プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

派遣法改正 民主党政権「労政審」を隠れ蓑にした労働者への裏切り 「政治主導」は口先だけか!

2010-03-04 21:46:34 | 政治経済
労働者派遣法の改正法案がまもなく国会に提出される見通しである。09年6月、当時野党だった民主・社民・国民新党の三党は、一部不十分さを残しながらも、派遣労働者保護に向けた派遣法改正案を国会に提出した。三党案は、7月の衆院解散で廃案となったが、昨年8月の総選挙で政権交代が実現。新政権の枠組みも法案をまとめた三党となったため、誰もが三党案をベースにした「改正」法案要綱が出るものと期待した。しかし、2月24日に、長妻昭厚労相に答申された改正法案要綱は、三党案から大幅に後退するものであった。民主党政権の「労政審」を隠れ蓑にした派遣労働者への完全な裏切り行為である。派遣法改正は、「ルールある経済社会」に前進するための要のひとつであり、全国津々浦々での労働者階級の決起が求められる。

 労働政策審議会(労政審)とは、厚生労働省設置法に基づいて設置される諮問機関である。公益・労働者側・使用者側委員からなり、法案を国会に提出する場合など雇用に関する政策を決定する際に厚生労働大臣から諮問を受けて報告を出す。
支配階級の政治支配はさまざまなルートを通じて行われる。普通選挙権に基づく民主的共和制のもとで労働者階級が多数を占めるのになぜ財界やアメリカという支配階級の利害を代表する政治が行われ続けるのか支配階級が、政府とその監督下の官僚機構を、あれこれの政権交代によっても動揺させられることなく、自分の手中に握り続け、その権力を行使しているからである。各省庁にある「審議会」を通じた政治支配もその有力な道具の一つである。審議会をお膳立てするのは、官僚であり、支配階級の要求を公的なものとしてオーソライズする隠れ蓑の役割を果たしている。

 驚いたことに、政権交代したのに、現在の労政審の委員は、自公政権の時にその影響下で選ばれたままである。派遣制度の見直しを始めるに当たって、部会長である清家篤・慶應義塾塾長は「今回、新たに議論を行うに当たっても、まずこれ(自公政権が08年に日雇い派遣への批判に追い詰められて臨時国会に提出した派遣法「改正」政府案)を尊重していただきたい」と切り出したという(東直矢「公労使一体で労働者保護をおざなりにした労政審」『週刊金曜日』2010・2・26)。
これは、旧政府案をベースに三党案の内容をどこまで盛り込めるかを議論してくれということだはじめから、派遣法の抜本改正をいかに骨抜きにするかが議題だったのだ。審議会は、その機能に着目して参与機関と諮問機関に分類することができる。参与機関は、法の適用の公正を図る等の目的で行政機関の意思決定に参与するもので、行政機関はその答申に法的に拘束される。これに対し、諮問機関は、重要政策、基本的施策等に関する行政機関の意思決定に当たって意見を述べるもので、答申に法的拘束力はない。答申の尊重義務が法文上明示されている場合でも同様である。

 長妻昭厚労相は、改正法案要綱について、公労使の「ぎりぎりの合意」といい、厚労省の担当者は、「何も引かず、足していない」と澄ました顔である「ウイスキー・メーカーのコマーシャル『なにも足さない。なにも引かない』とそっくりのことば遣い。派遣労働者が二度と非人間的に扱われることがないように真剣な検討が求められる法案づくりが、こんな軽さでいいのでしょうか」(「しんぶん赤旗」2010年2月19日)。
諮問機関の答申に法的拘束力はない。政策を決めるのは国民から負託をうけた議員であり、政権自身である。民主党政権は「労政審」を隠れ蓑にした労働者への裏切りをやめ、すくなくとも三党案に戻るべきである。「官僚主導」でなく、「政治主導」といいながら、もっとも肝心なところで、責任を逃れようとする。まさに、口先だけの政権だ。
日本共産党の志位和夫委員長は2月18日、「抜本改正といいながら、二つの“大穴”がある」と強調し、これを許さない全国津々浦々のたたかいを呼びかけたのに続き、3月3日、政府が提出しようとしている改定案について「これでは、これまでと同じような『使い捨て』が続き、不安定・劣悪な労働条件も変わらない事態が続く」と指摘。「雇用は正社員が当たり前であり、派遣は臨時的・一時的な業務に限定し、正社員を派遣に置き換える常用代替は禁止するという原則に立った抜本改正が求められている」として、抜本的修正案を提起した。

 発達した資本主義国における支配階級の支配は、経済、政治、思想の全分野にわたって、緻密で系統的に行われている。だから、清家篤氏のような人物が慶應義塾の塾長になれるのだ。私たちは、現代の代議制国家のもとでの、富の権力の秘密、政治支配のからくりを見抜く力を養わなければならない。サッカーのオシム氏ではないが、「レーニンは、勉強して勉強して、もっと勉強しろ!と言った。だから私は、サッカーは走れ、走れ、もっと走れ!」だ。私も、呼びかけたい。労働者階級は「学べ、団結してたたかえ、学べ、そして、団結してたたかえ!」だ

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2 コメント

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派遣法抜本改正に待ったをかけるJSGU (greenshield)
2010-03-05 08:23:16
非正規雇用・有期雇用を禁止せず、抜け穴派遣法改正を強行するなら、
民主党の単独過半数に反対です。次期選挙は、自公だけでなく、
民主党にも投票しません。

