プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

消費税18年目 資本主義的平等とは?

2006-04-02 19:07:38 | 政治経済
1989年4月1日に自民党の竹下内閣が消費税を導入してから18年目を迎えました。政府が消費税を口にするとき常にいうのは、「福祉の充実」「高齢化社会への対応」です。97年の増税(3%→5%)のときも「安心して暮らせる高齢化社会を構築するため」といいました。これが嘘であることは、その後の連続的福祉切り下げの事実に照らせば誰の目にも明らかでしょう。消費税を考える上で、人々に「ひろく、うすく」税を負担させることが公平だという資本主義的平等論の意味を改めて吟味することがどうしても必要です。

「間接税への傾斜、直接税のフラット化」の流れに沿って、政府は逆進性の強い消費税を導入・増税し、大企業・大資産家に減税するという税制「改革」を進めています。「国民の租税負担は、国民の担税能力(所得や保有資産の大きさ)に相応しているものでなければならない」(応能負担原則)という「租税負担の公平性原則」へのあからさまな挑戦です。
厚生労働省の分析によると、税制の所得再分配の働き(当初所得と再分配後所得の比率)は、消費税導入前の五分の一に低下しています。

マルクスは『資本論』Ⅰ第2篇「貨幣の資本への転化」の最後のほうで「労働力の売買がその枠内(資本制生産関係のこと)で行われる流通または商品交換の部面は、実際、天賦人権の真の楽園であった。ここで支配しているのは、自由、平等、所有そしてベンサム (Bentham)だけである」と言い、資本主義社会における自由とか平等の本質を喝破しています。資本主義社会では、持つ者も、持たざる者も等価交換の場面では、対等の契約主体として平等であり、契約するかしないかは、法律上対等な人格として、個々の「自由」意志に従うだけです。

しかし現実において、売るものとして労働力商品しか持たない者となんでも買える十分な貨幣を持つ者とが、対等・平等ということはありえません。資本主義社会では、形式的平等のもとで、現実に拡大する不平等・格差を是正することが必要となります(実質的平等)。日本国憲法第14条は、第一次的には形式的平等を規定するものですが、実質的平等を相当程度に要求しています(第25条も参照)。所得税法において採用される累進課税制度(納税者の資力に応じて税率を段階別設定)は、この平等の理念に合致しようとするものです。比例税率を採る消費税が憲法第14条第1項に違反すると主張されるのは、この趣旨からです。
「間接税への傾斜、直接税のフラット化」が公平だという主張は、形式的平等から実質的平等へ資本主義社会が乗り越えてきた歴史の歩みを否定する、金持ちの議論です。こうした税制「改革」が、貧困と所得格差の拡大の火に油を注ぐことは間違いありません。

89年以来、国民が納めた消費税は170兆円を超えています。福祉に使われず、どこに消えてしまったのか。この間、法人税は約160兆円もの減収になりました。消費税は法人税の減収の穴埋めにつぎ込まれたに等しいということです。こうして、全体として税収は伸びず、福祉はきりきざまれてきたのです。
いまこそ必要なのは、税金を負担する財力を持った大企業・大資産家の負担強化(応能負担原則)を取り戻すことです。

谷垣財務相は、消費税率引き上げの法案を来年の国会に提出する考えだと明言しています。消費税大増税を断念に追い込むことができるかどうかは、国民の世論と運動にかかっています。「消費税の増税を許すな」の「怒りの全国行動」が、4月1日から3日まで各地でくり広げられています。


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