プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

救急病院  “医療崩壊”は政治の貧困そのもの

2008-02-06 16:28:37 | 政治経済
「救急医療の最前線から政府の医療政策の転換を求める声が噴出している」―日本共産党の山下芳生議員が4日の参院予算委員会で行った質問は、いま全国で深刻化している“医療崩壊”の根本を問うものだった。緊急時に救急車を頼んでも、肝心の受け入れ病院が見つからない。先進国日本で、しかも都会地域でなぜこんなことが起きるのか。米軍支援や企業の競争力強化と自分たちの利権に現を抜かして民生を顧みない自公政治の貧困そのものでないか!

山下氏は今年1月、東大阪市で交通事故に遭った男性(49)が、5つの救急救命センターに受け入れを拒否されて死亡した事例を紹介。現地調査の結果、すべて「処置中」「満床」で、患者を受け入れられなかったことを明らかにした。
救急医療は(1)比較的軽い患者を受け入れる初期救急医療(2)入院が必要な患者を受け入れる二次救急医療(3)重篤患者を受け入れる三次救急医療(=救命救急センター)からなるが、「二次救急」病院が減ったため、患者が「三次救急」に流れ、「最後の砦(とりで)」がいつも「処置中」か「満床」に近い状態になってしまっているのである(「しんぶん赤旗」2008年2月5日)。

山下氏は、「“救えたかもしれない命を救えなかった”という事態を繰り返さないため、根本問題にメスをいれるべきだ」とのべ、「二次救急」減少の大もとにある医師不足や診療報酬引き下げ問題を指摘。これに対し、舛添要一厚労相は地域医療のネットワークづくりをいうばかりで、「最大の問題は二次、三次の医療機関にいかなくてもいい(軽い症状の)人までいってしまうことにある」などと患者に問題があるかのような答弁を繰り返した(「しんぶん赤旗」同上)。

各地で救急患者の受け入れ先を見つけるのが困難になっているのは、「初期救急」、「二次救急」、「三次救急」から成り立っている救急医療体制が揺らぎつつあるからである。毎日新聞2月4日付は次のように報じている。「救急システム全体が悪循環に陥っている実態が、毎日新聞の緊急アンケートで分かった。2次救急病院で救急診療を縮小した病院が2割に上ったほか、3次救急病院(救命救急センター)の4割が重症患者を断るケースが増えていると回答」「2次救急病院の22%が『05年1月以降に、救急診療を縮小した』または『近く縮小する』と回答した。縮小理由として、約8割が医師不足を挙げ、看護師不足や医療訴訟回避などが続いた。2次救急病院は全国に約4000あり、単純計算すると、約900病院が診療を縮小していると推計される」「3次の救命救急センターでは、05年1月以降に、本来は2次救急病院が診療すべき(最重症ではない)患者の受け入れが『かなり増えた』または『やや増えた』との回答は74%に達した。救急診療の最後の砦(とりで)とされる救命救急センターの患者受け入れに支障をきたすケースが増えているのは、2次救急病院の体制縮小や緊急手術ができないことなどが大きくかかわっているとみられる」(「毎日新聞」2008年2月4日 2時30分)。

救急システム全体が悪循環に陥っている根本には、自公政権の意識的な医師不足の創出がある。医療費を抑制するには、医師の数を減らすのが手っ取り早いというわけだ。医療を受けたくても受けられないようにしてしまえということだ。もう一つは、端的に診療報酬を引き下げることだ。
もともと救急医療は、いつ搬入されるかわからない緊急患者を一定数の医師が待っているという効率からいえば人件費のかさむ不採算部門である。「従来、療養病床の収入で救急の赤字をカバーしてきたが、06年の診療報酬改定で報酬がカットされ、それもできなくなった」との声が関係者からあがっている。必要な診療報酬を保障して、国民の命の砦を守るのは、政治の最低限の仕事ではないのか。
「アメとムチ」で岩国市をいじめている場合ではないだろう。

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