関連する重要情報です。

派遣法抜本改正に待ったをかけるJSGU - 明日へのうた - Yahoo!ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/shosuke765/31768018.html
2010/2/20(土) 午前 11:07
 この17日、厚生労働省が労働政策諮問委員会に労働者派遣法の改正案要綱を諮
問した。18日に共産党志位委員長は記者会見で「製造業の常用派遣を禁止の例外
としていること、登録型派遣に専門26業種を認めている。この二つの『大穴』は
許されない」と抜本改正への運動強化を呼びかけた。
 民主党連立政権下でつくられようとしているこの改正案に多大な影響力を持って
いるのが、連合・UIゼンセン傘下で派遣会社と派遣労働者によって組織されてい
る労働組合「人材サービスゼネラルユニオン(JSGU・07年9月現在42,5
62人)」である。JSGUは最近「労働者派遣制度に関するJSGUの考え方」
なる文書を発表して、派遣法抜本改正論議に待ったをかけている。JSGUのホー
ムページによれば彼ら主張の根拠はおおよそ次のようなものと見られる。
 「(派遣法施行以来)派遣事業所は41,966となり、派遣労働者数も321
万人、年間売上高は5兆4,189億円と大きく成長しています」「派遣イコール
『ワーキングプア』、派遣イコール『不本意な働き方』という見方には強く違和感
を覚えます」「職業選択の自由の下、間接雇用も直接雇用も同等に『労働』である
ことの評価がされるべきです」・・・・
 実際に派遣で働いている労働者の声として「やりたい仕事を、働きたい時間に、
働きたい期間、働きたい場所で働ける」「時間を有効に活用できる」「多数の派遣
先の中からやりたい仕事を選べる」「仕事より生活を重視し、働き方・暮らし方を
自ら選べる柔軟な制度」など派遣制度を肯定していると主張。「登録型派遣は今や
不可欠な制度として機能している」と結論づけている。
 またJSIUは、民主党内に「派遣制度の改善を推進する議員連盟」を立ち上げ
て、「一部団体・政党が主張している『労働者派遣制度の問題の捉え方』の誤りを
指摘し、真の労働者保護と業界の健全な発展を目指して活動」している。議員連盟
の会長は川端達夫衆議院議員、幹事長は三井辨雄議員、他に松原仁、池口修次、加
藤公一、近藤洋介、徳永久志、鷲尾英一郎氏らが役員に名を連ねている。
 UIゼンセンは連合の最大民間単産であり、JSGUはその中の有力単産である。
連合と民主党の癒着がこでも問題になっているとおれは思う。
Yahoo!ブログ - 明日へのうた
http://blogs.yahoo.co.jp/shosuke765
返信する
抜け穴派遣法改正を喜ぶ自動車総連 (greenshield)
2010-03-05 08:23:50
非正規雇用・有期雇用を禁止せず、抜け穴派遣法改正を強行するなら、
民主党の単独過半数に反対です。次期選挙は、自公だけでなく、
民主党にも投票しません。

関連する重要情報です。

抜け穴派遣法改正を喜ぶ自動車総連 - 明日へのうた - Yahoo!ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/shosuke765/31856543.html
2010/3/1(月) 午後 2:04
 何回か前の本ブログで「派遣法抜本改正に待ったをかけるJSGU」という記事
を書いた。派遣会社の労働組合であるJSGU(人材サービスゼネラルユニオン)
が、民主党有力議員と組んで派遣法抜本改正の足を引っ張っているという内容だ。
その後「週間金曜日」2月26日号の「派遣労働者を裏切る民主党」という記事を
読んで、JSGUは実は小物でもっと巨悪の労働組合があるということに気付かさ
れた。派遣労働者を使い捨てにして利益をあげている自動車産業の労働組合「自動
車総連」のことだ。
 週間金曜日の記事はこうだ。抜け穴だらけの「労働者派遣法改正案」を答申した
「労働政策審議会」は、自民党麻生内閣の委員構成そのまま。部会長の清家慶大教
授は「まず旧政府案を尊重していただきたい」と切り出したという。これに勇気を
得て使用者委員が言いたいことを言い、労働者委員も答申案を支持したというのだ。
 そこで、労働政策審議会の労働者委員なるものをインターネットで調べてみると、
情報労連、JAM、UIゼンセン、運輸労連、基幹産業労連、電力総連、航空連合
など連合の主要民間単産委員長がずらり。自動車総連西原浩一郎会長もその一人。
週間金曜日によれば、彼は「報告に沿った内容で早急に法案をまとめるよう発言」、
「労働者保護をなおざりにしても、政策決定への影響力を維持したいという共通の
利益で公労使三者が結束しているのもしれない」と指弾の対象だ。
 西原会長は、09年1月の自動車総連中央委員会で「労働者派遣法」改正の動き
について、「課題はあるものの常用雇用型派遣を基本に」し、「製造業の登録型派
遣を禁止する場合にあたっては、対象者の円滑な雇用移動に向けた支援措置と、そ
のための必要な猶予期間を確保すべきである」と発言。今年の中央委員会では、
「労働政策審議会の取りまとめ内容は、昨年1月の総連中央委員会での会長挨拶の
中で申し上げた見解に、ほぼ沿う内容であり理解できるものであると考える」と手
放しの喜びようだ。
 日本の企業内労働組合は労働者にとって最悪の存在となっている。
Yahoo!ブログ - 明日へのうた
http://blogs.yahoo.co.jp/shosuke765
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