プロメテウスの政治経済コラム

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「1票の格差」違憲判決  小選挙区選出議員は全国民を代表する選挙された議員といえるのか!

2013-03-28 19:07:53 | 政治経済

昨年12月衆院選の「一票の不平等」をめぐる訴訟は仙台高裁秋田支部が27日、「違憲」と判断し、全国14の高裁・高裁支部で計16件の判決が出そろった。広島高裁、同岡山支部が初の「違憲・無効」を宣告し、12の高裁・高裁支部が「違憲」、2高裁が「違憲状態」で、国会に極めて厳しい判断を示した。「1人1票」が原則の民主主義の根幹といえる選挙制度で、1人の有権者が2票以上の権利を持つなどというのはどう考えてもおかしい。同時に、相対第一位の候補者のみが議席を獲得し、二位以下の民意がすべて切り捨てられる小選挙区制の下での国会は、「全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」(憲法43条)といえるのか。普通選挙権に基づく議会制民主主義を骨抜きにする支配者階級の企みではないのか。「一票の平等」とともに、民意がそのまま、国会に代表を選ぶことに繋がる選挙制度を実現することは、普通選挙権に基づく議会制民主主義を国民の側に取り戻す喫緊の課題である。

 

衆院の選挙制度のうち小選挙区制について、最高裁はすでに2011年3月、09年8月の総選挙に対して「違憲状態」と判決していた。今回の高裁判決は、その後抜本是正されることなくさらに格差が拡大して昨年12月の総選挙が行われたため、司法の側から、行政・国会の怠慢を糾弾したものである。今回、各高裁・高裁支部の判決が判断基準にしたのは、09年衆院選を「違憲状態」とした11年3月の最高裁判決であった。各都道府県に一議席を割り振る「一人別枠方式」が格差を生む要因だとして廃止を求めた。これに国会がどう対応したかが今回判決のポイントとなった。

選挙制度は主権者である国民がその意思を国会などの議席に反映させる、民主主義の基本的な仕組みである。それだけに、経済的権力をもつ支配層は、数の上で多数を占める労働者階級を政治的に抑圧するためには、高級官僚、御用学者やマスコミ買収等のイデオロギー操作とともに労働者階級の代表が国会などに多数の議席を占めないようにする選挙制度が必要不可欠となる。自民も民主も維新やみんなが比例代表制の議席削減にこだわるのは、多数を占める労働者階級の民意が国会に届くことを妨害しようとする支配階級の意思を忖度してのことである。

 

元最高裁判事の泉徳治弁護士は「最高裁の一人別枠方式を廃止せよという判決は、都道府県の選挙を人口比例にしなさいというメッセージだ。国会は二倍未満にすればいいとすり替えている」と批判する(「東京新聞」2013年3月28日)。民主・自民・公明の小選挙区300の定数を「0増5減」する案は、「最高裁判決の指摘に沿った改正とは質的に異なる」(札幌高裁)、「弥縫策にすぎない」(福岡高裁)。

もともと全国を300の選挙区に細分化する小選挙区制は、人口が変動すれば選挙区ごとの格差が容易に拡大することになり、小選挙区にこだわる限り新たな「違憲」状態が生まれるいたちごっこを繰り返すことになる

 

昨年12月に行われた総選挙での自民党の圧勝は、小選挙区制という支配階級に都合の良い制度の下での虚構の“大勝利”だった。政党支持率である比例区での得票数1662万票は政権を失った09年総選挙の1881万票より220万票も少なく、議席も55から57に2議席増えただけであった。一方、小選挙区で、300議席の79%にあたる237議席を獲得したが、得票率は43%にすぎなかった。これで、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」(憲法43条)といえるのか。

先の総選挙の300小選挙区で、候補者の得票のうち議席に結びつかなかった、いわゆる「死票」の割合(「死票」率)が50%以上となった小選挙区は全体の6割に当たる188に及び、前回2009年総選挙と比べ99選挙区も増えた。「死票」が最も多かった長野3区では72・23%になった。7割の民意を切り捨てる小選挙区制の下で、普通選挙権に基づく議会制民主主義といっても、ほとんど意味をなさないことは明らかであろう

 

今回の総選挙では、全国の小選挙区で合わせて約3730万票(56%)もの「死票」が出た。その被害は少数派政党がもろに受ける。得票数に比例する全国一区の比例代表制で計算した場合は12議席取れたはずの社民党は現行の選挙制度の下で、今回2議席に、29議席取れたはずの日本共産党は8議席に、27議席取れたはずの日本未来の党は9議席になってしまった。それに対して自民党は、今回、小選挙区と比例区合わせて294議席を獲得したが、全国一区の比例代表制にした場合は、半分以下の132議席になる。

非民主的な小選挙区制を温存し、現在の選挙制度で唯一民主的な比例代表の定数を削減するなどという企てが一体誰のためのものであるか、今や、明白である


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