プロメテウスの政治経済コラム

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河村名古屋市長、辞職願を提出  すれっからしのチンピラ市長、知事が人気の世情の不気味さ

2010-12-20 21:40:54 | 政治経済

 

市議会解散の是非を問う住民投票の成立をめぐって擦った揉んだしていた名古屋市の河村たかし市長が20日、辞職願を提出した。地方自治法などにより、議長は5日以内に辞職願を市選挙管理委員会に通知、50日以内に出直し市長選が投開票される。来年2月6日の愛知県知事選との同日選が有力で、市議会解散の是非を問う住民投票も重なって「トリプル投票」となる見通し、という(共同通信20101220日)。

強者が弱者から奪い取る「強権政治」に反対する者を切り捨て、首長の専権体制を実現する、すれっからしのチンピラ市長、知事が、いま、なぜか人気である。私たちは、あのアドルフ・ヒトラーも合法的な選挙により勢力を拡大したことを忘れてはならない。

 

今年は、名古屋の町づくりが始まって400年という。1610年、天下をとった徳川家康が、名古屋に城を築き、清須から町ぐるみ移転する決定を実行に移した年というわけだ。河村たかし市長は、信長や秀吉、家康が出会った尾張名古屋を「武将の聖地」とよび、彼ら、とりわけ信長をたたえる。武士の世をつくる「庶民改革」を夢見た、と。強権をふるった信長や栄華をきわめた秀吉のどこが庶民なのか、いかにもすれっからしのチンピラ市長らしい言い分だが、河村市長は、自分を信長らの後継者のつもりのようだ。市民の受けを狙って、河村市政を、「今名古屋でやっとる…庶民革命」と臆面もなくいう。そして、河村市長の「庶民革命」は、批判する勢力を許さない。たとえば、「市民税10%減税」の公約。市長自身が「金持ち(は減税)ゼロ」と言っていたのに、一律10%とすれば、大企業・金持ちに手厚く、中小企業や庶民にはほとんど恩恵のない「逆立ち減税」になるのは当たり前である。議会で反対されたら、“公約の実行のじゃま”というわけで、市民に議会の解散運動をよびかける。市長や議員をやめさせるリコールは、住民自身の権利のはずなのに、市長が住民にけしかけ、煽る異様さ。首長に当選するのは一人だけなので、さまざまな思いや意見をもった住民の民意を反映しない(とりわけ小泉元首相に代表されるようなシングルイシューを掲げ二者択一を迫る人気投票の手法は民主主義ではなくポピュリズムによるファシズムそのものだ)。多様な住民の意思を代表する必要数の議員から構成される議会が首長の独断を監視し、コントロールすることがどうしても必要である。だから、市民は市長と議員を別々に選ぶのだ。

 

河村市長は、議会のチェック機能を無力化させて、どのような市政をすすめようとしているのか

河村市長は、「市民税10%減税」を金科玉条のように掲げるが、一部の大企業は1社で年2億円減税なのに、中小企業の多くは年5000円程度。個人では、年2000万円を超す減税を受ける高額所得者がいる一方、市民税均等割だけの人の減税額は年300円。もっとも暮らしのきびしい非課税世帯は減税ゼロである。市長は「減税は生活支援のためではない」と言い切り、地元経済や市民生活の苦境をよそに、この「減税」を売り物に、大企業・大金持ちの名古屋への呼び込みを市役所あげてやるというのだ。

いま政治が閉塞状況に陥っている最大の理由は財政問題―税収不足である。愛知・名古屋地区がリーマンショック前まで比較的元気だったのは、トヨタを筆頭とする製造業が元気であったからである。いま、大企業・金持ちに増税しなければならない時に減税したらどうなるか。市立病院・保育園の統廃合・民営化や自動車図書館の廃止、市独自の子育て支援手当の廃止、保育料の大幅な値上げなど、福祉・医療サービスの削減と負担増を市民に押しつけるほかない。当然に市民からの反撃が予想される。市民の多様な意見や要望、市政へのさまざまな立場からの批判の声が届かないにように、批判勢力をしめだして、市長いいなりの「翼賛議会」をつくるのはそのためである

 

権力を手にするため「庶民」を利用し、卓越したポピュリズムの手法で市民の同意を調達するのは、独裁者の常である。河村市長を応援する、大阪の橋下徹知事も同じである。
社会を覆っている閉塞状況を切り拓く変革の展望が見えないとき、人々は過激な言説に惑わされがちである。住民を動員して議会の抵抗を排除する“民主主義的クーデター”に心をよせる背景には、多くの自治体の議会が共産党を除いてオール与党化し、本来の議会の役割を果たさず、報酬泥棒となっている現実がある。河村人気、橋下人気は、潜在的な政治不信に火をつけて、市民動員に成功したことの反映である。しかし、彼らには少数意見・弱者の立場をくみいれる余地はない。すれっからしのチンピラ市長や知事がもてはやされる社会は危険であり、病んでいる


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