プロメテウスの政治経済コラム

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被災者支援法改正 阪神淡路から12年 やっと悲願の「住宅本体の再建支援」に道

2007-11-08 19:03:23 | 政治経済
大規模地震などの自然災害による被災者の生活再建にとって、「住宅本体の再建支援」が決定的に重要であることは自明だ。心も、身体も、癒やされぬ傷を負った被災者にとって、「なんとか自分の家に落ち着きたい」というのは、もっとも切実な願いであるからである。しかし政府は、日本は資本主義社会だから個人財産の公的補償はしないという態度にかたくなに固執してきた。阪神・淡路大震災を契機に、被災者の住宅再建に国の支援を求める世論と運動が粘り強く取り組まれ、1998年に議員立法として被災者生活再建支援法が成立し、その後見直しも行われたが、住宅再建の前に「国の壁」がたちはだかってきた。被災者への支給金額は最高でも3百万円、使途は住宅の解体・撤去など周辺経費に限られ、肝心の住宅本体の建設費や補修費には使えない。対象も全壊・大規模半壊の住宅だけで、あまりにも制約が多く、被災者や地元自治体から「これでは使えない」という声が充満していた

被災者生活再建支援法については、前回改正時(04年3月)の付帯決議で、被災住宅本体の再建や補修を支援の対象とすることが今年度中の法改正の最大の課題となっていた。「日本は私有財産の国だから個人の財産への補償はできない」というのは、憲法に規定されたり、法律に書いてある問題ではない。要は政府の政策判断の問題である。自民、公明両党は10月12日、被災者生活再建支援法の一部改正案を衆院に提出した。全壊世帯に見舞金の形で100万円を支給▽宅を建設・再建する場合に200万円を上乗せし、最高300万円支給――などが柱。これまで認めてこなかった住宅本体の再建支援にやっと道を開いた。同法改正をめぐっては、民主党も全壊世帯で最高500万円を支給する改正案を9月27日に参院に提出。今年1月1日からの災害までさかのぼって適用することも盛り込んだ。与党案、民主党案、共産党の申し入れ(9月27日)は、これまで最大の課題とされてきた住宅本体への直接支援が盛り込まれたという点で各党の足並みがそろった(「しんぶん赤旗」10月19日)。

中越地震、中越沖地震や能登半島地震など各地の災害被災者らは10月27日、被災した住宅本体への公的支援実現を訴え、「被災者生活再建支援制度の抜本改善を求める全国交流集会」を東京都内で開いた。与野党が国会に提出している被災者生活再建支援法について「(今国会で)全政党が協議して、全会一致し抜本的改正」を求めるアピールを採択した。7月の新潟中越沖地震はじめ、能登半島地震、新潟中越大震災、三宅島噴火災害、阪神・淡路大震災、北秋田市豪雨災害などの被災地からの報告があった。住宅本体への公的支援や支給条件緩和を求める訴えが相次いだ(「しんぶん赤旗」10月28日)。
日本共産党の志位委員長は10月18日の記者会見で「被災者にとってなによりも大切なことは、どの政党の提案であれ、現に苦しんでいる被災者を支援していくために現行法を一歩でも二歩でもよいものにしていくことだ」とのべ、衆参で与野党の力が逆転している状況も踏まえ、与野党間の協議を呼びかけた(「しんぶん赤旗」10月19日)。

このような動きのなかで、被災者生活再建支援法の改正を巡り、それぞれ独自の案を提示していた自民、公明両党と民主党は11月6日、改正案を一本化し、今国会で成立させることで合意した。焦点だった住宅本体への支援について、対象経費の使途を限定しないとしており、住宅の建設、購入、補修などに使うことができるようになる。従来の支給対象は解体撤去費や住宅ローンの利子に限定されていた。 さらに従来は年齢や年収の要件が複雑なうえ、被災者の実費請求に基づく積み上げ方式のため、手続きが面倒であった。今回の与党・民主党合意案は、支給額の限度額は三百万円で現行法と変わらないものの、支給額の算出方法は、積み上げ方式から定額方式(住宅の建設・購入や補修、民間賃貸住宅入居に合わせ、居住安定支援制度に代わって200万~50万円の定額を支給する)とした。世帯主の年齢・年収要件の撤廃などでも合意した。特定四災害(3月・能登半島地震、7月・中越沖地震、九月・台風11号、台風12号による災害)は、改正法公布後に申請する被災者については、特例措置として、改正後の制度の申請をすることができることも盛り込む(「しんぶん赤旗」11月7日)。

衆参両院で与野党の力関係が逆転する中で、阪神淡路大震災から12年 やっと被災者の悲願の「住宅本体の再建支援」に道が開いた。半壊世帯が対象世帯に含まれないなど不十分な点もあるが、国民の世論が政治を動かした点で重要な前進であった。

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