ガザ紛争に関して主流マスコミは、さまざまな「誤解」を流布している。たとえば、イスラエル人少年３人の殺害が、今回の攻撃の発端となったとか、これは、イスラエルの「自衛」戦争であるとか…。ハマースが停戦を受け入れないことが、パレスチナ人・イスラエル人双方の死者の拡大を招いており、1000人を超えるパレスチナ人が犠牲になっているのはハマースの責任であるかのような印象を振り撒いている。
しかし、問題の真相は、ハマースのロケット弾攻撃にあるのではない。マスメディアが語らない問題の根源は、ガザがイスラエルに占領され、封鎖されていることにある。ハマースのロケット弾攻撃は、占領と封鎖という植民地支配に対する抵抗なのだ。ネルソン・マンデラがアフリカ民族会議（ANC）青年同盟を組織し、抵抗したのと同じである。一方的にハマースの武装解除をいう主張がいかに的外れかということだ。
パレスチナの悲劇は、1948年のパレスチナ人の離散の原点であるナクバに始まる。ナクバとは「大惨事」あるいは「大破局」を意味するアラビア語である。
1947年11月29日、国連総会はパレスチナ分割案を賛成３３、反対１３、棄権１０をもって可決した。シオニストは即日イスラエル国家の設立を宣言し、アメリカは直ちにこれを承認し、三日後ソビエトもこれに倣い、イスラエルがパレスチナの地に強引に建国された。国連分割案では、ユダヤ人国家の領土は全パレスチナ領域の約55％であったが【これ自体、当時の土地所有の実態を無視した不当なものだった】、同時にユダヤ人国家内はその人口の半数以上が非ユダヤ人、つまりパレスチナ人になることは確実であった。新生ユダヤ人国家におけるユダヤ人を将来も多数派にするためにはその領域からパレスチナ人を追放することが必要となった。こうして、虐殺、レイプ、強制追放によって当時１００数十万人いたパレスチナ人の８０万人以上が暴力的に故郷を追われ難民となった。ナクバは「民族浄化」でもあったのだ。
なぜ、パレスチナ人の身の上にイスラエルによる殺戮の悲劇が繰り返されるのか。
世界のそして日本の主流メディアは、ガザが４７年にわたり国際法上違法な占領下にあり、また８年にわたり国際法上違法な封鎖下にあり、占領と封鎖により住民がその基本的人権をことごとく否定されているという事実をまったく報道しない。ユダヤ人がその財力を使い、欧米の政治家を買収し、主流メディアを買収しているからだ。アメリカの政治家は反イスラエルでは、選挙で当選が覚束ない。ヨーロッパの政治家にとって反イスラエルは、反ユダヤであり、ホロコーストの亡霊を想起させる。
今回のイスラエルのガザ侵攻は、６月１２日にイスラエルの３人の若いユダヤ人入植者が西岸で誘拐・殺害された事件を、ハマースの犯行だと決めつけ、それに対する報復として行われた。
イスラエル軍はハマースの武器の備蓄が一定程度になると武器を破壊するためガザを空爆したり、地上軍侵攻したりする。イスラエルは、ガザに対する自分たちのアプローチを「芝を刈る」と呼んでいる。つまり、２年か３年に一度は必ず、ハマースを攻撃し、弱体化しなければならない、ということでイスラエルによる殺戮が繰り返される。
ガザのパレスチナ人は、圧倒的多数を占める民間人もハマースその他の党派のメンバーも、２００７年以来、［封鎖下で］緩慢に殺されるか、［攻撃で］一瞬で殺されるか、という二者択一を迫られている。イスラエルがガザに課し、エジプトもその維持に協力している厳格な封鎖の結果、飲料水もなく、栄養も不十分で、医療も十分ではないせいで、病気や疾病で死ぬのか、イスラエルが、そろそろ「芝を刈る」頃だと決めたとき、あっという間に死ぬかのどちらかだ、ということだ。しかし、その真相をマスコミもほとんど誰も暴露しない。
いま、ガザで起きていることは何なのか、イスラム原理主義組織ハマースとイスラエルが、互いにやりあって、どっちもどっちだ、というようなものではなく、ガザの人々が「生きながらの死」「緩慢な死」に対して人間の尊厳をかけてイスラエルという「占領者」「侵略者」に抵抗しているのだ。占領者と被占領者の違いを無視して両者を「暴力」と言う言葉で平準化し、何の違いもないかのように「憎悪の連鎖」、「暴力の連鎖」などと語ることは、イスラエルのプロパガンダに加担する犯罪行為である。しかも、安倍政権は、イスラエルに対する武器供与を通じ、占領者の暴力に直接加担しようとしているのだ。
