プロメテウスの政治経済コラム

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バブル崩壊後の家計部門の調整について

2006-02-06 18:49:55 | 政治経済
三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の2006.2.3リポート『日本経済ウォッチ』は、「今月のトピックス」として「バブル崩壊後の家計部門の調整について」報告しています。
(1)バブル崩壊による資産価格下落の損失
バブル崩壊後の1991年から2003年の間に日本国内の土地や株式などの資産は1389兆円の損失が発生しています。これを部門別にみると、家計部門が623兆円と最も巨額の損失を被っています。企業部門(金融を除く)466兆円、金融機関89兆円、一般政府が189兆円となっています。家計部門の損失は企業部門を上回りました。
(2)バブル崩壊が家計部門に及ぼした影響
①企業のリストラによって家計が間接的に受ける影響
まず、企業部門の人件費抑制を通じて受ける影響として家計部門が受け取る雇用者報酬はバブル崩壊後伸び悩み、97年の280兆円をピークに04年には255兆円まで減少しました。年25兆円の減少です。また、自営業者の事業環境も悪化し、自営業者の所得は92年の43兆円から04年には26兆円へと減少しています。
次にバブル崩壊後の超低金利は家計の利子収入を減少させます。利子所得や配当所得などを中心とする財産所得は、91年の59兆円に比べ、03年には21兆円にまで大幅に減少し、04年も(勝ち組の配当所得を入れても)22兆円と低迷しています
これらのことは、企業サイドから見ればいわゆる損益分岐点の劇的な低下となって現れています。93年92%近かった損益分岐点が04年には78%近くに低下(製造業)し、企業の高収益の素となりました。
雇用者報酬、自営業収入、利子収入の減少は確実に家計の可処分所得の減少につながります。
②資産価格の下落によって家計が直接的に受ける影響
資産価格の下落は直ちに家計のキャッシュフローに影響しないが、高値での住宅購入による返済負担が、可処分所得低迷の中で重くのしかかってきます。住宅ローンのある世帯の消費水準は、住宅ローンのない世帯の消費に比べて低く、消費の減少率も大きい。これは貯蓄残高の推移にも同様の傾向として現れています。
③住宅資産価格の下落により住宅の買い替え・建て替えを抑制
家計部門で、バブル時に保有していた資産に基づいて住宅ローンを組んでいる場合、バブル崩壊により負の遺産にかわります。つまり、住宅ローン残高が住宅時価を上回っているため、住宅を売却して売却代金の全額をローン返済に充てても、完済できないということです。これでは、住宅の買い替え・建て替えは進みません。

結論として、可処分所得が減少するなかでの過剰負債を抱えたままの家計部門は、貯蓄の積み増しも出来ず、個人消費や住宅投資の低迷を通じて、長期にわたり経済全体にマイナスの影響を与え続ける可能性があります



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