プロメテウスの政治経済コラム

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NPT再検討会議  核兵器は1発でも残っていてはいけない

2010-04-30 19:19:39 | 政治経済
核不拡散条約(NPT)再検討会議がニューヨークの国連本部で5月3日から始まる。会期は28日までの予定である。世界的に核兵器廃絶への機運が高まるなか、核兵器の完全廃絶の方向に前進する確実な一歩を踏み出すことができるか注目される。再検討会議の開会前日の2日には、ニューヨーク市の中心部(タイムズスクエア周辺)で、「核兵器のない世界のための国際行動デー」の諸行動が繰り広げられる。日本からも1500人以上がタイムズスクエア周辺での大集会や国連に向けたデモ行進に参加し、「核兵器のない世界を」の共同署名を国連本部に提出する。

 国連が主催して5年に1回開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議が間近に迫った。NPTには現在190カ国が加盟【国連加盟国192-3(インド、パキスタン、イスラエル)+バチカン】。再検討会議では、条約の目的である(1)核兵器の不拡散(2)核保有国の核軍縮(3)原子力の平和利用―の実施状況について話し合う。
オバマ大統領はプラハ演説で「核兵器のない世界」を目指すとのべ、核兵器を実際に使用したアメリカの「道義的責任」を表明した。しかし、同時に「核兵器のない世界」は「私が生きているうちには達成されないだろう」とのべ、その後も核兵器が存在する限り、核兵器を含む「抑止力」を保持する立場を明らかにしている。オバマ政権の軍事政策は「『核なき世界』という言葉とは裏腹に、ブッシュ政権よりもむしろ核抑止力を肯定する思想が見え隠れする」(広島市立大広島平和研究所・浅井基文所長)。

 「核抑止力」論とは端的に言えば、「核威嚇力」ということだ。核兵器を実際に使うかどうかを別にして、核兵器使用の脅しをかけるということは、核兵器の保有を続けるということであり、核戦争の危険を根本から取り除くことはできない。「核威嚇力」で脅されることに対抗して、新たに核兵器を獲得しようとする国が現れ、あるいはテロリストが不法に核兵器の材料を入手するなどの危険を完全に防ぐことはできない。
一発の原爆が、どんな恐ろしい地獄の災厄をもたらすか、生き残った被爆者がどんなに放射能による健康被害と死の恐怖に苛まれるか広島・長崎の被爆体験者が語るとおりである。原爆は、二度と使われてはならないのである。地球上に核兵器がある限り、保有国も含めて全人類が、取り返しのつかない危険に晒されるのだ。核兵器は1発でも残っていてはいけない。

 「核抑止力」論を突き破るものは、「人類は核兵器と共存できない」という被爆体験者の悲痛な叫びであり、世界諸国民の世論と運動の力であるオバマ演説が象徴する「変化Change」そのものも、世界諸国民の世論と運動の力がもたらしたのだとすれば、その限界を乗り越え、「変化」を核兵器廃絶の実現へと前進させる力もまた、世界諸国民の世論と運動以外にはないということであろう。
核廃絶を願う世界の世論を背景に、核軍縮の動きは徐々に進行している。
昨年9月の国連安保理を舞台とした首脳会議では、「核兵器のない世界のための諸条件の創出を目指す」との決議を採択。「核軍備削減と核軍縮に関する実効的措置と、全般的完全軍縮条約についての交渉を誠実に追求する」と決定した。今年4月には、米ロが新核軍縮条約に調印し、今後7年で戦略核をそれぞれ1550発まで削減することとした。このほか包括的核実験禁止条約(CTBT)発効、兵器用核分裂物質製造禁止(カットオフ)条約の交渉開始などが課題となっている。

 2000年のNPT再検討会議は「核兵器の全面廃絶を達成するとの核兵器保有国の明確な約束」をうたった最終文書を採択した。その約束に向かっていかに接近するかが課題となるはずだった05年の再検討会議では、ブッシュ米前政権が同文書の受け入れを拒否し、「明確な約束」に背を向けたため、なんらの合意もないまま終了してしまった。
今回の再検討会議に向けて昨年5月に開かれた準備会合では、00年の再検討会議最終文書を踏まえ、NPTの運用の見直しを議題にすることが確認されている。核兵器国に「明確な約束」を再確認させるための土俵は、すでに設定されているのだ。
問題は、さらに進んで、「法的な枠組み」(=核兵器全面禁止・廃絶条約)にむけての具体的な一歩を踏み出させるかどうかである。

そのためには、いまこそ「核抑止力」―核兵器による「拡大抑止」としての「核の傘」も含めて―に平和と安全を依存するという人類に敵対する誤謬の息の根を止めなければならない。それに際しては、米国の忠実な同盟国として「核の傘」(核兵器による「拡大抑止」)に依存しつづけてきたばかりでなく、オバマ大統領のプラハ演説後も、北朝鮮や中国の「核の脅威」を口実に「核の傘」の提供を執拗に求めつづける日本の支配層の反人類的誤謬の息の根も止めなければならない。

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