プロメテウスの政治経済コラム

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2011経団連「経労委報告」の傲慢さ  将来性や付加価値からみて非正規と正規の格差は当然!

2011-02-12 21:01:56 | 政治経済

米倉弘昌新会長のもとで今年の春闘に臨む財界の基本的姿勢と考え方についてどのような報告が打ち出されるか注目されたが、発表された2011年「経営労働政策委員会報告」の内容は、その傲慢さの点で一段と異常なものとなった。そこには、一読して唖然とするような身勝手な財界要求が羅列されている。米倉氏の日本経団連会長就任は、鳩山政権が崩壊し、菅内閣が登場する時期と重なる。政治戦線は、菅の登場で財界が完全に牛耳った(小沢切りにも目途をつけた)。メディアは財界の広報活動を買って出てくれている。そして、本来主敵であるべき労働戦線は解体状態が続いている。2011「経労委報告」が、かつてなく傲慢になるのもわかるというものだ(結局、国民がそれだけ舐められているということで、怒らなければならないのだが)

 

今年の「報告」は、たとえお題目でも、いつもは序文に顔を出していた企業の社会的責任や企業倫理への言及が一切ない。「自信と気概をもって攻めの経営に転じる」ためにはそんなものは不要といわんばかりである。多国籍化した大企業からみて必要だと考える「姿勢」「心構え」「対応」を守れという「お説教」と労資一丸で国際競争力の強化を図れという「号令」を押し付ける傲慢さである(大木一訓「経団連『経労委報告』を読む」「しんぶん赤旗」201128日)

反貧困の市民団体や全労連が中心となって進めた「派遣村」の取り組みが、おおきな社会問題となった2009年の冬、身勝手な「派遣切り」をした大企業は強い社会的批判を浴びた。経団連「経労委報告」は、曲がりなりにも昨年までは、「非正規の処遇改善」に触れていた。 

ところが、今年の「報告」は、「処遇の改善」ではなく「非正規労働者の処遇の納得性を高める」という。「非正規の賃金は労働市場の需給によって決められることが多いので、一律引き上げは実態になじまない」。そして「納得性を高める」ためには、「同一価値労働同一賃金」原則についてわが国独自の考え方をする必要があるという

「正規と非正規の公正な処遇を実現していくためには、意欲、能力、就労・雇用形態が異なることを前提に個別管理を志向することが重要」として、同じ処遇をするかどうかは、「将来的な人材活用の要素も考慮して、中長期的に企業に同一の付加価値をもたらすことができる労働であると判断できるかどうか」によるという。

いいかえれば、「同一価値労働」かどうかの判断基準に将来性や付加価値をもちこみ、非正規は「将来的な人材活用」の対象ではなく、正規労働者と同じ付加価値を企業にもたらすと期待できそうにもないから格差は当然というわけだ。95年にだされた「新時代日本的経営」路線で、雇用柔軟型グループに位置付けられた第三身分の非正規労働者の処遇を合理化する世界にも例のない「珍説」である。

 

今回の「報告」は、労働戦線の解体状態を尻目に労働組合の翼賛化を公然と呼びかけるまでに露骨となった。日本は1970年代末に「ストライキのない国」になったと言われたが、総評が解散し「連合」が発足した80年末にはストライキはいよいよなくなった。春闘でストを構えることも、労働争議をストで解決することもなくなってしまったのだ。ストライキ権を背景に団体交渉に臨むという当たり前のことがなくなった。労働戦線の解体状態が日本の経済社会に暗い影を落としていることに、私たちはもっと注意すべきだと思う(森岡孝二・関西大教授「企業社会日本の盛衰と労働の諸問題」『季論21』2011.01 11号)。
このような中で、いまや春闘も名ばかりで、解体状態といってよい。労働組合側は、ささやかな要求を出すものの、資本の側から軽くあしらわれると、ストも構えずに引き下がる 

とうとう「報告」は、春闘のそれなりの歴史をも否定して、春季「労使交渉」とは「年に一度、自社の現状と組織の未来について真摯に膝詰めの議論をおこなうという慣行」だと平然と歴史を捻じ曲げる。「労使交渉・協議の課題は、企業の存続・発展のための競争力の強化に他ならない」と言い、今後は、「春季交渉」を「労使が一体となって国際競争に打ち勝つための課題解決型労使交渉・協議(春の労使パートナーシップ対話)として、建設的な議論の場とする」とまで言う。これは事実上の団交否定宣言である。残念ながら、これが現状における企業の経営側と労働組合側との力関係なのだ。


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1 コメント

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Unknown (善野)
2011-02-12 22:40:46
関西汽船の子会社"関汽交通社”は

異常な会社、

関西汽船乗船券船場営業所において

異常セクハラが発生被害者の女性はノイロー

ゼになり退職、加害者は会社も労働組合も

解雇を示したが、親の謝罪で加害者は在職

することのなるが、また同じ様なことをする

会社側は
予見していたのであれば注意義務

に使用者責任が存在します。

その上、書類は盗まれるは、

私物は盗まれる、女性がストーカー

被害者の男性は精神疾患になる

異常すぎるこの会社

闘わなければ。

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