政治的言動が相次いでいるＮＨＫの古森重隆経営委員長について四つの市民団体が５月９日、罷免を求める６２９０人分の署名を、経営委員の任命権者である福田首相あてに提出した。「ＮＨＫを監視・激励する視聴者コミュニティ」、「ＮＨＫ問題を考える会(兵庫)」、「ＮＨＫ問題京都連絡会」、「ＮＨＫ問題を考える大阪の市民の会」の四団体である（「しんぶん赤旗」5月10日）。実はこの署名には私も参加した。昨年６月、ＮＨＫ経営委員長に就任した冨士フィルムホールディングス社長・古森重隆氏は、就任以来、ＮＨＫの経営方針などを巡って強引な運営が目立ち、ＮＨＫ執行部との間でも軋轢が高まっている。古森氏は、いわずと知れた安倍晋三取り巻きの財界人であり、およそメディアの中核にあるＮＨＫにもっともふさわしくない人物である。
古森氏は、この半年ほどの間に、公共放送の責任者としての識見が問われる不穏当な言動を重ねている。昨年９月の経営委員会の席上、選挙期間中に放送したＮＨＫの歴史番組について、政治的中立性を疑問視するような発言をして問題になった。古森氏は9月11日に開かれた経営委員会で、「放送内容のバランスに関しても、選挙期間中の放送については、歴史ものなど微妙な政治的問題に結びつく可能性もあるため、いつも以上にご注意願いたいと思います」と発言。これに対し、「経営委には番組内容まで踏み込む権限はないのでは」「社会の公器に対する認識が足りない」と批判が噴出した。ＮＨＫの橋本元一会長（当時）でさえ、「心外だと思った」と不快感を示していた（「朝日」2007年10月05日）。
古森氏の不穏当な言動に対しては、昨年末に改正された放送法で、改めて個々の番組への経営委員会の干渉を禁止する条文が付け加えられたほどである。ところが、古森氏は今年１月の経営委員会で、ＮＨＫの監督責任を持つ経営委員会が番組のチェックに関与できないことには違和感があると、放送法の趣旨に反した発言をくり返した。さらに今年３月の委員会では、「不偏不党を謳った国内放送はいざ知らず、国際放送では政府の論調にたって、日本の立場、国益を主張すべきだ」と、ＮＨＫの国際放送を、まるで政府の広告塔にでもするかのような不穏当な発言を繰り返した。これに対し、ＮＨＫの今井義典副会長は「ＮＨＫの放送では、日本の立場を直接主張するということはない」などと反論。多賀谷一照委員長代行は「日本政府の立場だけをもっぱら出すのでは、国営放送になってしまう」などと述べた（「毎日」3月25日）。
アメリカのイラク戦争に直ちに賛同し、参戦することが国益か、高遠菜穂子さんらのように人質になっても人道支援に尽力し、イラクの人びとと心を通わせることが国益か、誰が判断するのか。政府の見解を一方的に放送することの危うさは、明らかだ。自国政府に批判的な意見も伝えてこそ、国際放送への世界の信頼が高まるのではないか。北朝鮮の国際放送を信用しない者が 、NHKには政府の見解の発信を覚悟を決めてやれという。古森氏は、「国際ビジネスをやってきた経験から、ＮＨＫも日本の主張をはっきり放送しなければならないと思う」というが、公共放送であるＮＨＫは、国民から集める受信料で運営され、国家権力からの独立を保障し、さまざま情報を多角的に伝えるための報道機関である。利潤追求が単一の目的のビジネスの世界とは決定的に違う。古森氏の発言は、古森氏が報道機関にふさわしくない人物であるということを自ら証明している。
古森氏は、「ＮＨＫを国営放送として位置づける」ことを目指す国会議員の一人、自民党の武藤容治氏を励ます会が今年2月26日に開かれた際には、発起人として出席し、３月の国会でその不見識が指弾されたにもかかわらず、その後の委員会でも「一民間人としてなら、この種の会に出席することまでは禁止されていない」と、開き直っている。政治との距離をわきまえなければならないというＮＨＫの監督機関の長としての自覚などさらさらない。
