プロメテウスの政治経済コラム

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近づく米大統領選  オバマ候補優勢  ブッシュ路線の転換どこまで

2008-10-30 19:02:57 | 政治経済
米大統領選は11月4日の投票日まであと6日となった。民主党のオバマ候補が選挙戦を優位に進めているようだが、ブッシュ政権の政策破たんが明らかになる中、次期大統領はだれであれブッシュ路線からの転換が課題となっている。米国の覇権衰退を受けて、米国を盟主とした帝国主義同盟諸国(G7)もこれまでとは違った独自の外交戦略が求められる。世界は「アメリカ後」を見越して動き始めている。

ブッシュ政権の8年、軍事・経済の両面で米国の支配的地位は揺らぎ、国民の間にもさまざまな矛盾が吹き出してきた。今、これまでの政治・経済システムに厳しい目が向けられ始めている。

「経済のグローバル化を背景に金融で世界を支配してきた米経済の屋台骨が揺らいでいます。規制撤廃で投機の場と化した金融モデルにレッドカードが突きつけられています。世界からの膨大な資金流入の変調もあり、借金に支えられた旺盛な消費は維持できなくなっています。実体経済も急速に落ち込み、多くの米国民が職や家を失う脅威に身構えています。」(「しんぶん赤旗」10月18日)。

ブッシュ政権の8年間は、クリントン前政権の規制緩和路線を引き継ぎ、投機的商品を扱う金融機関を野放しにしてきた期間であった。今の焦点は明らかに金融の規制である。アメリカが新自由主義とどこまで決別できるかはわからないが金融行政改革で監督体制を強化せざるをえなくなっている。
米国は金融危機の高まりとともに、財政赤字も深刻となっている。2008会計年度(07年10月―08年9月)の財政赤字は、軍事費や不況対策の歳出増、景気低迷による税収減で過去最高の4548億ドル(約46兆円)に達した。金融不安と巨額財政赤字―次期大統領はブッシュ政権からこれらを引き継がねばならない。

ブッシュ政権のもとで進んだ国民生活の悪化は政権末期にきて、いっそう鮮明となってきた。「貧困」と「医療保険」は、米国が抱える深刻な問題である。次期大統領選びの基準として「経済と雇用」が、国民の最大の関心事となっている。二位の「テロリズムと国家安全保障」9%に対して57%とダントツである(CBSテレビとニューヨーク・タイムズの世論調査10月10日―13日)。

世界との関係の立て直しも次期政権の重い課題だ。

「国連安保理の決定に反するイラク侵略戦争、七年を超えたアフガニスタン報復戦争はいずれも行き詰まっています。包括的核実験禁止条約(CTBT)への支持を撤回し、核不拡散条約(NPT)再検討会議で核兵器廃絶の約束に背を向け、地球温暖化防止のための京都議定書から離脱するなど、ブッシュ政権の路線は米国を孤立に追いやりました」(「しんぶん赤旗」同上)。

イラク、アフガンの行き詰まりを受けて、ブッシュ政権は、北朝鮮問題をめぐる6カ国協議の積極的促進など、問題によっては外交解決を重視する姿勢もとっている。米国の地位低下に危機感を抱きつつも、米国の軍事力をどう影響力として行使していくかについて次期政権は模索することになるだろう。米国の覇権の衰退を見越して世界は動き始めている。10月13日に地位協定の最終案がまとまり、イラク議会が批准すれば成立する状況になっていたイラク駐留米軍の駐留継続が、その後イラク与党勢力内からも異論が続出。国連が定めた外国軍駐留期限の今年末までに協定が締結されるのは事実上困難との見方も出始めた。

米国民はブッシュ路線からの転換を求めている。ブッシュ大統領の後継マケイン候補すらブッシュ色を払拭することに躍起である。オバマ候補の「チェンジ(変革)」は、米国をどう変えるのか。イラク侵攻を支持したバイデン上院議員を副大統領候補に選び、自らもアフガンへの派兵拡大を主張しているオバマ候補。ゴールドマン・サックスの共同会長やシティグループの会長を歴任したルービン元財務長官がブレーンで、大金融資本本位の政策を本当に転換できるのか。二大政党制の枠内でどこまで「チェンジ(変革)」が進むか大いに興味のあるところだ

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