プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

中南米の地殻変動  現代の世界をどう見るか

2006-07-22 18:43:39 | 政治経済
昨夜(7月21日)のNHKスペシャルは「ラテンアメリカの挑戦 ベネズエラ革命」でした。98年にベネズエラの大統領に就任して以来、チャベス大統領は、識字運動、無料医療、無料の市民食堂、自立のための産業奨励など社会変革を進めています。チャベス大統領は、米国の裏庭中南米での地殻変動の中心人物です。米国は、CIA(米中央情報局)、コロンビアの準軍事組織、マイアミの過激派亡命キューバ人グループを総動員してチャベス政権の転覆を狙っています。

米国が押し付けた新自由主義と格差社会を告発し、民主的で自主的な政治をめざす流れが中南米で強まっています。七年前にベネズエラから始まった南米変革の波は、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、ボリビアで相次いで左派政権を誕生させ、「脱アメリカ」の動きを強めています。今年1月に、ボリビアでモラレス氏が先住民として、初めて大統領に選出されると、同月、隣国チリでは、バチェレ氏がチリ初の女性大統領に当選。現在、南米11ヶ国の中で、左派あるいは中道左派が政権を握るのは、ペルーを含めて、7ヶ国にのぼります。

現在中南米は、1970年代から80年代に中南米全域でアメリカの後押しのもとに権力を握った軍事独裁政権によりもたらされた10年に亘る悪夢から目覚め始めています。IMFと世銀によって強制されたワシントン・コンセンサスとよばれる経済モデルは投資のために市場を開放し、公共事業を民間企業の手に委ね、経済に対する政府の介入を否認し、組合の解体に励み、国内産業の衰退、貧困と格差の拡大をもたらしました。そして、貧しい諸国に残ったのはIMFと世銀にたいする多額の外貨借入負債だけでした。

石油やガスなどの天然資源にたいする利権を米国多国籍企業から取戻すチャベス大統領らの動きに対し米国は反政府勢力を育成・援助することによって左派政権転覆を画策しています。しかし、中南米の左派政権は、皮肉にも、米国の言う自由と民主主義による選挙を通じて国民の高い支持をえています。NHKの番組は、米国とベネズエラの対立の底に何が潜んでいるかを迫真の取材を通して明らかにしていました。

米国の一国覇権主義に追随せず、自主的で平和な共同をめざす流れは、アジアや欧州その他の地域でも顕著になってきています。「イラク戦争への協力ノー」を主張する欧州諸国、「アジアの知恵」で紛争を乗りこえ、文明間の対話と共存をさぐるASEANを中心とした国々の動きなど、いま地球的規模での地殻変動が始まっています。

世界の構造的変化を全体として見ようとする場合、共産党・社会科学研究所所長の不破さんは、世界を次の4グループに分けてしばしば説明していますが、確かに便利です。
第一のグループ 発達した資本主義の国ぐに         人口は約9億人
第二のグループ 社会主義をめざす国ぐに【注】       人口は約14億人
第三のグループ アジア・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐに 人口は約35億人
第四のグループ 旧ソ連・東欧圏の国ぐに          人口は4億数千万人
【注】社会主義をめざす国ぐに・・・共産党独特の規定で深い意味はありません。要するに中国、ベトナム、キューバのことです。

同じアジア・アフリカ・ラテンアメリカの国ぐにといっても植民地を経験した国、経済や文化の発展段階、政治体制、宗教・民族など大きな違いがあります。しかし、全体としてアメリカ的な覇権主義の支配に反対する、植民地主義の復活に反対し、自国の政治的経済的な独立を追及する、こういう意欲では、アメリカとの外交的な親密さの度合いに違いがあっても、多かれ少なかれ共通しています。アジア・アフリカ・ラテンアメリカの人口は、62億人の地球人口のなかで、圧倒的です(社会主義をめざす国ぐにを含めると8割近くを占める)。

21世紀は、これらの4つのグループの国ぐにが相互に影響しあいながら、それぞれの歩みを進めることになります。日米軍事同盟を優先する立場で米国から見た世界の報道に終始しがちな日本の大手メディアに頼っていたら、世界の変化を見失います



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