プロメテウスの政治経済コラム

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順序が違う 国民投票法案論議

2006-04-14 17:03:59 | 政治経済
国民投票法制に関する論点協議が衆院憲法調査特別委員会で始まりました。論点協議から国民投票法案制定への流れを強め、改憲機運を盛り上げようという意図がありありです。しかし、改憲の是非についての議論を後回しにして手続きだけを急ぐのは本末転倒、順序が間違っています。

自民党憲法調査会(船田元会長)は4月12日、党本部で会合を開き、改憲のための国民投票法案について、「改憲手続きに関する法案骨子」を了承しました。今国会での成立にむけて、はずみをつけようと動きだしました。また、会合では、これを基本に民主党との協議をすすめることを確認し、今後の折衝を中川秀直政調会長に一任しました。

「憲法改正に賛成か反対かとは別に、国民の意思表明の手続きを決めること自体は構わないのではないか」という議論は正しいであろうか。井口秀作・大東文化大学助教授はこの主張には誤解があると言います(「赤旗」06・3・30)。
憲法改正の発議があって具体的に国民投票が問題となります。発議とは憲法改正案を決めて国民に提案することです。発議に賛成でない人は、国民投票を求める必要がありません。

いま改憲の流れの中で焦点となっているのは憲法第9条です。9条改憲反対の護憲派は、当然改憲の発議に反対します。改憲に反対しながら、発議に賛成するとか、国民投票の実施や国民投票法の整備に賛成するというのは、政治的には明らかに矛盾であり、二枚舌の奇妙な行動といわなければなりません。

国民投票(住民投票)やそれに代表される直接民主制の価値を評価することと、いま国民投票を求めない立場とはまったく別の事柄です

なぜ改憲派は、改憲の是非についての議論を後回しにして、改憲の策動と国民投票推進運動をすりかえようとしているのでしょうか。改憲派は「国民投票法をつくって主権者としての権利を行使しよう」などと盛んに誘いをかけています。
その背景にあるのは、改憲派が騒ぐほどに改憲そのものについて国民世論が盛り上がらないという事実です。もともとは改憲論議を先に進めてきたのですが、焦点となる9条改憲論議を真正面から持ち出す段となると躊躇せざるを得ないのがいまの状況です。
そこで国民投票で改憲することがあたかも国民主権を実現することだとすりかえて改憲論議の促進に活用しようという政治戦略を弄しているのです。これは明らかに本末転倒です

国民投票法案をどうするかという議論に乗る前に、あなたは九条改憲そのものについて自分の頭でどう考えるか――これこそが現在の最も重要な問題の焦点なのです。



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