プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

衆院解散  自公政治の終焉  国民の思いは?

2009-07-21 21:05:17 | 政治経済
21日午後、衆院が解散された。政府はただちに臨時閣議を開き、総選挙の日程を「8月18日公示、同30日投開票」と決めた。国民が待ちに待った総選挙がやってくる。自公政権を終わらせる決定的な“審判”をくだし、それに代わる新しい日本の進路を“選択”したい、これが国民の思いであろう。自公政権は、政権党として、その党なりに国民に希望と展望を語ることもできなくなっている。もはや退場を願うしかないのだ。

自民党は衆院本会議に先立ち、麻生首相が出席して両院議員懇談会を開いた。首相は冒頭、「私の発言やぶれたと言われる言葉が、国民に不安、不信を与え、自民党の支持率低下につながった」と反省とおわびを表明。首相を強く批判する声はなく、首相は最後に「我々は一致結束して戦う以外にない」と訴えた。麻生降ろしの急先鋒だった中川秀直元幹事長も「今日の総理のあいさつはよかった。潔く受け入れる気持ちになった」とあいさつ、首相と握手を交わした、という(「朝日」2009年7月21日13時32分)。この党には、もはや何のエネルギーも残されていない。

麻生内閣の支持率がこれほど下がった原因には、首相の個人的な資質や政権運営だけではなく、自民党政治がこれまで続けてきた多国籍大企業本位の新自由主義改革路線と国民生活の矛盾がいよいよ深刻化したことが根底にある。たとえば、「使い捨て自由」の不安定雇用の拡大、社会保障費を毎年2200億円カットして医療、介護、福祉をズタズタにする一方で、庶民には負担増、大資産家、大企業には補助金や負担削減をやる。また、自衛隊の海外派兵と海外での武力行使を可能にするというような動きを執拗に追求する。これらは、日本国民が、曲がりなりにも築いてきたささやかな生活の安定と平和への願いに対する真っ向からの挑戦である。麻生・自公与党政権の支持率低下は、首相の個人的資質の問題ではない。
問題は、自公政権に決定的な審判をくだしたあと、どういう日本をつくるのかという、日本の進路の“選択”である。私は、新福祉国家の再建が旗印だと思っている。

日本は、同じ資本主義国のなかでも、国民の暮らしを守るまともなルールが壊され、大企業の横暴勝手な行動があまりに野放しにされている、「ルールなき資本主義」の国であるといわれる。唯一、労働者側に有利であった終身雇用、年功処遇の慣行が小泉・竹中改革によって最終的に徹底的に破壊された。国民生活を経済危機から守る緊急の手だてをとりながら、同時に、社会の仕組みとして国民生活を守る防波堤を築く――雇用、社会保障、中小企業、農林水産業、税制など、経済社会のあらゆる分野で、国民の暮らしと権利を守るルールをつくること――資本主義の枠内での改革こそが、自公政権を退場に追い込んだ後にもとめられる新しい政治の第一の課題である。

第二の課題は、新しい世界秩序を目指す反グローバリズム連合である。現代の新自由主義とは、先進資本主義諸国の多国籍大企業がそれぞれの国内条件のもとで、利潤率の低下に危機感をもち、政治的代理人を使って階級権力の回復を目指して巻き返しに出たというのが、ことの本質である。これから福祉国家を再建しようとすれば、一国内だけでルールを確立しようとしても無理がある。世界市場でわが物顔に振舞う多国籍大企業や投資ファンドへの規制を先進資本主義諸国の政府が相互に共同し、発展途上諸国の政府とも連携して進めなければ、下へ下への競争が激化するだけである。世界の前向きの変化に働きかけ、それを促すためには、「自主・自立の平和外交」がとりわけ重要となる。

自公政治に反対するだけでは、社会の前向きな改革が行われていくわけではない。今日の金融危機と世界的な不況を前に、カジノ資本主義を推進した「新自由主義」勢力をどれだけ厳しく告発しても、それで不況からの脱出が可能になるというわけではない。実際に脱出の方向へと進むためには、安定した内需の育成が不可欠であり、そのために政治は労働者派遣法の改善などによる雇用の安定と、後期高齢者医療制度の撤廃はじめ社会保障の拡充を推進し、GDPの55%を占める個人消費を激励していくことが必要になる。また中小企業・業者向けの融資を縮小し、貸しはがしを行う大銀行に厳しい行政指導を行い、政府自身が農業再生に力を入れていかねばならない。さらには輸出のアメリカ依存を低め、これを多角化するために特にアジアとの交流を促進する政治姿勢をとらねばならない。カジノ資本主義の規制のためには、先進資本主義国と新興国・途上国の共同が不可欠である。

このようなことを実行できる政党は、なに党なのか。自公政治に引導を渡したあとの国民の“選択”が問われているのだ。



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