プロメテウスの政治経済コラム

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米国の「最大の脅威は債務」!?   「仕方ないという空気」をどう突き崩す?

2011-02-03 18:26:41 | 政治経済

いかなる敵も寄せ付けない世界最強の軍事大国アメリカで、ここに来て軍事費と軍の役割、特に海外駐留軍の意義について、初めて本格的な議論が始まりそうだいう(但し日本の基地だけは特別扱い)。琉球新報・与那嶺路代さんのワシントン特派員レポートである(『世界』20112 No.813)。軍産複合体の支配が政治・経済・社会・思想の隅々まで行き渡っているアメリカが変わることなど、私の目の黒い間にはないだろうと思っていたが、それでも歴史は少しずつ確実に前進しているようだ。与那嶺さんの言うとおり、従来論にあぐらをかいて思考停止に陥るなら、時代の変化を見失うことになるのだろう。

 

琉球新報ワシントン特派員の与那嶺記者は、昨年4月からワシントンに常駐。普天間飛行場の返還・移設問題に関連した米有力議員や専門家、学者などを広く取材。在沖海兵隊不要論など、全国メディアと一線を画した視点で、沖縄の基地問題をめぐる米国内の裾野の広い論議を報じている。11月には、第16回平和・協同ジャーナリスト基金賞を授与された。
米国の財政赤字は2年連続で1兆ドルを突破し、史上最悪のレベルで推移している。与那嶺さんによれば、予算の「聖域」とされ、第二次世界大戦以降も右肩あがりだった軍事費に、さすがの意識の遅れたアメリカ国民も少しずつ厳しい目を向け始めたという。厳しい視線を浴びる国防総省の当事者の一人マレン統合参謀本部議長は、2010年に入り、「米国の安全保障の最大の脅威は、債務だ」と、膨れあがる財政赤字に懸念を表明した。最大の脅威はイランでも北朝鮮でもなく「国の抱える借金」だと、米軍の制服組のトップが言わざるを得なくなっているのだ

 

米連銀はドルを大量発行して米国債を買い支える量的緩和策(QE2)を続けているが、QE2が予定の半分しか進んでいないのに、連銀は中国を抜いて、世界最大の米国債保有勢力となった。米国債の保有総額は、1位が連銀で11080億ドル、2位が中国で8960億ドル、3位が日本で8770億ドルとなっている。米国政府が、国債を発行しすぎて、自国の当局しか買い手がいない状態になりつつあるということだ。非常に恐ろしい事態である。ちなみに日銀の国債保有額は、0912月末現在502兆円(比率74%)である
米政府の財政赤字は今年3月に再び法定上限(現在143000億ドル)に達する見込みで、その際、共和党内で強くなっている財政均衡論者の反対によって上限の再引き上げが行われない可能性が出てきている。米議会は、赤字上限の引き上げに失敗して新規の国債が発行できなくなっても、米国債の利払いが滞って債務不履行にならないよう、米国債の利払いを、米国内の社会保障費などより優先して支払う法律を定めようとしている。米国債の最大保有国は中国なので、米国民の生活を守る前に中国に利払いする気かと、米国内の世論の反発を受けそうだが、米議会がこの法律を通さないまま法定上限の引き上げに失敗すると、米国債はデフォルトするかもしれない(田中宇の国際ニュース解説 会員版拙速分析 201122日)。

 

米政府の国勢調査局の調査で、米国の高齢者の6人に一人が、政府が決めた貧困水準以下の生活をしていることがわかった。特に一人暮らしの女性の場合、ヒスパニック系の43%、アフリカ系(黒人)の34%が貧困水準以下の生活をしている。米国では、今年初めて団塊の世代(baby boomer)が65歳を超えた。今後さらに高齢者の割合が増え、貧困にあえぐ高齢者の数が増えると予測されている(田中宇 同上)。
これが、日本の支配層が尊敬してやまない、「財産権の自由」と「個人の自由と自己責任」を最大限に保障するアメリカの今の姿である

 

エジプトの事態を受けて、天木直人さんが日本の支配層に警告している。<もはや米国に支持されていれば大丈夫だという時代は、世界では終わりつつあるのだ。・・・ 鳩山首相の末路を同僚として見てきた菅直人という政治家が、同僚を助けるどころか、それを反面教師として首相になり、首相になったとたんここまで対米従属に豹変した。それが、米国に逆らえば首相になれない、米国の支持さえ得られれば政権は安泰だ、そう思った末の行動であったとすればあまりにも浅薄だ。気がついたら日本だけが唯一、最強の対米従属国となっているかもしれない。そしてそんな日本が不幸な国であることは言うまでもない。>(天木直人ブログ「そして誰もいなくなった」20110129)。

 

いまや、支配階級の広報紙に成り下がった「朝日新聞」だが、珍しく為になる記事を載せている(「朝日」2011126日)。佐々木中(あたる)という哲学者の「仕方ない空気」どう突き崩す?という題名の記事だ。<みんな、こんな世界は嫌なんでしょう。だけど変えようがないと思い込まされている。しかしそれには全く根拠がない。自民党から民主党、次はみんなの党ですか。つまらない順繰りゲームですね。・・・ゲーム盤自体をひっくり返すべき時点に来ているのに、なぜコマが進んだだけで喜んでいるのか。私たちはゲーム盤をひっくり返すこともできる。それを初めから排除しているのは人間ではない。家畜です。「なぜ」と問いましょう。問い続けましょう。われわれは人間なのですから。>

 


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