プロメテウスの政治経済コラム

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「北」核問題 「初期」履行期限切れ 米中首席代表会談 忍耐強い米国はいつまで?

2007-04-15 20:46:24 | 政治経済
2月の6カ国協議のあと、米政府は北朝鮮がマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」に持つ口座の凍結解除を認め、3月18日から6カ国協議が再スタートした。しかし、資金洗浄疑惑など不正資金が含まれる北朝鮮口座の凍結を無条件で解除することに反対する米国内の勢力と未調整のままであったので、それを察知した北朝鮮が資金の全額解除の確認を頑固に求めて4日後の22日に流会となってしまった。米財務省によるBDA口座の調査結果によると、北朝鮮関連口座の一部がドル紙幣偽造、麻薬取引や大量破壊兵器拡散に関係があることが間違いないようだ。これが事実なら、口座の一部は昨年10月の北朝鮮の核実験後に採択された国連安保理の制裁決議(10月14日)に抵触する可能性もある。そうではありながらも結局、米国は4月10日、凍結の全面解除を認めたようだ。ただ、まったくの無条件ではないようで、とうとう14日の初期段階措置の履行期限が来てしまった。中国が北朝鮮側と協議しているようだが、北朝鮮がいつ、核施設の稼働停止・封印と国際原子力機関(IAEA)の査察官受け入れという初期措置に踏み出すのか今のところ不明である。「今後数日以内に真の前進を図ることがわれわれの目的だ。初期措置ができる限り早期に完了するよう望む」と強調、期限延長を事実上容認したアメリカの忍耐がいつまで続くか注目される。

それにしても、北朝鮮問題での最近のアメリカの忍耐強さは、きわだっている。田中宇さんは、「アメリカは自国の覇権が潜在的に衰退していることに対応するため、これまでアメリカだけで担ってきた国際社会の運営負担を、こっそり他の大国にも分散させようとしている。この隠れ多極化戦略の一環として、アメリカは中国に『国際社会での責任をもっと果たしてくれ』『アメリカに頼らず、中国が中心になって朝鮮半島などアジアの問題を解決してくれ』と求め続けている」と解説している(田中宇の国際ニュース解説「改善しそうな日中関係」2007年4月12日)。しかし、帝国主義者が自ら進んで覇権を他国に譲るとは考えにくい。忠実な目下の同盟国「日本」に役割の一部を分担させようとすることは、十分考えられる。アメリカは、なにかと口うるさい韓国から在韓米軍の撤退の手続きを始めている。在日米軍基地を強化すれば十分にカバーできるからである。 反中国、反朝鮮のナショナリスト安倍に「就任したらまず中国に行き、日中関係を好転させない」と圧力をかけた(田中宇 同上)のは、アメリカ政府である。 従軍「慰安婦」問題で馬鹿なことをいう安倍を嗜めたのもアメリカ政府である。
そのことを十分に承知した上で、中国は、さらりと「日本側が(歴史問題での)態度表明と約束を実際の行動で示されることを心から希望します」(温家宝首相の国会演説)という原則的立場をちらつかせながら、日中関係の改善に積極的に動いた。中国は、自らの発展のために平和的な国際環境を追求するという立場を堅持しながら、国際関係における各国の力関係・動きを仔細に分析して、したたかな外交を展開しているのだ。

温家宝首相の訪日と時を同じくして、日本の衆院では憲法9条改定を可能にする国民投票法を強行可決した。日中関係の改善のために来た温家宝首相は今回はみて見ぬ振りをした。中国をはじめとしたアジア諸国が「日本の再軍事大国化」を警戒するのは当然である。アメリカの動向も睨みながら必要なときに必要な意思表示があるのだろう。
6カ国協議では2005年9月の北京宣言で、北が核廃棄したらアメリカと北朝鮮の間で、そして日本と北朝鮮も国交回復・友好関係を結ぶことが協議の目標として定められている。北朝鮮の出方にもよるが、アメリカは中国の力を利用しながら、当面この枠組みを追及するようだ。日米同盟強化一本やりの反中国、反朝鮮だけでは、国際政治のダイナミズムについていけないことは確かである。
 

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