古森氏の一連の言動は、単なる偶発的なものではなく、彼が安倍前首相の強引な後押しで経営委員になった経緯からも分かるように、ＮＨＫを政財界の思う通りの放送機関に作り変えようとする意図に沿った、確信犯的なものと言わざるを得ない（日本ジャーナリスト会議）。 権力から自立すべき言論報道機関の責任者として、見識と矜持に欠ける古森氏の経営委員長不適格はあきらかだ。
われわれは、古森氏の辞任を求めるとともに、こうした古森氏を経営委員に任命した政権党の責任を追及したい。
古森氏は、この半年ほどの間に、公共放送の責任者としての識見が問われる不穏当な言動を重ねている。昨年９月の経営委員会の席上、選挙期間中に放送したＮＨＫの歴史番組について、政治的中立性を疑問視するような発言をして問題になった。古森氏は9月11日に開かれた経営委員会で、「放送内容のバランスに関しても、選挙期間中の放送については、歴史ものなど微妙な政治的問題に結びつく可能性もあるため、いつも以上にご注意願いたいと思います」と発言。これに対し、「経営委には番組内容まで踏み込む権限はないのでは」「社会の公器に対する認識が足りない」と批判が噴出した。ＮＨＫの橋本元一会長（当時）でさえ、「心外だと思った」と不快感を示していた（「朝日」2007年10月05日）。
古森氏の不穏当な言動に対しては、昨年末に改正された放送法で、改めて個々の番組への経営委員会の干渉を禁止する条文が付け加えられたほどである。ところが、古森氏は今年１月の経営委員会で、ＮＨＫの監督責任を持つ経営委員会が番組のチェックに関与できないことには違和感があると、放送法の趣旨に反した発言をくり返した。さらに今年３月の委員会では、「不偏不党を謳った国内放送はいざ知らず、国際放送では政府の論調にたって、日本の立場、国益を主張すべきだ」と、ＮＨＫの国際放送を、まるで政府の広告塔にでもするかのような不穏当な発言を繰り返した。これに対し、ＮＨＫの今井義典副会長は「ＮＨＫの放送では、日本の立場を直接主張するということはない」などと反論。多賀谷一照委員長代行は「日本政府の立場だけをもっぱら出すのでは、国営放送になってしまう」などと述べた（「毎日」3月25日）。
アメリカのイラク戦争に直ちに賛同し、参戦することが国益か、高遠菜穂子さんらのように人質になっても人道支援に尽力し、イラクの人びとと心を通わせることが国益か、誰が判断するのか。政府の見解を一方的に放送することの危うさは、明らかだ。自国政府に批判的な意見も伝えてこそ、国際放送への世界の信頼が高まるのではないか。北朝鮮の国際放送を信用しない者が 、NHKには政府の見解の発信を覚悟を決めてやれという。古森氏は、「国際ビジネスをやってきた経験から、ＮＨＫも日本の主張をはっきり放送しなければならないと思う」というが、公共放送であるＮＨＫは、国民から集める受信料で運営され、国家権力からの独立を保障し、さまざま情報を多角的に伝えるための報道機関である。利潤追求が単一の目的のビジネスの世界とは決定的に違う。古森氏の発言は、古森氏が報道機関にふさわしくない人物であるということを自ら証明している。
古森氏は、「ＮＨＫを国営放送として位置づける」ことを目指す国会議員の一人、自民党の武藤容治氏を励ます会が今年2月26日に開かれた際には、発起人として出席し、３月の国会でその不見識が指弾されたにもかかわらず、その後の委員会でも「一民間人としてなら、この種の会に出席することまでは禁止されていない」と、開き直っている。政治との距離をわきまえなければならないというＮＨＫの監督機関の長としての自覚などさらさらない。
古森氏の一連の言動は、単なる偶発的なものではなく、彼が安倍前首相の強引な後押しで経営委員になった経緯からも分かるように、ＮＨＫを政財界の思う通りの放送機関に作り変えようとする意図に沿った、確信犯的なものと言わざるを得ない（日本ジャーナリスト会議）。 権力から自立すべき言論報道機関の責任者として、見識と矜持に欠ける古森氏の経営委員長不適格はあきらかだ。
われわれは、古森氏の辞任を求めるとともに、こうした古森氏を経営委員に任命した政権党の責任を追及したい。
