プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

米原潜放射能垂れ流し2年超  40年前のソードフィッシュ事件 米ファクトシートの欺瞞

2008-08-08 18:48:51 | 政治経済
外務省は8月7日、米原子力潜水艦ヒューストンの放射能漏れ事故について、同艦から放射能を帯びた冷却水が漏れていた期間が2006年6月から今年7月までの2年以上に及んでいたと発表した。ヒューストンの放射能漏れは、ハワイでの定期点検中の今年7月24日に確認され、8月1日に米政府から外務省に通報があったが、同省の政府・関係先への通報が一日遅れたとして問題になっていたもの。2年以上にも及ぶ放射能漏れは、米原子力艦船の「安全神話」のでたらめさ、安全管理体制のずさんさを如実に示すものだ(「しんぶん赤旗」2008年8月8日)。米政府の通報では、ヒューストンは06年6月以降、米海軍佐世保基地(長崎県)に5回、同横須賀基地(神奈川県)に一回、同ホワイトビーチ(沖縄県)に5回寄港。その際、ヒューストンから放射性物質が漏れていたという。佐世保、沖縄、新たに明らかになった横須賀の各寄港地の住民からは、当然に怒りや不安の声が上がっている(「毎日」8月7日23時5分配信)。

佐世保には1964年の米原潜シードラゴン以降、8月4日から現在寄港中の同ラ・ホーヤまで潜水艦や空母など原子力艦が通算304回寄港している。佐世保地区労などでつくる核空母寄港反対現地闘争本部の吉村庄二本部長は、ヒューストンの放射能漏れに関する新たな公表に対し、「二年前から漏れていたとは驚き。米側は事実を隠していたのではないか。日本政府や知事、市長はすべての核艦船寄港を拒否すべきだ」と語気を強めた。原水爆禁止佐世保協議会の山下千秋理事長は「米軍の原子力管理のずさんさがあらためて浮き彫りになった。人体や環境に影響を及ぼす事故をいつか起こすのでは、と不安は大きい」と話した。長崎原爆遺族会の下平作江会長は「とんでもないこと。(米海軍は)安全だと言いながら、あちこちに放射能をばらまいていたことになる。漏れた量の問題ではない。また被ばく者が生まれたらどうするのか」と憤慨した(「長崎新聞」 2008年8月8日)。
このような声を受けて、自治体による米艦艇の入港拒否権限はないが、長崎県は8日午後、外務省に対し、同艦の安全性が確認されない限り、佐世保港への入港は受け入れられないとの立場を伝えた(時事通信8月8日15時25分配信)。

40年前の1968年長崎・佐世保で原潜ソードフィッシュ入港時に、放射線調査で平常の10-20倍の異常数値を検出するという事件があった。しかし、国は当初公表しなかった上、明確な原因究明もされず終わった事件である(「長崎新聞」同上)。冷却水放出は米海軍ではしばしば行われていることなのだ。
ソードフィッシュ事件を受けて、当時の三木武夫外相と米国政府の間でどのようなやり取りがあったかは、米側解禁資料などでその真相が明らかになっている。港湾内での冷却水放出をやめてくれという日本側の要求に対し、米政府はあくまで拒否する。緊急出動で原子炉の出力を急激にあげたとき、冷却水を艦内に溜めることは不可能だからだ。外相が、日本の港湾内での一次冷却水放出を「例外」として認めるとしたうえで、「冷却水が放出された場合、米側は事後に日本政府に通知してくれるか」とジョンソン大使に質問するが、「日本政府はこの縄張りからすっかり手を引くのが一番良い」などと拒否される。危険な放射能を含んだ冷却水が、時々佐世保や横須賀で放出されていることがわかれば、地元民は寄港に当然反対する。だから、米側は冷却水の秘密裏の放出に固執するのだ(「しんぶん赤旗」2006年10月29日)。

横須賀への原子力空母配備に関し、米政府は「合衆国の政策は、日本国の港も含め、沖合12海里以内で1次冷却水を含む液体放射性物質を排出することを禁じている」と書き込んだファクトシートを、日本政府に渡し、それをもって、政府も「安全」だからと配備を受け入れ、横須賀市長も右にならえをした。しかし、実際はヒューストンに限っても、放射能を含んだ冷却水が垂れ流されていたのだ。日米両政府はこのファクトシートとの整合性をどう説明するつもりか!
基準以下の濃度であれば日本の港でも放射能を含んだ冷却水を排出出来るとしたアメリカ海軍の報告書が存在し、今回2年超もの放射能垂れ流しが行われていた。
一方で領海12海里以内では排出しないとする日米両政府。この欺瞞への明確な説明や安全性についての充分な情報が示されないまま、原子力艦船の寄港が積み重ねられているのだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。