で買いたい、と申し出ているらしい。男性は企業経営者で、動機として「(高値を付けることで)記者の偉業をたたえたいから」と語っているという。一方、インターネット上には「ブッシュ靴当てゲーム」が登場。かがんで頭を引っ込めるブッシュ大統領に向けてタイミング良く「投げる」のボタンをクリックして靴を投げ、命中回数を競うゲームなどタイプは千差万別。基準値をクリアすると「YES, YOU CAN」と、オバマ次期大統領のスローガンをもじった言葉が浮かぶものや、シークレットサービス(警護)役となって大統領を守るものなど趣向の凝ったゲームも大繁盛らしい(「 スポーツ報知」12月18日8時2分配信 )。

ブッシュ大統領はイラク訪問前に、「最大の痛恨事は、イラクに関する情報の誤りだった」と1日放映の米ABCテレビの番組で語った。大統領は当時、連邦議会議員や世界中の指導者の多くが「同じ情報を得ていた」とする一方、「私も戦争への心構えができていなかった」と弁明したという。反省するのはいいが、ここにはウソがある。独仏だけでなく、大量破壊兵器の有無を調査していた国際原子力機関(IAEA)の査察委員長も厳しく国連の場で、反対していた。米国だけが突出して、他の情報に耳を貸さなかったのだ。そして、イギリスのブレア首相が軽薄にもブッシュを後押して、EUの結束を壊してまで肩入れした。後に「うそつきブレア/ブライア(B+liar)」と言われ、任期前の退陣となった。軽薄さでは、Tony Blair以上の我が小泉は、国民から罵倒されることもなく、いまだにノホホンと永田町を肩で風切って歩いている。

ブッシュ大統領は、大量破壊兵器存在の情報の誤りについては、「最大の痛恨事」とは言ったが、侵略と占領でイラク国民に多大な犠牲を負わせたことへの謝罪の言葉はなかった。ブッシュ政権が、中東地域を不安定にし、米国に対するテロの危険を増大させたことは、否定できない客観的事実である米国がイラクとアラブ世界の尊厳を回復すためには、そして自らの威信を取り戻すためには、占領軍を速やかに撤退させ、イラクの主権を回復することである。外国軍が駐留するという「銃を突きつけられた」状況下での国民和解は、本当の和解ではない。イラクの治安情勢がどうであろうと、「撤退後の空白」をどう埋めるかはイラク国民とイラク政府が決定することである。侵略軍である米軍の即時撤退こそがイラクが抱える問題を解決する必要条件だと考える。“靴投げ記者”の人気の高さは、そのことを物語っている
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