プロメテウスの政治経済コラム

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日米首脳会談  相も変らぬ対米一辺倒  独仏外交との違いはどこか

2007-11-18 19:25:51 | 政治経済
福田康夫首相は首相就任後初の外訪先にアメリカを選び、ブッシュ米大統領と会談した。首脳会談では、日米安保条約=日米軍事同盟強化が世界とアジアの平和と安定の「基礎」だなどと相も変らぬ対米一辺倒の日本外交を見せつけた。一方最近、連続して、フランス・サルコジ大統領、ドイツ・メルケル首相が訪米し、両国の親米ぶりが話題となっている。しかし、同じ親米でも卑屈な盲目的親米と米国の近い将来の没落を見越した戦略的な親米では大違いである。

日米首脳会談では、アジア外交、北朝鮮、地球温暖化、牛肉輸入など多岐にわたる課題が取り上げられた。特徴は、何事においても、ブッシュ大統領の歓心を買うために汲々とした福田首相の卑屈な態度である。それを端的に示したのがインド洋での米艦船などへの給油支援活動の再開と、それにむけたテロ新法成立の決意表明である。旧テロ特措法が延長できなかったのは、参議院選挙で国民が自民・公明の政治にノーをつきつけ、野党が参議院で多数を占め、政府が延長法案の提出さえできなくなったからである。給油支援が継続できなくなったことを何か悪いことをしたかのように受け止め、訪米して言い訳し、あげくのはてに早期再開への決意を表明する―とても日本の国民を代表する首相の態度ではない。福田首相が在日米軍への「思いやり」予算継続の要求を受け入れ、米軍再編強化の着実な実施を約束したことも卑屈な盲目的親米そのものだ。在日米軍の再編・強化は、日本を国連憲章にも違反したアメリカの「先制攻撃」戦争の世界戦略に組み入れ・再編するものである。日米軍事同盟を侵略的に大変質させ、地球規模に拡大・強化し、在日米軍の基地強化と自衛隊の海外派兵をおしすすめようとするものである。基地の所在地と周辺の広範な地域住民に、一層の痛みを加えるものであり、だからこそ沖縄、岩国(山口県)、座間(神奈川県)の自治体と住民をはじめ、全国各地で受け入れ反対の声があがっているのでる。ブッシュ大統領にたいする首相の約束表明がいかに日本国民の願いとかけ離れた卑屈な態度であるかは明白だ(「しんぶん赤旗」11月18日)。

アメリカは、ブッシュ政権の一国覇権主義と先制攻撃戦略が世界で孤立を深め、イラクやアフガニスタンでの泥沼化、敗北が世界の共通認識になりつつある。 11月7日に行われた特別党学校交流会で、日本共産党の不破哲三社会科学研究所長は次のように指摘している。「わが党の世界論の大きく見た特徴はなにか、ということを、いくつかの角度からとりあげたいと思います。一つは、アメリカの力の評価という問題です。私たちは、アメリカの力も事実にもとづいてリアリズムで見ていますが、世界論ではアメリカの力を過大評価する見方が、結構ひろくあります。とくに日本の政界では、アメリカの力はすごいと思い込んでいる傾向が非常に強くあって、それが日本外交の政策方向をしばしば狂わせるのです。綱領が明確にしているように、いまの世界は、どんなに巨大な力をもった超大国であっても、一国で動かせる世界ではありません。実際、すでに七年にわたるアフガニスタン戦争や五年にわたるイラク戦争の現状は、そのことをなによりも雄弁に実証しています。この戦争は、アフガニスタンで失敗し、イラクで失敗し、アメリカ国内でも、戦争はもうやめてくれ、という声が多数になるところまで来ています。そうなると、アメリカの世界戦略自体にも、二面性が出てこざるをえないのです。テロや大量破壊兵器の疑惑があれば、確証がなくても先制攻撃をくわえる、こういう問答無用の勝手な論理でアフガニスタンとイラクを片づけようとした。では北朝鮮も同じやり方で攻めるのか、というと、もうそうはゆかなくなりました。そこで交渉による解決を前面に押し出した対話外交への大転換が起こったのです」(「しんぶん赤旗」11月11日)

最近、連続して、フランス・サルコジ大統領、ドイツ・メルケル首相が訪米し、両国の親米ぶりが話題となっている。サルコジ氏は仏米両国が米独立戦争以来の「古い友人」であることを強調し、「友人」であることの証しとして「米国は対テロ闘争でフランスを頼りにできる」と親米ぶりをアピールした。10日テキサス州クロフォードの私邸でブッシュ大統領と会談したメルケル独首相もイラン核問題と並びに「アフガン関与を続けることの重要性」で親米ぶりを見せた。しかし、両大統領が盲目的に親米的態度を見せたと考えると大間違いであろう。両者には、不破社会科学研究所長が指摘したアメリカの力の評価は百も承知である。英の覇権の衰退を見越した上でのEUとその中での仏、独の役割を考える戦略に基づく親米である。アメリカに対する独自の主張は、決して譲っていない。ところが、自民党外交には、アメリカの覇権の衰退という変化が見えない。自分としては、アメリカの戦略どおりの動きをしているつもりでも気がついたら、アメリカ外交にすら取り残されるのが落ちである。

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