プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

公務員に労働協約締結権  当たり前のことが当たり前でない日本の後進性

2007-10-20 20:23:11 | 政治経済
公務員の労働三権(団結する権利、団体交渉をおこなう権利、団体行動をおこなう権利)は、占領軍の指示で1948年に大幅に制限されたままで、今日にいたっている。警察、消防職員などをのぞく非現業の公務員は、労働基本権のうち団結権は認められているが、団体交渉権のうち法的拘束力がある労働協約締結権や争議権(スト権)はなく、代替措置として人事院の勧告にもとづいて給与などが決められてきた。ILOから3度の勧告を受けても日本政府は、「公務員の労働基本権制約に関するILOの見解は十分認識しているが、公務員の争議行為制約の範囲等については、各国の歴史的背景や公務員労使関係の状況等諸般の事情を考慮して決めるべきものであると考える。」として頑なに占領軍命令を守ってきた。

ところが、公務員の労働基本権のあり方を議論していた政府の行政改革推進本部専門調査会(座長・佐々木毅学習院大学教授)は19日、非現業公務員に団体交渉権の柱となる労働協約締結権を付与することを明記した報告書をまとめ、渡辺喜美行革担当相に提出した公務員を民間企業の社員のように成果主義で猛烈に働かせるには、労働基本権を奪ったままでは、余りにも露骨過ぎると考えたのであろう。 報告書は、「労使の交渉に基づき、労使が自律的に勤務条件を決定するシステムへの変革を行わなければならない」として協約締結権付与を明記。しかし、協約締結権と一体の関係にある争議権や、労働基本権が一切ない消防や監獄職員などへの団結権付与は両論併記にとどめたままである。全公務員に認められていない争議権(スト権)付与の是非について、事実上結論を先送りした。協約締結権を付与する職員の範囲や協約事項の範囲なども今後の検討に委ねられている。労働基本権制約の代償措置とされた人事院勧告制度の廃止も盛り込んだ。新たな仕組みの導入には「五年程度の期間が必要」としている(「しんぶん赤旗」10月20日)。

長年、国や自治体と公務員労組の間の交渉で、勤務条件を決めるという経験がないわけだから、双方の側の成熟が必要だろう。 それにしても、勤務条件を決めるにあたって、争議権(スト権)がないというのは、やはり不自然である。構造改革が進む中で、民間労働者と公務員との間に意識的に対立、分断が持ち込まれてきた。しかし、公務労働者が一人前の労働者になるということは、公務員自身だけでなく民間を含めた全労働者のたたかいや、公共サービスを守る国民的な運動にとっても大きな影響を与えることは間違いない。
国民や住民の安全・安心を脅かす公共サービスの切り捨ては、通常、公務労働者の人員削減や労働条件改悪とセットになって強行されるものである。天下りや政官業の癒着や腐敗の問題が、上意下達の行政システムや特権的官僚制度のもとで起きていることを考えると、良心的で住民の立場に立つ公務労働者を励ますためにも、一般公務員の労働基本権の確立が是非必要である公務員に「全体の奉仕者」の立場にたって、国民犠牲の公共サービス切り捨てや癒着・腐敗など行政のゆがみを現場からチェックし、ただしていく力をもってもらうことは、国民の利益にもかなうことである。労働協約締結権の早期具体化とともに、両論併記となった課題でも前進を勝ち取り、公務務員労働者の労働基本権の全面的回復めざすことを国民的課題として共にがんばろうではないか

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