プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

耐震計算偽造―背景に規制緩和の問題

2005-11-19 18:09:09 | 政治経済
千葉県市川市の姉歯(あねは)建築設計事務所による耐震データ偽造問題では、国が認定したプログラムの信頼性を盾に少なくとも2年半にわたりチェック機能が働かないまま偽造物件を増やしていました。マンションの建て替えも検討される事態を招いた姉歯秀次・1級建築士(48)の構造計算書偽造は、なぜ気づかれなかったのでしょうか。同設計事務所は、「計算書」の提出を受け建築確認をおこなう民間機関の検査体制がずさんなことを見越し、書類を偽造していたことが明らかになりました。1998年の建築基準法改悪で、これまで自治体が行ってきた建築確認・完了検査を、国などの指定を受けた民間機関も実施できるようにした「規制緩和」の問題が噴出したかたちとなりました。
国土交通省などによると、同設計事務所は、国土交通相が認可した構造計算用のコンピューターソフトを使って耐震強度を計算。建物の柱、はりの本数、建物の外力などを入力した数値から出た計算結果が基準を満たした場合、計算書の各ページの上にヘッダーと呼ばれる「評定番号」が印字されます。しかし、同設計事務所の二十棟分の書類を審査したイーホームズ(東京・新宿区)は、ページ上部の評定番号をチェックしていませんでした。
建築物の建築を行う場合、工事着手前に構造や設備の計画が建築基準法などの法令に適しているか、構造計算書などを提出して審査を受ける「建築確認」が必要です。ところが政府は、98年の規制緩和(建築基準法改悪)によって、これまで自治体が行っていた建築確認・検査を民間に「開放」。大臣、知事が指定する民間の「確認検査機関」でも行えるようにしました。当時から、(1)民間検査機関はゼネコンや大手住宅メーカーの集合体でも可能で、公正・中立性が確保できない(2)民間検査機関が営利本位になって検査が手抜きされたり、ミニ開発などへの自治体の規制が骨抜きになる―などの問題が懸念されていました。しかし、当時の自民、民主、公明、社民、自由、新党さきがけなど日本共産党以外の各党・会派は「規制緩和」に賛成したのです。
建築確認を民間の指定確認検査機関に依頼したほうが、スピーディーでコストも安いようです。しかし、民間機関の確認事務の結果に問題があった場合の地方自治体の責任はどうなるのでしょうか。民間機関は儲けを追及するだけで、地域に責任を負っていません。
今回の事件で、姉歯建築士は当初、「コスト削減のプレッシャーがあった」と千葉県の聴取に、建設主や建設業者側の関与をうかがわせる話をしていました。常識的に考えて、計算書を偽造しても設計事務所自身のコスト削減に効果があるとは思われません。建設費を安く上げることを目指す建設主・建設業者と設計事務所の間にどのような利害の一致があったのか徹底的な解明が求められるでしょう。「建築確認」という大事な仕事を地域や人々の生活に責任を負わない民間業者に任せきりでいいのか、「規制緩和」が今一度鋭く問い直されねばならないのだ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。