プロメテウスの政治経済コラム

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コムスン不正問題をどうみるか  公共セクターの業績評価システムの研究を

2007-06-12 15:28:49 | 政治経済
訪問介護最大手コムスン(東京都港区)が、全国各地の介護事業所で不正申請を繰り返し、「介護を食い物にしたと言われても仕方ない」(親会社グッドウィル・グループの折口雅博代表取締役会長)ことをやっていた。
政府・厚労省は、1990年代後半以降の社会保障構造改革のなかで、社会保障分野への営利企業の参入の規制を緩和、民間営利企業の参入を促進してきた。一方で、自治体や社会福祉協議会など公的部門がおこなってきたサービスは、「民間の公正な競争を妨げることになる」と次々に廃止されていった。
そうした流れのなかで、「介護は有望市場」というGWGの折口会長がコムスンを買収。徹底した利益第一主義の経営で、事業の拡大をはかってきた。折口会長は2006年11月、偽装請負でコンプライアンスを問われた人材サービス最大手のクリスタルを買収している「資本主義社会の中で大きな力を持ちたい。そうすれば自分のやりたいことが自由にできる。そのためにあくなき事業拡大していく」という折口会長には、他の六本木ヒルズ族と同じように、もうけのためには、コンプライアンスは、眼中になかったようだ。
コムスンでは5都県8介護事業所で指定の不正申請が発覚したが、いずれも取り消し処分前に廃止届が出され処分を免れている。今回の件で、コムスン樋口社長は自らの判断で処分逃れを繰り返したとし「一カ所でも取り消しを受ければ全拠点でサービスができなくなる連座制を恐れた」と発言。厚労省に「事業所の再配置で処分逃れではない」と虚偽の説明をしていたことも認めた。折口会長は樋口社長から処分逃れの報告を受けていたが、「違法行為でないと説明された。もっと深く考えればよかった」と述べ、今のところ辞任の意思はない(毎日新聞 2007年6月6日 22時02分)。

安倍首相(当時内閣官房副長官)は、03年の「コムスン通信」十号でGWGの折口会長と対談していた(折口会長が記者会見した8日以降同社HPより削除された)。折口氏が介護事業に参入した動機などを語りながら「『家族は愛を、介護はプロに』という考え方です」と自己紹介。安倍氏は介護保険制度にふれながら「やはり民間の方の機動力で『事業が成り立つ』ことが大切」と民間活力導入論を強調した上で、「コムスンは一生懸命やっておられる」とコムスンを“称賛”する場面も(「しんぶん赤旗」6月12日)。

政府は介護保険の導入にあたって、介護サービスの基盤整備の公的責任を果たすのではなく、手抜きと営利企業への依存を強めてきた
しかし、介護サービスは営利第一の民間セクターにはなじまない。心のこもった介護には、損得ではなく、ナイチンゲール精神が必要なことは、誰でもわかることだ。劣悪な労働条件と低処遇にもかかわらず、良心的な介護労働者の献身で現在、かろうじて制度が支えられているのだ。

資本主義システムを人民的に制御しようとする場合、公共セクターの役割は欠かせない。介護サービスの領域は、明らかに、公共セクターが適している。
公共セクターの問題点は、適切な業績評価システムがない場合、活動が停滞的になりがちで、自己革新、自己発展性をもたないことである。市場がもつ情報のフィードバック機能が働かないからである。良質のサービスを効率的に提供するためには、市場化テストにかわる業績評価システムが欠かせない。誰と誰が、どのような評価システムで、どのように評価するかは、個々の公共セクターの性格に応じて研究する必要があろう。
問題は、公共サービスを利潤本位ではなく、人民本位にしかもいかに効率的に提供できるかである。

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