プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

医療改悪 自公が強行採決 行き着く先はアメリカ流

2006-05-18 13:19:49 | 政治経済
医療制度改悪関連法案が18日午後の衆院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決され、衆院を通過しました。野党が、“審議は尽くされておらず、引き続き徹底審議を”と採決に反対しているなか、与党が数を頼んで押し切ったかたちです。自公政権が目指す医療「改革」の行き着く先は苦悩する市場原理のアメリカ医療です。

日本の医療「改革」は、第一に医療費の公的給付をなにがなんでも抑制すること、第二に医療におけるビジネスチャンス創出のための「市場原理」の導入、「混合診療」の解禁など、要するに医療の公の部分を減らし、民を増やす方向で進められています。

小泉内閣の医療制度改悪案は、高齢者を中心に利用者負担増を押し付け受診抑制するとともに、長期療養者を対象とする療養病床の大幅な削減によって高齢者の病院からの追い出しを大規模にすすめようとしています。保険があっても給付は受けられない、受けるなら自己負担という事実上の無保険状態をつくろうとしているのです(これほど確実な公的給付削減はありません)。
また、かねてからのアメリカの保険会社の要求である、公的保険の使えない医療を拡大する「混合診療」の本格的導入も盛り込んでいます。

アメリカでは民間保険が中心で、公的保険は高齢者(メディケア)と低所得者(メディケイド)に限られています。会社の補助が得られない自営業者などは、大変な額の民間保険料を負担することになります(世帯主が50歳で4人家族、自営業、年収700万円で、年230万円もの保険料、同じ条件で日本の国民健康保険料は上限額の年61万円―前ハーバード大学助教授・李啓充さん/「赤旗日曜版」2006.4.9号)
民間保険ですから、病歴がある者などは、保険加入を拒否されます。その結果、保険料が払えない、病気がちなどの無保険者が約4600万人にのぼります。

無保険者が病気になると悲惨です。李啓充さんによれば、ニューヨークの非営利病院でも虫垂炎で1晩入院すると200万円近くかかるそうです(病院1万4千ドル、手術したドクター2500ドル)。この場合、市場原理が導入されていますので、民間保険会社であれば、病院は大口顧客割引をおこない、それぞれ2500ドル、600ドルの請求となるそうです。規制緩和で病院の定価と定価割引は自由に決められます。条件の悪い無保険者には定価が適用される、これが市場原理のアメリカ医療なのです。アメリカでは現在、医療費負債が大問題になっていて、個人破産の理由の2番目になっています。

「必要な医療はすべて保険で行う」というのが公的保険の原則です。それに必要な財源・保険料は、自助だけでは無理があるので社会的扶助(使用者負担、国庫・自治体負担)を入れて社会保険を構成するというのが資本主義国の社会保障制度です。日本では、いつの間にか保険料を支払っているにもかかわらず、利用者の自己負担割合を引き上げて保険制度を形骸化・空洞化してきました。生活が苦しくて国民健康保険料が払えない人から、機械的に保険証をとりあげることまで始まっています。

公的保険外の診療がどんどん増えることは、地域によっても病院によっても大きな格差が生まれます。さらに所得の格差が命の格差に直結することになります。まさに、金のない人間や年寄りは早く死ねという社会にしていいのか―。そのことが問われているのです



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