プロメテウスの政治経済コラム

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「九条の会」第3回全国交流集会   多様な平和主義のおもしろさ

2008-11-26 18:55:58 | 政治経済
相変わらず一般マスコミは無視を決めこんでいるが、11月24日、午前10時30分から、東京・一橋の日本教育会館で「九条の会 第3回全国交流集会」が開かれ、全国各地の「九条の会」から約900人の人々が参加、熱心に経験の交流と討議を行った。憲法九条の改悪に反対するという一点だけで四年前に始まった「九条の会」。多様な平和主義を抱え込んで自治体首長から経営者・宗教者・子ども・青年・高齢者まで広い層に根を張っているのは愉快なことだ。明文改憲や解釈改憲の危険な策動を阻む大きな力として「九条の会」の草の根の運動がますます広まることが期待される。

呼びかけ人の一人である大江健三郎さんは「九条の会の人々には静かな確信に満ちた規範があり、孫やひ孫まで四代にわたる平和主義の伝統が国の伝統になれば、日本が国際的に平和主義を根付かせる大きな手がかりとなる」と述べた。同じく呼びかけ人の澤地久枝さんは、「『会』に参加する顔ぶれや人数は大きく広がり重層的になった。やたらなことでは崩されないし崩させてもならない」と発言した。集会では、日本国際ボランティアセンター代表理事の谷山博史さんが特別報告。アフガニスタン情勢と日本の対応について詳しく報告し、「憲法九条をもつ日本こそ和平の仲介者に」と訴えた。宮城・憲法九条を守る首長の会の鹿野文永さん(元鹿島台町長)は「九条改憲の動きこそ住民の安心・安全を脅かす」として、県内の16人の元市町村長で会を結成、全国の首長ら約千八百人に呼びかけ文を発送し、賛同が多数寄せられていると報告。会場からはどよめきと大きな拍手がおきた(「しんぶん赤旗」2008年11月25日)。

「九条の会」の呼びかけ人の一人で昨年7月に亡くなった小田実さんは、多くの日本人の「平和主義」は、深く考えた上での、思想としての「平和主義」ではないという。それは、まさにからだで体験した、体験そのものから生まれた「体現平和主義」平和主義を体現しているという意味)である。
「体現平和主義」は、おれの、わたしの体験にかけても、戦争はどんな戦争ももういやだ、というある意味では、思想としての平和主義より力強い。しかし、個人の体験に依拠した「体現平和主義」は、年月が経つにつれて、マメツ、風化する恐れがある。「体現平和主義」は、一個人の、また、一世代の体験だけに依拠するものだから、次の世代、次の次の世代に伝達するためには、特別の努力がいる。大江さんが「孫やひ孫まで四代にわたる平和主義の伝統が国の伝統になれば、日本が国際的に平和主義を根付かせる大きな手がかりとなる」と述べたのは、この点にかかわってのことだろう。

「戦争はとにかくまちがっている、いやだ」という日本人の「体現平和主義」は貴重である。しかし、この平和主義は、世界では特異な存在であった。日本人は戦後長い間それは、世界の誰もが思うことだと信じていた。ところが、湾岸戦争のときに世界は実は、そうではないということが起きた。
「おまえは、いったい、なんだ。この野蛮なるイラクのフセインの蛮行にさいして手をこまねいて見ていていいのか。世界の民主主義国がこぞって戦争――この正義の戦争に起ち上がっているときに何もしないでいることが許されるのか」と言われて、慌てて巨額の戦費を出した。出した上で、金だけ出して、さらに、それでいいのか、血を流さないでいいのか――となって来た。このような発言が現実味をおびるのは、日本の「平和主義」がすでに、憲法上の紙のうえのことで、戦争放棄、軍備全廃を取り決めた「平和憲法」のもとで、世界第二位とか第三位とか言われるほどの軍事予算を背景にした強力な軍隊を「自衛隊」の名の下に日本はすでにもっているという現実があるからである。

私たちは、日本が予算規模で世界第二位か第三位の軍備をもち、日米安保条約という軍事条約で世界最大の軍事国家と強力に結びついているために「平和憲法」の平和主義が原理的にないがしろにされている現実を忘れてはならないと思う。しかし、「平和憲法」がすでに、軍隊をもち、戦争も許容するものになっているから、「護憲」だけをいう「平和憲法主義」は意味がないとは思わない。戦争はどんな戦争でも拒否するという「平和主義」を思想、生き方の原理とする人もいれば、自衛隊の存在は認めるが、海外で人を殺す戦争は認めない人もいるだろう。多様な平和主義の人々が、憲法九条の改悪に反対するという一点だけで集まっているから、「九条の会」はおもしろいのだ。

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