プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

6カ国協議進展  拉致一本やりではなく中長期を見据えた外交戦略を

2007-07-16 18:49:02 | 政治経済
6月21日、デルタ銀行問題の解決が決まってからまだ数時間しか経っていないうちに、アメリカのヒル国務次官補が平壌を訪問した。米高官の平壌訪問は5年ぶりで、これまで北朝鮮と直接交渉しない強硬姿勢を採っていたブッシュ政権は、直接交渉する穏健な姿勢に大転換したのだと報じられている。平壌訪問後、記者会見したヒル国務次官補は、7月中に6者協議の外相会談を開き(実際は日程的に難しいようだが)、今後の最大の難関である北のウラン濃縮施設の廃棄が実現できれば、今年中に、朝鮮半島の南北和平のプロセス(南北と米中による朝鮮戦争の終戦に向けた会合)と、6者協議を東アジアの恒久的な集団地域安保体制(地域安全保障フォーラム)に格上げしていく作業を進められ、来年にはすべての交渉を成功裏に完成させられると表明した(田中宇 同上)。
ブッシュ政権のこの方向は、6カ国協議の枠組みのうえに、北東アジアの集団地域安保体制を平和的・外交的に築いていこうとするものであり、国際情勢の中長期的な発展法則にかなっている。日本が「拉致問題が解決しない限り、北朝鮮は信用できないし、支援したくない」という姿勢をとり続けていると、6カ国協議は日本抜きに進展し、6者協議の成功後に作られる東アジアの集団安保体制の枠組みづくりでも、日本が遅れをとることになるだろう。アメリカにとっては今や、日本より中国の方が重要であるということを忘れてはならない。

北の核問題が解決し、朝鮮戦争の終戦が実現し、6者協議が東アジアの多国間安保体制に格上げされれば、南北朝鮮の融和がいっそう進み、南北の自主的平和統一も夢ではない。韓国ではすでに、「対米従属・北朝鮮敵視」の時代が終焉して「南北和解・非米化」の時代が始まっている。昨年9月、日本共産党の志位和夫委員長がはじめて韓国を訪問したが、韓国政界や各界の温かい歓迎ぶりは、反共とはまったく無縁であった。「私たちとの間には何の壁もない、心が通じ合う」と志位委員長は、記者会見で語っている(「しんぶん赤旗」2006年9月10日)。
平和のアジア共同体をつくるうえで、日本外交がいまのままでいいわけがない。ソウルでのアジア政党国際会議2日目の2006年6月9日、志位委員長は、5点にわたって日本外交の転換を提起した。第一は、日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配を正当化する靖国派の逆流を克服することである。平和のアジア共同体を築くためには、過去の歴史の基本点への共通の認識が必要となる。第二は、アメリカ一辺倒でなく、日本の政府として、アジア諸国との平和の関係を探求する大戦略をもつことであるアメリカと対等・平等の友好関係を築きながら、自主独立の国づくりをはかることは、多くのアジア諸国が共通して追求している方向である。第三は、軍事偏重でなく、外交による問題解決に徹する姿勢を確立すること。第四は、いかなる国でも覇権を認めず、国連憲章にもとづく平和秩序を守り、被爆国の政府として地球規模での核兵器廃絶を緊急課題として追求すること。第五は、社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の確立に力をつくすことである(「しんぶん赤旗」同上)。

拉致一本やりの安倍外交は、すでに北朝鮮から見下されてしまっている。これでは肝心の拉致問題の解決も覚束ない。国際情勢の中長期的な発展法則を見据えた外交戦略を持つことが喫緊の課題である。
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2 コメント

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「北東」はあくまでも英語からの訳ですよ (しんきち)
2007-07-16 20:55:37
この記事の内容自体には賛同しますが、「北東アジア」という言葉遣いには違和感を覚えますね。アメリカ一辺倒からアジア諸国の対等な共生を言うのなら「北東」という英米から見た用語ではなく「東北アジア」を使うべきなのでは?
しんきちさんへ (e-hori)
2007-07-16 23:02:40
コメントありがとうございます。
雑誌論文などで北東アジアをよく見るものですから、無批判に使っていました。

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