プロメテウスの政治経済コラム

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日本軍「慰安婦」問題  このまま頬被りは許されない

2012-01-06 21:58:29 | 政治経済

昨年1218日、京都で行われた日韓首脳会談で韓国の李明博大統領が旧日本軍の「慰安婦」問題(日本軍「性奴隷」問題)をとりあげ、野田佳彦首相に対し、きびしい調子で日本政府の公的な解決を求めた。この問題は今年の東アジア外交を考えたとき、日韓関係の最大焦点になりそうだ日本政府はこれまで、日本軍「性奴隷」問題をはじめ、あらゆる戦争被害者に対する謝罪・補償問題が提起されるたびに「条約の抗弁」(すべての補償問題は、サンフランシスコ平和条約および二国間条約によって解決済み)を主張してきた。しかし、国際社会では、日本軍性奴隷のような国際人道法への重大違反行為はユスコーゲンス(jus cogens=「いかなる逸脱も許されない規範」「国際的な人権思想」=強行規範)違反であり、条約による補償請求権の放棄は無効であるとした厳しい批判が行われて来た。日本政府は国際信用上も、もうこれ以上、この問題に頬被りすることは許されない。

 

日本軍「慰安婦」問題を考える場合に、最初に、はっきりさせておかなければならないことがある。それは、不埒な兵士たちによるレイプ事件でもなければ、現代でも、基地周辺には必ずある男と女の問題でもないということだ。国家組織である軍中央が「慰安所」制度をつくり、女性たちを兵士にあてがったことが問題とされているのだ。「慰安所」に女性たちを事実上監禁し、多いときは1日に何十回も兵士の相手を強要することは、女性を人として扱わない、女性の尊厳を根底から奪う行為である。女性の人権を侵害する凄惨な犯罪行為が軍組織主導のもとで行われたこと、これが問題なのだ

 

日本政府が責任を追及されたときに常に持ち出すのが、「条約の抗弁」である。しかし、国連「マクドゥーガル報告書」は次のようにいう。

1932年から第二次世界大戦の終わりまでの間、日本国政府及び日本帝国軍隊は200,000人を超える女性をアジア全体に存在した強姦所において強制的に性的奴隷とした。これら強姦所は、問題があるほど娩曲的な言い方で「慰安所」という言葉でしばしば言及されている。これら「慰安婦」の大多数は朝鮮(半島)出身者だったが、中国、インドネシア、比、その他日本の支配下にあったアジア諸国からの者も多かった。過去10年に亘り、この残虐行為の生存者の多くの女性が名乗りを上げ、これら罪に対する賠償を求めた。><1965年の日韓請求権・経済協力協定は、当事国間の『財産』請求問題の解決を目指した経済条約であり、人権問題に取り組んだものでないことは明白である。…韓国側代表が日本に示した請求の概要を見れば明らかなとおり、この交渉には、戦争犯罪や、人道に対する罪、奴隷条約の違反、女性売買禁止条約の違反、さらに国際法の慣習的規範の違反に起因する個人の権利侵害に関する部分は全くない…したがって、日韓協定第二条で使用される『請求権』という用語は、このような事実が背景にあるという文脈で解釈しなくてはならない。日韓協定に基づいて日本が提供した資金は、明らかに経済復興を目的としたものであり、日本による残虐行為の個々の被害者に対する損害賠償のためのものではない。1965年の協定はすべてを包含するような文言を使用しているが、このように、二国間の経済請求権と財産請求権のみを消滅させたものであり、個人の請求権は消滅していない。したがって日本は、自己の行為に現在でも責任を負わねばならない。」

 

「条約の抗弁」を主張し続けることは、今や、国際法的にも無理がある。「条約の抗弁」を前提とした民間基金政策(「女性のためのアジア平和国民基金」など)で解決済みとはとても言えない。韓国の憲法裁判所は昨年8月30曰、「慰安婦」の損害賠償請求をめぐる日韓両政府の解釈上の違い(紛争)について、韓国政府が請求権協定に定める手続きをとってこなかったのは違憲であるとの決定を下した。65年の請求権協定の3条1項は、日韓両国に解釈上の違いがある場合、「外交的に解決する」ことを明記している。日本政府の側として、このまま頬被りをすることは許されない。まず日本政府は、韓国から求められている請求権協定3条(解釈の違いがある場合の外交的解決)に基づく2国間交渉に速やかに応じ、さらにこの問題の最終的な解決である被書者への謝罪と補償を行う姿勢に立つことが求められている


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