プロメテウスの政治経済コラム

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米国防計画見直しと日米同盟

2006-02-05 18:57:24 | 政治経済
米国防総省は三日、2006年版「四年ごとの国防計画見直し」(QDR)報告を公表しました。報告は、過激派などとの「長期戦争」を掲げ、2001年9・11対米同時テロ以降の「対テロ世界戦争」を正当化し、半世紀続いた対ソ「冷戦」に匹敵する世界規模の戦争を今後何十年も続ける「永続戦争宣言」を行っています。そして、こうした「長期戦争」のためには同盟国などとのいっそうの協力強化が必要だとして、NATO(北大西洋条約機構)やオーストラリア、韓国とともに、日本との同盟関係を特別に挙げて、「軍事的な安全保障上の負担分担を促進する」よう求めています。
QDRは、「四つの優先課題」の一つとして、「戦略的岐路に立つ諸国の(進路の)選択の方向づけ」を掲げ、他国の進路の選択に、軍事力を使ってでも介入しようという意図を隠していません。その対象として、インド、ロシア、中国のほか、▽イラク、レバノン、リビア、イランなどの中東諸国▽中央アジア諸国▽左翼政権が樹立されたラテンアメリカのベネズエラなど―を挙げています。 このうちロシアは「米国に対する軍事的脅威になりそうもない」とし、インドについては「主要戦略パートナーになりつつある」としています。他方で中国に関しては、「米国と軍事的に競争する最大の潜在力」をもっていると規定。中国が「引き続き経済パートナーにとどまり、責任ある利害関係者となる」ことが米国の目標だと表明しています
QDRは「この報告で提示されているビジョンの達成は、米国の永続的な同盟関係を維持し、改造することによってのみ可能である」と強調。イラクやアフガニスタンで米国と共同して軍事作戦を展開している英国とオーストラリアを高く評価。「こうした密接な軍事的関係は、米国が他の同盟国や友好国と促進しようとしている協力の広がりと深さのモデルだ」と述べ、日本との同盟関係も、「米英同盟」や「米豪同盟」のように、米国の先制攻撃の戦争で“ともにたたかい、ともに血を流す同盟”へと強化するとしています
そのために、同盟軍との「合同作戦」や「防衛システムのいっそうの統合」、「(米軍による)受け入れ国の基地の使用」などを重視。日本の自衛隊をはじめとする同盟軍との軍事一体化・融合の方向を強く打ち出しています。また、米核戦略の一環に位置付けている「ミサイル防衛」では、「国際的な協力拡大」の「成功」例として、米国と日本が新しい迎撃ミサイル(MD)の共同開発で合意したことを評価。日本にいっそうの協力を促しています
QDRは現在、日米両政府が進めている在日米軍再編の狙いを端的にしめしています。
日米両政府が昨年十月に合意した在日米軍再編計画、とりわけ(1)米陸軍キャンプ座間(神奈川県)への新しい陸軍司令部(UEX)の創設(2)沖縄の米海兵隊部隊の再編(3)米空母打撃群の日本への長期的な展開などなどすべて国防計画の方針にそうものです。
米陸軍は現在、地球規模の先制攻撃作戦を実行するための組織「変革」を進めており、キャンプ座間への新司令部移設もその一環です。
沖縄の海兵隊の主力である31MEU(第31海兵遠征隊)は、QDRが打ち出している地球規模の迅速な展開能力、特殊作戦能力を兼ね備えており、在日米軍再編の日米合意で、いっそうの強化が狙われています
QDRはまた、11隻の空母打撃群のうち少なくとも6隻(現在は5隻)を太平洋地域に配備するとしています。在日米軍再編の日米合意では、空母の「長期にわたる前方展開能力を維持する」ため、米海軍厚木基地(神奈川県)に駐留する空母艦載機部隊の米海兵隊岩国基地(山口県)への移転を計画。2008年には、米海軍横須賀基地(神奈川県)に、通常型空母に代えて原子力空母の配備を狙っています。 太平洋地域の空母6隻態勢に伴い、米海軍佐世保基地(長崎県)が準母港としていっそう重視される可能性もあります。
1月9日から27日まで、米国西海岸(カリフォルニア州サンディエゴ)で陸上自衛隊と米海兵隊の共同上陸訓練が行われました。「日本が小島を奪われたら、取り戻すことができることを中国に警告するためのもの」との指摘(サンディエゴ・ユニオン・トリビューン紙)のとおり、中国への軍事的牽制の意図が含まれていることは、明らかでした。
日米軍事一体化による軍事同盟の侵略的強化は、アジアと世界の平和の流れに明らかに背くものです。「『日米同盟の変革と再編』」の名でおこなわれている、地球的規模での海外派兵態勢づくりの際限ないエスカレーション(拡大)、在日米軍基地強化・永久化のくわだてを許さないためのたたかいは、直面する熱い課題」(日本共産党第二十四回大会決議)です。


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