プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

被爆61年 核兵器  世界でいま

2006-08-04 18:02:25 | 政治経済
今年も、広島市で「核兵器のない平和で公正な世界を」をメーンテーマに2日から原水爆禁止2006年世界大会が始まりました。核兵器をなくす真剣な討論が続く一方で、ブッシュ米政権は核使用政策を推進し、2005年の核不拡散条約(NPT)や国連首脳会議などでの核兵器をめぐる国際交渉の進展を妨害しました。核戦力の質的強化を図るロシアやフランスなど核保有国の動き、さらに北朝鮮やイランへの核拡散問題などもあり、核兵器をめぐる危険は、今年、改めて深刻化しています。

米ロ英仏中の5カ国に核兵器が広がった「核拡散の第一の波」、イスラエル、インド、パキスタンに及ぶ「核拡散の第二の波」に続き、現在、北朝鮮、イランを対象とする「核拡散の第三の波」が襲っています。
核兵器を保有する国が、NPTで「公認」された米ロ英仏中5カ国を超えて1990年代末までに、イスラエルに次ぎ、インドとパキスタンが、NPT非加盟の核保有国となりました。米国などの核保有国は、これを容認する姿勢を公然ととっています。NPT体制が実質的に瓦解しつつあるもとで、イランや北朝鮮の核開発疑惑が現在の国際政治の焦点となっています。「一部の国の核は脅威ではないが他の諸国の核保有は危険だ」といったアメリカのダブル・スタンダードはNPT体制への世界の信頼を失わせています。

「赤旗」(2006年7月14日)によれば、核保有国の現状は次の通りです。
米国 1945年以来、70,000発以上の核兵器を生産してきました。現在保有する約10,000発の核弾頭のうち、5,735発が実戦配備されていると考えられています。
ロシア 1949年以来、55,000発近くを生産し、現在16,000発を保有。そのうち約5,830発が実戦配備されていると推計されています。
英国 1953年から1200発生産され、1970年代の350発をピークに、現在200発の核弾頭を保有しているとされています。
フランス 1964年以来、1260発以上の核弾頭を生産し、現在は350発の核弾頭を保有しているとみられています。
中国 1964年以来、600発ほどの核弾頭を生産し、現在は200発ほどを保有しているとみられます。
インド 核弾頭60―100発分の核分裂物質を生産し、実際に組み立てられている核弾頭は50から60発とみられています。
パキスタン 核弾頭55―90発分に十分な核分裂物質を有し、実際に核弾頭に組み立てているのは40―50発とみられています。
インド、パキスタンともに核弾頭を増産すると考えられています。
イスラエル 核兵器の保有を公表していませんが、1999年には60―80発の核弾頭を保有していたと推定され、現在では115―190発分の核分裂物質を生産しているとみられています。

世界の有識者十四人からなる「大量破壊兵器委員会」(ブリクス委員長)が6月1日に発表した報告書「恐怖の兵器―核・生物・化学兵器からの世界の解放」は、すべての核保有国に対し、「核兵器に依拠しない安全保障の立案を開始し、核兵器違法化の準備を始めるべきだ」と提言しています。
報告は、「大量破壊兵器による攻撃が不確実で差し迫っていない場合」にも核兵器による先制攻撃をするとの米国の02年以降の新核政策について、「現実の核戦争遂行」の可能性を拡大し、「核兵器使用の敷居を低くする危険」をはらむと批判。今日の米国などの核政策は「米ソ冷戦期よりも核兵器の使用を拡大するものだ」と指摘しています。
このような認識に立って報告は、「今こそ、化学・生物兵器を違法化したように核兵器を違法化すべき時だ」とし、「核兵器違法化は空想的な目標だという考え方を一掃する」ことが重要だ、「核軍縮条約は達成可能だ」と呼びかけています(「赤旗」2006年6月6日)。
核廃絶をめざす流れに逆行し、核軍拡、核拡散の世界的な原動力となっている米国に対するますます強い批判の目が今後間違いなく拡大するものと思われます。



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