プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

オバマ次期大統領  「変革」の期待に応えることができるか

2008-11-06 20:10:32 | 政治経済
米大統領選は11月4日、投開票され、ブッシュ政権からの「変化」を訴えた民主党のバラク・オバマ上院議員(47)が、与党・共和党のジョン・マケイン上院議員(72)を大差で破って当選した。人種偏見の強いアメリカだが、ブッシュ政権ノーの圧倒的声の中で、米史上初のアフリカ系(黒人)大統領の誕生となった。イラク・アフガニスタン戦争の破綻と金融・経済危機で、世界を「指導」してきた米国の覇権が大きく揺らぐなか、これまでの政治・社会のあり方を根本的に問い直す国民や世界の「変革」の期待にどこまで応えることができるか。企業献金に支えられた二大政党制の枠内での選択の限界とともに、私はオバマ氏のシカゴ・サウスサイドでの住民運動の経歴に注目したい。彼は、格差・貧困を肌で感じることができる政治家であると信じたいのだ。

大都市シカゴ地区で、オバマ氏は圧倒的な支持を受け、マケイン氏に52ポイント差をつけた。地元での不人気がたたって、アリゾナ州で逆転されそうな危機に追い込まれたマケイン氏とは対照的だ。

――<11月4日夜、イリノイ州・シカゴの中心にあるグラントパークには、約10万人の支持者が集まっていた。CNNのニュースがスクリーンに流れる。そして、午後10時、カリフォルニア州やワシントン州の開票時間に、「オバマが大統領に当選」というテロップが流れた。その瞬間、大観衆が拳を突き上げ、地響きのような歓声がわき起こった。抱き合う若者たち、輪になって踊り出す黒人、そしてテレビの女性リポーターが涙を流した。 興奮が収まらない聴衆は、主役の登場を待った。
午後11時、ついに、壇上にバラク・オバマが姿を現した。再び、歓声が耳を劈く。 「Hello Chicago」>――(金田信一郎「シカゴ オバマを鍛えた貧民街」NBonline11月6日)

オバマ氏は若いとき、シカゴ中心部の南・サウスサイドで地域活動家(オーガナイザー)となり、貧民街の子供の未来のために、教育を受ける環境作りに打ち込むなど、地域住民の生活向上に力を注いできた。オバマ氏の自宅は、今でもサウスサイドにある。

――<シカゴのサウスサイドは悪名高い黒人居住区を抱え、全米でも屈指の犯罪多発地域として知られている。オバマの住む周辺は、シカゴ大学に近く、閑静な住宅街になっている。だが、危機と隣り合わせの現実は変わらない。オバマの家からクルマで15分。同じサウスサイド地区に住む57歳の女性、ダーネル・ドナーソン一家が惨殺されたのは、10月24日のこと。彼女は、昨年オスカーを受賞した人気女優、ジェニファー・ハドソンの実母だった。他に、ハドソンの兄と甥も銃弾に倒れた。
オバマは、あえて、米国が抱える社会問題と隣り合わせに生きようとしているのではないだろうか。「プライベートジェットは快適だが、人々の生活感覚を失いそうになる」と感じるという。そして、「人々の暮らしの中にこそ、真実がある」と語っている。>――(金田信一郎  同上)。

オバマ陣営は5日、来年1月20日の政権交代を円滑に進めるため、政権移行チームを結成、活動を開始した。

――<移行チームの最初の懸案は、喫緊の課題である金融危機に対処する財務長官ら経済担当閣僚と、イラク戦争やテロ対策に当たる国務、国防、国土安全保障の各長官ら安保担当閣僚の人選で、来週にも最初の閣僚指名リストが発表されるとの観測も広がっている。ホワイトハウスを統括する大統領首席補佐官には、クリントン前政権下で大統領政策顧問を務めたラーム・エマニュエル下院議員(48)が打診を受けており、国務長官にはジョン・ケリー(民主)、チャック・ヘーゲル(共和)両上院議員、財務長官にはボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長、サマーズ元財務長官らの名前が挙がっている。>――(「読売」11月6日14時03分)。

国防長官にはゲーツ現長官が留任する可能性も指摘されている。この顔ぶれを見る限り、政治・社会のあり方を根本的に問い直す「変革」は期待できそうもない二大政党制の枠内での選択の限界であろう
しかし、私の今の気持ちは、「人々の暮らしの中にこそ、真実がある」というオバマ氏の言葉を信じたいということだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。