プロメテウスの政治経済コラム

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「防衛省」法案審議入り 日本防衛のための自衛隊がいつの間にか海外展開が本来任務に

2006-11-09 20:17:41 | 政治経済
法案は▽自衛隊の海外派兵を「本来任務」として位置付ける▽防衛庁を「省」とし、権限を拡大する―の二つの柱から成っている。
現行の自衛隊法 第三条「自衛隊の任務」について「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛すること」と規定し、「日本防衛」を「本来任務」としてきた。戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を定めた憲法9条からいって自衛隊が海外に出て行くことは本来ありえない。
ところが国際貢献を口実にPKO(国連平和維持活動)法を手始めに国際貢献がいつの間にか国際=米国となり、日本「周辺事態」での米軍への後方支援を定めた周辺事態法、インド洋での海上自衛隊による米艦船などへの補給活動を行うテロ特措法、航空自衛隊による空輸をはじめ米軍のイラク軍事支配を支えるためのイラク特措法など、なし崩し的に海外派兵法が強行されてきた。しかし、こうした海外派兵法も憲法と国民の批判のもとで、建前上、これまで自衛隊法の「雑則」「附則」の中に「付随的任務」として位置付けられてきた。
今回の法案は、これらの海外派兵法に基づく活動を公然と自衛隊法第三条の本来任務とするものである。憲法改定を待たずに、1954年7月の防衛庁・自衛隊の発足以来の任務を初めて変更する。自衛隊が「日本自衛のための必要最小限度の実力組織だから違憲でない」と説明してきたことと「海外活動を自衛隊の任務の中心にすえる法案」が、憲法上両立する余地はない。

防衛庁を 内閣府の一外局の「庁」から独立した「省」にすることは、これまでの防衛行政の仕組を大きく覆す重大問題である。「防衛大臣」は内閣府の主務大臣である総理大臣を通さず、閣議開催要求、省令制定、予算要求が可能になるなど権限は大幅に拡大する。 
戦前、軍部が幅を利かし、外務省などの他省庁をらち外において領土拡張戦争を進める推進力となり、軍事予算を思いのままにしてきた苦い経験から、歴代首相は防衛「省」化を否定してきたのではなかったか。
時代が変わっても変えてはならないことがある。1960年の安保国会で、安倍首相の祖父であり、太平洋戦争開戦時の東条内閣で商工大臣をつとめた岸首相(当時)は、「戦後の新憲法のもとにおける防衛というものは、旧憲法のときの軍部、陸海軍とかその他のような立場を絶対にとらしてはならない。国防省という考え方が、(権力肥大化の)懸念を伴う」と答弁した(衆院内閣委員会)。また、中曽根首相も「憲法そのほかの関係から見て、総理大臣の直属の庁にしておいたほうが適切」と言っている(86年参院内閣委員会)。

自衛隊の海外派兵は国際貢献ではない。結局それは、戦争を続けないと経済が成り立たないアメリカに日本人の命と税金をささげることである。日本の豊かで名誉ある未来はアメリカの支配を断ち切って平和憲法を世界に広めることである。
私たちはいま「大砲かバターか」の重大な岐路にたっているのだ。

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