プロメテウスの政治経済コラム

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派遣法改定 「抜け穴」残し与党3党合意  福島さん、こんなことでいいのですか?!

2010-03-19 21:03:04 | 政治経済
政府は17日午前、与党3党の党首級による「基本政策閣僚委員会」を開き、労働者派遣法改正案に合意した。政府が提出しようとしている改定案についは、登録型と製造業の派遣を原則禁止するというが、『常用雇用』と『専門業務』が例外とされ、『2つの大きな抜け穴』があいているうえに、その施行を3年後、5年後に先送りしているなど、とてもまじめに「人間使い捨て」問題に取り組んだものとはいないと、各方面から批判されていた
民主党政権は、「政治主導」などと偉そうなことを言いながら、肝心な時に厚労省の労働政策審議会答申をたてに財界の巻き返しに屈服してしまったのだ。ここで問われるのは連立与党の社民党、国民新党の態度である。とくに労働者の味方である筈の社民党の福島瑞穂党首である。彼女は、消費者・少子化担当相として閣僚の一人である。「改正法案」提出のさいには、閣議決定が必要である。ところが、今月はじめには、「(改定案には)問題点が多く、見直す必要がある」などと発言していた福島さんは、「事前面接」を解禁するという改悪部分を削除しただけで、矛を納めてしまったようだ。いわゆる55年体制の頃、社会党は、自民党が吹っかけた囮部分を修正しただけで、いつも裏取引で妥協しては革新側の要求を裏切ってきた。今回もまったく同じ構図となりそうだ。労働貴族が組合を牛耳り、特定政党支持の押し付けがまかり通っているようでは、派遣労働者は救われない。福島さん、こんなことでいいのですか?!
ジグザグの政治経験をつみながら、労働者階級は次の闘い方を学ぶのだ

 政府の派遣法「改正案」は、「製造業派遣や登録型派遣の原則禁止」を言いながら、「例外」という形で「大穴」をあけ、実際には「原則容認」にするヒドイものである。これでは、これまでと同じような『使い捨て』が続き、不安定・劣悪な労働条件も変わらない事態が続く。なぜなら、労政審の財界委員がOKする線で「改正案」を纏めたのだから、結果は推して知るべしである。しかし、最近の本ブログ(http://blog.goo.ne.jp/e-hori/e/5b424bb4f0bd6956f9083802a4fad963)でも指摘したように、労政審の答申に法的拘束力はない。現に、今回「事前面接」問題では、労政審答申に修正を加えたのだ。
派遣先企業が派遣労働者を受け入れるさい、前もって面接するなどもってのほかである。事前面接するくらいなら直接雇え!ということだ。
民主党が「政治主導」を言い、福島さんが派遣労働者の境遇を改善したいという気があるのなら、もっと修正すべきことがいっぱい残されており、しかも実現することが可能なのだ。
しかし、長妻昭厚労相も、福島消費者・少子化担当相も、亀井静香金融・郵政改革担当相にもその気はない。財界とこれ以上面倒を起こすくらいなら、派遣労働者に泣いてもらおうというわけだ

 雇用は正社員が当たり前であり、派遣は臨時的・一時的な業務に限定し、正社員を派遣に置き換える常用代替は禁止するというのが、雇用の大原則である。景気変動・季節変動に対応するために、一定量の有期契約社員が必要としても、労働力を使用しながら、雇用主責任をとらないというような出鱈目を許してはならない。 “非人道的な「派遣切り」を再び起こさない”“「派遣だから」と安い時給で働かせ、いらなくなったら「使い捨て」、こんな働かせ方はおかしい”ということを国民的合意にしなければならない。

 鳩山首相は、今国会の施政方針演説で「製造業への派遣を原則禁止する」と見得を切ったが、「改正案」では、「常用型派遣」(派遣会社に「常時雇用されている労働者」を派遣する)を「禁止の例外」にした。しかし、派遣契約を切られた労働者を派遣会社がどうして「常用」で抱えることができるのか(売上ゼロ!)。案の上、一年雇用の見込みがあれば、「常用」だという。しかも、一年以下の短期契約の更新でもOKという。これでは、実態は「登録型」となにも変わらない。厚生労働省の調査でも、派遣先企業が派遣契約を中途解除した場合に、解雇された派遣労働者は、「常用型」で76・7%、「登録型」で75・8%とほとんど変らない(調査対象の約9割が製造業派遣)。
政府案は、「登録型派遣の禁止」と言うが、ここでも「雇用の安定等の観点から問題が少ない」などとして、「専門26業務」を「禁止の例外」としている。「専門26業務」には、いつでも雇ってもらえるような専門性などまったくなく、派遣期間(原則1年、最大3年)の制約逃れの偽装に使われていることは、これまでも実証済みである。

 旧野党3党案では明記されていた「派遣先の責任」(派遣元労組との団体交渉応諾義務や、未払い賃金に関する派遣先の連帯責任強化)も欠落したままである。派遣村などで、世論に押され気味と見えた製造大企業は、要するに、これまでと実質ほとんど変わらない「改正案」を民主党連立政権に押し付け、「搾取の自由」をこれまでどおり謳歌しようとしているのだ。鳩山さん、福島さん、本当に、こんなことでいいのですか?!

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