プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

離婚前妊娠などもってのほか  ジェンダー論を敵視するおじさんたち

2007-04-16 21:20:35 | 社会問題
「現夫の子であるのに前夫の子としてしか出生届が受理されない」。離婚・再婚の増加などにともなって、こうしたケースが増え、救済を求める声がひろがっている。
民法772条第2項は、出生した子どもの親について、次のように規定している。
「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」
「婚姻中に懐胎」したということは、離婚する前の夫との婚姻関係のなかで妊娠したということ、つまり、今の民法の規定では、離婚しても300日までに生まれた子どもは、事実上、前の夫の子とみなされてしまうということだ。

離婚件数の増加にともない、離婚が成立する前に、または離婚後300日までに、前夫ではない新しい夫との子どもを生む女性が増えても不思議でない。その子どもたちは現実には、新しい夫との子であるのに、民法772条の規定にしたがえば、その子どもは「前夫の子」として届けなければならない。
新夫の子として認められるためには、前夫の協力を求めなければならない。手段としては、(1)出生届後に、前夫に「嫡出否認」(自分の子ではない)という訴えをおこしてもらう、(2)前夫に対して「親子関係不存在確認の訴え」をおこす、というものがある。いずれにせよ前夫との関わり、前夫の協力なしではできない。前夫の居所がわからない、前夫の暴力から逃げてきた場合など円満離婚でない場合は、こうした審判も受けられず、子を無戸籍のままにせざるをえない。
民法772条の見直しに関して、法務省が妊娠日が離婚の「前」か「後」かで、救済の線引きをする通達を検討していることにも批判が出ている。離婚届の提出がさまざまな事情で遅れたことで、離婚の日付が妊娠日より遅れてしまうケースも珍しくない。妊娠が離婚前か後であるかを問うのは「役所に離婚届を出した日付だけで、子供の運命を決めるような見直し」だという批判の声があがっている。

医学や科学の進歩によって子どもの父親の推定は可能なのだから、法律でさまざまな要件を付加するのは、なにがなんでも女性を単婚の家族制度に縛りたいというよこしまな意図でしかない。その意味では、女性だけに再婚禁止期間の制限をつけていることも現代においては、時代遅れの男女差別といってよいだろう。
「男は仕事、女は家庭」「男らしく、女らしく」といった固定的な性別役割分業や偏見は、生物学上の男女間の性差とは区別して、社会的文化的につくられた性差としてジェンダーと呼ばれる今問題になっている男女平等はこの社会的文化的につくられた男女差別(ジェンダー)をなくそうということで、女性に男と同じように力仕事をしろ、深夜業をやれ、生理休暇は不必要ということではない。
社会的文化的には、人間として対等というだけの話で、男と女が違うのは当然である。

いま日本社会は、構造改革の進行とともに、社会統合の危機が大人社会でも子ども社会でも顕在化し、覆い隠しようがないくらい顕わになってきた。安倍首相を筆頭とする新保守主義者は、社会のモラルの解体を阻止するために、道徳や規律を強調し、ナショナリズムを高揚し、家族の「再建」を目指している。かれらには、民法772条(嫡出の推定)や733条(再婚禁止期間)の見直しは「家族を崩壊させる」と映るようだ
問題は、子どもをどうするかということで、それが『貞操義務』というような話になるのは、とんでもない時代錯誤といってよい。子どもの戸籍について問題が生じるような場合、DNA鑑定をおこない、子どもを救っていけばよいだけの話である。

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