プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

特急転覆事故―運行規則に問題はなかったか

2005-12-27 18:11:33 | トピックス
25日午後7時すぎに起きた、秋田発新潟行き特急「いなほ14号」が転覆した事故は、死者5人、負傷者30余人(27日現在)の惨事となりました。事故現場は、JR羽越線の最上川にかかる鉄橋の南側です。特急列車は六両編成で、全車両が脱線し、そのうち3両は左側に転覆しました。とくに、先頭車両は、台車がはずれ、線路脇の家畜小屋にぶつかって「く」の字に曲がり、大破しました。JR西日本の福知山線脱線事故(四月)を思い起こさせる状況で、運行規則に問題はなかったか、教訓は生かされたのかが厳しく問われます。
運転士から聞き取りをしたJR東日本の発表によれば、「最上川橋梁(きょうりょう)を渡ったところで、右側から雪を伴った突風が吹いてきた。同時に左側に車体が傾いた」とのことです。事故当日、山形県庄内地方には、午後三時すぎから暴風雪・波浪警報が出ていました。気象状況と運転士の証言からすれば、列車の脱線・転覆に突風が大きな影響を与えたであろうことはわかります。
JR東日本は同日、記者会見のなかで、二段階に設定している強風対策のうち、弱いほうの規制を事故現場付近に適用していたことを明らかにしました。風速20メートルを超した場合に運転指令に報告、25メートルで徐行、30メートルで停止することになっているが、事故当時は20メートル程度で、通常走行できたと説明しています。国鉄の分割民営化で風速による運行規制の基準が緩和され、鉄道各社まかせになりましたが、「風の通り道で強風常習地帯」に、なぜ甘い基準を適用し、時速約百キロでの走行を許したのか、運行管理のあり方が問われます。
JR東日本によると、強風での運行規制基準は一般規制で、風速20メートルで警戒、25メートルで徐行、30メートルで運行中止となっています。一方、通称「早め規制」と呼ぶ、より厳しい基準では、15メートルで警戒、20メートルで徐行、25メートルで運行中止となります。場所によって、どちらの規制になるのかは「各支社長が決める」といいます。
風速による運行規制は、1986年の山陰線余部(あまるべ)鉄橋脱線事故後、当時の国鉄が運行中止の風速を20メートルとしました。その後、国鉄分割民営化で、JRの各社ごとの規定となり、緩和された形となっていたのです。
事故現場の庄内町は年間をつうじて風が強いことで有名で、風力発電設備が町内に五カ所あるほどです。冬の季節風は非常に強く、最上川のような大きな河川にかかる鉄橋は、風の影響をより大きくうけます。風が、平均的に吹くものでないことも自明で、瞬間的に強い突風が吹くことも想定しなければなりません。
地域の特性にあった形で、厳しい気象条件に対応する態勢になっていたのかどうか。JR東日本の運行規則に問題はなかったのか、安全問題での国土交通省の監督責任に問題はなかったのか。規制緩和がさまざまな問題を惹き起こしているとき、単に“想定外の自然現象”のせいにすることは、許されません。暴風雪・波浪警報が出ているなかでの運行で、厳しい気象条件について警戒していたはずだったのに、何故、事故になってしまったのか。事故原因を徹底的に究明し、再発防止策をたてるべきです。



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