プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

「消費税の社会保障税化論」のまやかし  社会保障費と消費税はまったく無関係

2008-01-03 18:32:57 | 政治経済
2008年は、消費税増税派勢力のデマゴギーとの闘争が重要な年となるであろう。消費税増税派のイデオロギー攻勢は単純である。すなわち「社会保障を我慢するか、消費税増税かの二者択一を国民に迫る」ことだ。しかし、これほどバカげた話はない!社会保障費は予算の歳出側の話であって、消費税の有無によって決まるものではないからである消費税が89年に導入される以前には、日本に社会保障費はなかったか?!社会保障費と消費税を無理やり連結させる議論は、デマゴギー以外のなにものでもない

社会保障費は、歳入側の従属変数ではない。もちろん、経済規模の小さい途上国が、いくら行き届いた社会保障を構想しても、歳入側に制約されるということは、あり得る。しかし、日本の社会保障給付費の対GDP比は、17・4%であり、イギリス22・4%、ドイツ28・8%、フランス28・5%、スウェーデン29・5%などヨーロッパ諸国と比較するといまだに低い水準なのである(「しんぶん赤旗」2007年12月11日)。

私は、社会保障を考える場合の原点は、人間裁判と呼ばれた「朝日訴訟」の東京地裁判決だと思っている。朝日訴訟とは、結核患者で当時の生活保護を受けていた朝日茂さんが、兄からの仕送りを国庫へ取り上げられたことに端を発し、憲法25条そのものを問いただした闘いとして、人間裁判、人権裁判として今に生きている裁判である。60年の東京地裁判決は、憲法25条にいう「健康で文化的な生活」とは、国民の権利であり、国は国民に具体的に保障する義務があること、それは予算の有無によって決められるのではなく、むしろこれを指導支配しなければならないとした社会保障費は、すべての国民に「健康で文化的な生活」を保障するために必要な歳出予算であって、消費税があろうとなかろうと歳入側とは独立に決まるものなのだ。

現在、社会保障給付額は、88兆円、保険料を財源とする部分を除き、税を財源とする「公費負担分」は30兆円である。ちなみに消費税収は、国・地方あわせて約13兆円である。消費税全体を「社会保障税」にするということはなにを意味するか。30兆円のうち13兆円の税収すべてを社会保障に充てるというのは観念操作の話で(いまでもすべて充当していると考えることもできるし、まったく充当していないと考えることも自由である)、実体は、社会保障にまわる他の税収とどれだけ入れ替えるかの話である。30兆円の社会保障費自体が充実・拡大されるわけではないし、さらに削減されることもあり得るのだ。要するに消費税増税派の中心勢力である財界は、自分たちのために使うその他の税金を増やしてもらいたいから、自分たちにとっては一銭の負担にもならない消費税を増税してくれといっているのだ。

くり返して言うが、社会保障費はすべての国民に「健康で文化的な生活」を保障する公的扶助費であって、その財源をどのように調達すかという問題とは、直接的には無関係である。それでは、社会保障の財源をどのように生み出すのか。歳出の改革と歳入の改革が必要であろう。財政が厳しいといっても、第一優先の予算として社会保障費が決まれば、他のムダな公共工事や軍事費を削り、お手盛りの政党助成金など真っ先に廃止すべきなのだ。財源を考える場合、本来払うべき税金を払っていない法人や富裕層は、国から事実上の補助金を掠め取っているということを私たちは、直視しなければならない。消費税が導入されてから国民が負担した消費税の総額は188兆円にのぼる。同じ時期に企業が納める法人三税(法人税、法人住民税、事業税)の対89年度からの減収分の毎年の累計は、158兆円である。景気変動もあるからすべてとはいわないが、消費税のおかげで浮いた、その他の税金の大半が、法人税の減税(実質的補助金)として使われたのだ。

消費税は社会保障にとって最もふさわしくない税である。負担能力に応じた負担という原則にもっとも反するのが消費税である。折角、社会保障給付をしておきながら、そこから再び取り上げるのは、自己矛盾である。「おにぎりが食べたい」と言い残して餓死した人に対し、そのおにぎりに消費税を容赦なくかけてどうするのか!任天堂相談役の自社株配当は約98億円である。こうした配当所得は、証券優遇税制で税率10%である。税金9億円払っても89億円は手元に残る。こういうのを「逆立ち税制」という(「しんぶん赤旗」2007年12月13日)。
資本主義社会では、労働者階級の再生産は総資本の責任である。労働者を「高効率」のときだけ利用し、「低効率」の「年をとった労働者のことは知らない」というのは、企業の社会的責任の放棄である。空前の利益をあげる大企業に応分の負担を求め、社会保障財源にきちっと充てることが必要だ(唐鎌直義・専修大教授「「しんぶん赤旗」同上」。

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1 コメント

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Unknown (世論調査.net)
2008-01-03 18:37:25
はじめまして、こんにちは。突然のコメントで失礼します。

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