プロメテウスの政治経済コラム

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米国BSE安全対策―そのずさんな実態

2006-02-08 18:26:02 | 政治経済
ブッシュ米大統領は6日、2007会計年度(06年10月―07年9月)予算教書を議会に提出しました。同予算は、前年度に続き「対テロ戦争」のための軍事費や国土安全保障費を聖域として大幅に増額、その分他の省庁の裁量的支出は軒並み抑制され、問題のBSE(牛海綿状脳症)調査対象牛の頭数も現在の1割強の年間4万頭レベルに縮減されそうです
米農務省は、03年12月のBSE感染牛の発見を受け、調査対象牛を04年6月より通常の年間約4万頭レベルから年36万頭レベルに引き上げていました。これでも調査頭数は全米の年間処理牛の1%程度に過ぎません。この僅少のサンプリングで、昨夏にテキサス州で高齢牛1頭の感染牛が見つかっています。
日本向けの牛肉輸出については、米農務省の品質システム評価プログラムで定義された手順や条件が満たされているかどうかを文書で確認し認証を行い、認証を受けた施設で処理すれば再開条件を満たす製品とみなすという仕組みになっています。現在、米国四大大手メーカーなど三十八施設が認証を受けています。
ところが今回、米政府認定施設である食肉処理場から、米政府の検査官の証明書もついて出荷された食肉に誰が見てもすぐ分かる危険部位の背骨がついたまま、1月20日、日本に到着したわけです。施設認定で「製品の条件を満たしている」とみなすだけでは、条件順守が絵に描いたもちにすぎないことがはっきりしました
全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)と農民連(農民運動全国連合会)の訪米調査(2005年5月~6月)の結果はBSE安全対策についての米国のずさんな実態を浮き彫りにしています
行政の食肉検査官はいるが、現場で食肉を実際に検査しない。安全基準を企業側が守っているかどうかを調査するだけです。「企業は食肉検査官に監視員をつけている。そのため検査官は工場内を自由に行き来することができない」(検査官報告)という実態です。
BSEの病原体がたまりやすい特定危険部位を取り除く牛は、米国国内向けは30カ月以上だけ。しかも月齢の判断は歯の状態を見ておこなうため正確にできないのが実情。食肉検査官自身『正しく月齢を判定する方法はない』『間違いばかり犯している』と語っています。
BSEの感染源となる牛肉骨粉や牛由来の油脂は豚など家畜のエサ用に使われており、牛用に交ざって利用される恐れが強い。「政府がとった肉骨粉の禁止措置は『袋の表示義務』にすぎません」(BSE問題を追及している米ジャーナリスト)。
BSE検査は全屠畜数の1%程度。ふらふらした牛のため、屠畜を拒否された牛も必ずしも検査されていない。どこでどのような牛が検査されたかは非公開。日本や欧州が採用している検査感度が高い検査法は採用されておりません。
BSEの人間への感染病となっている変異型ヤコブ病はアメリカでは実態が不明。ヤコブ病で死ぬ人は毎年300人ぐらいいるが、BSEから感染した変異型ヤコブ病かどうかは、解剖してみないと分からない。しかし、解剖するにはその費用を親族が負担しないといけない。普通のヤコブ病患者は60歳以上にならないと発症しないのに、14歳の女の子や40歳のヤコブ病患者もいる。「政府はきちんと調べることを妨害している」(米ジャーナリスト)
屠畜する牛の全頭検査、危険部位の除去、肉骨粉の隔離と焼却、牛の生産方法と流通の履歴どれをとってもアメリカのBSE安全対策はでたらめです。中川農水相は、日米で合意した輸入再開条件について「いかにアメリカいいなりといわれても、システムに問題はない。ただし運用について大きな問題が発生したので、米政府の報告を求めている」と答弁。米政府の報告書を待つ姿勢ですが、システムの前提となる現実が変わらない限り、米国産牛肉からBSEリスクを取り除くことは出来ません


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