プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

東電がまき散らした放射能汚染にどう立ち向かうか   せめて子どもたちだけでも・・・

2011-05-23 20:34:26 | 政治経済

東電の陸、空、海への放射能汚染のまき散らしが止まらない。収束に向けた課題や目標を示した「工程表」を改訂したが、目標達成時期は同じだという。これまで原子炉格納容器を原子炉圧力容器ごと水で満たす“水漬け”作業を進めてきたが、ここに来て、壁が壊れて水がジャジャ漏れだと言い出した。東電は結局、作業を見直して、今度はタービン建屋などにたまった大量の汚染水を使う「循環注水冷却」方式だという。事故処理の最大の課題である原子炉の冷却方法の見直しを迫られても、事故をできるだけ小さく見せたいという原発利益共同体の体質は変わらない。炉心溶融で放出されたさまざまな放射性物質の核種ごとの線量がどうなっているのか、時系列による定点観測もないので、われわれの健康が今後どのような影響を受けるかも皆目わからない。多くの人びとが指摘しているように、半径何キロで割り切れるようなものではない。風評被害を煽るつもりはないが、野菜や原乳、魚など遠隔地でも影響はないと言えない。東電がまき散らした放射能汚染の責任を徹底検証しなければならないが、いくら怒鳴り散らしても放射能汚染が減るわけではない。今、私たちが取り組むべきことは、将来世代に二度とこんな目に遭わせないためにどうするか、いまこの瞬間、これから長く生きる子どもたちへの被害をどう極小化するかと言うことだろう。

 

最近、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」事務局長・志葉玲さんから話を聞く機会があった。欧州放射線リスク委員会のバスビー教授によるファルージャ現地での調査の結果の話である(ファルージャでは、20044月、11月、2度にわたり米軍による大量破壊、殺戮があった)

ファルージャの高レベルと低レベルの放射性地域の751家族4500人を調査。

1)小児白血病は2004年以前と比較して40
 ヨルダンと比較しで38
 乳癌は2004年比で10
 リンパ性のガンは2004年比で10

2)乳児死亡率の大幅な上昇
 ファルージャの乳児死亡率は1000人中80
 クウェートでは1000人中9
 エジプトでは1000人中19

3)細胞レベルの構造変化
 男児のX染色体の欠如
 ファルージャでは2003年には女児1000人に対し男児1050人の比率であった。
 2005年には女児1000人に対し男児350人の比率。

 

今度の福島原発の事故では、政府・自治体の「住民無視」の行政が目立つ。よく勉強もせずに「1年100ミリまで大丈夫」と言ってみたり、チェルノブイリの経験を勉強せずに「ホットスポットは存在しない」と言ってみたり、通常時の原発作業員の年間被曝量20ミリ・シーベルトを子供の年間の被曝限度に設定するなど、もう無茶苦茶である。悲しいことだが、このままではある程度の放射線障害が出ることは確実である。先が短い年寄りは我慢するとしても、問題は子どもたちや妊婦である

子どもは放射線に対する感受性が高いうえ(DNAに放射線を照射するとDNAが損傷、細胞分裂が活発な子どもはDNAの修復が追いつかない)、残りの人生も長く、発がんリスクが高い。子どもの被曝線量を可能な限り低くすることは、現在の大人の最低限の責任である。しかし、こどもだけで疎開できる条件に恵まれる人びとは、きわめて限られるだろう。放射能被曝と共存するほかない。同じ室内でも線量の低い場所と高い所があるという。きめ細かく線量を測定し、線量の高い場所を避けるために、個人に簡易線量計を配ることも必要だろう。校庭の表土の除去も必要だろう。問題は、除去した土砂の捨て場所だ。校内に置いておいたのでは、子どもたちがまた被曝するかもしれない。

 

被曝を避けるためには、逃げるほかない(被曝に安全基準はない。どんなに少量でもすべて確率的影響を受ける)。しかし、逃げては、生活が成り立たない。どうするか。放射能被曝と共存するほかない。これが、われわれがいま直面している冷厳な事実である。政府や御用学者の言うことはインチキな慰めにすぎない将来こんな目に合わないためにはどうするか。原発を止めるしかない。ひとからの受け売りだが、昔、国鉄職員が新幹線では踏切事故を絶対に起こしませんと言った。なぜなら、新幹線には踏切が一つも存在しないからである。


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