プロメテウスの政治経済コラム

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WTO交渉挫折と食糧自主権  またしても輸入米からカビ猛毒  反省のない農水省

2008-12-22 20:14:27 | 政治経済

農水省は19日、同省が加工食品メーカーに食用として販売したタイ産米(ミニマムアクセス=MA米)からカビ毒が検出されたと発表した。しかし、輸入商社の名前もカビ毒米を購入した国内業者の社名やコメ加工食品の製品がなにであるかもすべて伏せたままである。具体的な健康被害が出るまでは知らん振りを決め込むつもりのようだ。輸入汚染米が、あれだけ問題となったにもかかわらず、まったく反省がない。「政官財」の癒着の構造のうち「官」だけを批判したくないが、「最大の悪の根源は霞が関の官僚」というのは一面の真理である。農水省役人の出鱈目の背景には、WTO農業協定の出鱈目がある。

農水省によれば、カビ米は10月22日にメーカーに売却したタイ産破砕米24トンの一部から見つかった。同日中にメーカーがコメを確認したところ、カビ米の塊180グラムを発見。アフラトキシンB1(発がん性がきわめて強い猛毒)が0・04PPM検出されたという。メーカーはカビを取り除いた上で全量を製品化したが、まだ出荷はしていないとしている。タイ産破砕米は、政府が今年6月に計3508トンを輸入。問題のメーカーには10月22日の分を含めて計30トンが売却済みだが、政府負担で全量を廃棄の予定という。

農水省資料によると、今年1月以降に、加工食品用(みそ、焼酎、せんべいなど)MA輸入米から「カビ状の異物」を発見できたのは43件。販売先の国内業者の報告などにより判明したという。うち、25件が10月以降に集中している。おそらく、三笠フーズなどの問題があって、国内業者が慎重に検査したためだと思われる。政府は毎年約58万精米トンの加工食品用のミニマムアクセス米を輸入しているが、「カビ混入輸入米」(輸入量)は、政府統計でも今年1月からの累計で31万精米トンを超えている。半分以上がカビ混入輸入米ということだ。なんで輸入米はカビだらけと分かっていながら輸入を続けるのか!

さらに、恐ろしいのは農水省の検査体制である。輸入時の検疫所検査を通過したあとで、どうして半分以上がカビ混入米なのか。まず同一の船での輸入を一件の届け出(1ロット)とし、1ロットのサンプリングの抽出率は、1万トン(30kg詰め袋約33万袋)あたり32袋なのだ。なんと0・01%。輸入時検査では米の安全性をまったくチェックできない。輸入食品の安全性はあくまで輸入業者の責任(検疫所業務管理室)というわけだMA輸入米が「カビ状の異物」だらけ、そのうえノーチェック検査体制で市場へとなると、カビ猛毒が消費者の口にはいるのも時間の問題である。全量検査が無理とすれば、汚染米の輸入を止めるほかないではないか!

国連の「食料への権利」特別報告官のデシュッター氏は17日、国連人権理事会に提出する報告書で、現行のWTOの農業協定は食料に関する人権を尊重するのではなく、食料を他の商品と同じように扱っていると批判国際貿易によっては飢餓状態にある人たちに食料供給はできなかったと指摘、発展途上国は新しい通商協定を交渉するよりも食料増産能力を高める努力を行うべきだと主張した(「しんぶん赤旗」2008年12月20日)。

いま、各国の条件に応じて食料・農業政策を自主的に決定できる権利=食料主権の確立が必要だと言うのが、世界的な流れになりつつある。12月12日、「年内の大枠合意」をめざして調整が進められていた世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)がまたしても挫折した。WTO発足後10年、アメリカなど輸出大国と多国籍企業が大きな利益を得る一方、輸入国や途上国は深刻な打撃を受けた。輸出向けの低コスト・工業的農業が拡大し、途上国の多くで食料自給率が低下した。日本でも、コメを含めて農産物輸入が急増し、農業と農家が深刻な打撃を受け、食料自給率がいっそう低下した。農業を自由貿易万能論にゆだねることの誤りはもはや明らかである。貿易拡大最優先のWTOの枠組みでは「多様な農業の共存」は不可能なのだ。

事故米の不正流通問題ではっきりしたことは、『主食に回さない』といっていたけれども回っていた、農水省の説明はウソであったということだ。それでも懲りずに、カビ混入米を平気で輸入し続けている。
日本は主権国家として、海外からのコメの輸入をきっぱりと禁止すべきだ


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